エピソード646『もとみーおめでとうっ』


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エピソード646『もとみーおめでとうっ』

1997年8月31日、夏休み最終日。午前中、ベーカリーでの会話。
 からんからん。ベーカリーにやってきたのはフラナと佐古田。なぜがいつも一緒の本宮の姿が見えない。

フラナ
「てーんちょーさんっ」
観楠
「いらっしゃい、フラナくん」
フラナ
「あのね、店長さんにお願いがあるんだ」
佐古田
「じゃんじゃん(お願いがあります)」
観楠
「お願い? どんな」
フラナ
「あのね……ひそひそ」
観楠
「へぇ……うんうん」

観楠に耳打ちするフラナ。だんだん観楠の顔が笑顔になる。

フラナ
「お願いしていいかなぁ」
佐古田
「じゃかじゃん(いいかな)」
観楠
「うん、いいよ。そうかぁ……何か用意しないと」

そして……午後。三人揃って図書館で最後の宿題の追い込みをしていた。いや、正確には本宮の宿題を二人がせっせと写していた。

フラナ
「えーと(書き書き) ……佐古田、まだ書いてる?」
佐古田
「……(書き書き) ……(もう少し……の視線)」

図書館なのでギターを取り上げられた佐古田だった。

本宮
「ちゃんとやっとけよな……まったく」
フラナ
「みゅ〜」
佐古田
「……(ギターが無いので視線で訴える)」
本宮
「ちゃんと帰るときには返すから、しっかりやれ……」
佐古田
「(しゅうぅぅぅ)」

そして……帰り道。

フラナ
「やっと終ったぁ」
本宮
「写してただけだろうが」
佐古田
「じゃんじゃかじゃんじゃんじゃぁぁん(ギターだぁぁっ)」
本宮
「近所迷惑だから……他でやれ、佐古田」
フラナ
「ねぇ……もとみー、ベーカリー寄ってこうよ」
本宮
「え? ああ、俺もそのつもりだけど」
フラナ
「よぉしっ! 行こう」

ほどなくベーカリーに着く一同。

フラナ
「じゃ、もとみーが一番乗りね(ぐいぐい)」
本宮
「一番って? ……ま、いいけど」

言われるままに本宮が店内に入っていく……と。
 すぱぱぱぱぱぱんっ

本宮
「うわたぁっ」

はじけるクラッカー、思わずその場に尻餅をついてしまう本宮。

千影
「本宮君お誕生日おめでと〜っ」
瑞希
「おっめでとうっ! 華の十七歳ねっ!」
幸久
「彼女イナイ歴十七年め突入かぁ、和〜」
史久
「いやぁ〜おめでとー和」
本宮
「え……」

いつもの常連達が顔をそろえている。母、兄弟までもが笑いながら迎えている。驚きのあまり声を失ってしまう本宮。

フラナ
「えへへっもとみーっ! お誕生日おめでとうっ」
佐古田
「じゃじゃじゃんじゃじゃぁぁぁん(おっめでとぉ〜っ)」
かなみ
「和久お兄ちゃん、おめでとうっ」
観楠
「いやぁ、おめでとう本宮君」
琢磨呂
「おう、本宮。誕生日おめでとう」
「はい、本宮君おめでとう」

尊が可愛らしい花束を渡してくれる。

本宮
「え……あの……あ……ありがとうございますっ! みん な……ありがとう」

呆けていた本宮、慌てて周りに礼を言う。

麻須美
「和ちゃんおめでとう、みんないいお友達ね」
本宮
「……ありがとう……」

突然の、バースデー騒ぎに奥の席に座っていた美樹、顔を上げる。

美樹
「いや……おめでたいですね。最近の常連さんですか」
花澄
「ええ、本宮君っていうんです、うらやましいなぁみんな に祝ってもらえて」
美樹
「微笑ましいですね」
花澄
「ええ」
譲羽
「ぢぃぢぃっ(ゆずもおいわいするっ)」

一方、パンの耳をほおばっていた一、遠くをみる顔になる。

「十七歳……一番ういういしい時期だよな」
直紀
「う〜ん(汗) にのまえさんが言うと」
御影
「ひっかかるものがあるな」
「なぜ(涙)」
直紀
「でも……一さん、本宮君のことお気に入りでしょ」
「うっ(汗)」
御影
「なぜ詰まる」
紘一郎
「もとみー、十七かぁ」
すー
「めれふぁいね、こーひゃん(訳:めでたいね、紘ちゃん)」
紘一郎
「……食いながら話すのはやめろって(^^;」

そのまた一方で……興味深げに本宮を見ているユラ。

ユラ
「成人まであと三年か、期待してるわよ本宮君」
豊中
「三年後……南無……(合掌)」
訪雪
「いやぁ……まだ三年もあるのか、若いのぉ」
「(くす) おぢさんみた〜い」
豊中
「茜、シャレにならんぞ」

夏期講習を終え、一息ついていた夏和流、みのる。

夏和流
「いやぁ〜若くていいなぁ、うらやましいぞ、もとみー」
みのる
「お前も同じ十七だろうが」
夏和流
「あうあう、だからって刺さなくても」

イワシパンを買っていた萌、大河。

「マサヒロの時もみんなでお祝いしようねっ」
大河
「ああ、そうしてもらえたらいいな」

そして、周りじゅうから祝福される本宮当人。思わず、鼻の奥がむずかゆくなってしまう。

本宮
「(こいつらって……)」
フラナ
「どしたのぉ? もとみー」
本宮
「いや……いいもんだな……って思って」
観楠
「おーい本宮君、ケーキの代りにバースデーパン焼いたん だよ」
フラナ
「わぁいっ、もとみー食べよっ! もとみーが主役なんだ からっ」
本宮
「ああ、ほんと……みんなありがとう」

十七歳の誕生日……この日、本宮にとって……一番心に残った誕生日だった。

解説

人物は多いけど細かく見る必要もないので登場人物表はなし……ということで。スナフキン愛好会の苦労人、本宮君をみんなで驚かそう、ってな話ですな。もう少し、裏での計画のシーンがあっても良かったのかも知れませんが、読み手も本宮君と一緒に驚かすという趣旨なら、こんなものなのかな?
 人物への思いいれで書いたようなところはありますが、通してみていれば積み上げられた話と人格の知識がありますから、やはり勘当の話になったりします。そのあたりも、「エピソード」と呼ばれる由縁でしょうか。



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