1997年8月31日、夏休み最終日。午前中、ベーカリーでの会話。
からんからん。ベーカリーにやってきたのはフラナと佐古田。なぜがいつも一緒の本宮の姿が見えない。
- フラナ
- 「てーんちょーさんっ」
- 観楠
- 「いらっしゃい、フラナくん」
- フラナ
- 「あのね、店長さんにお願いがあるんだ」
- 佐古田
- 「じゃんじゃん(お願いがあります)」
- 観楠
- 「お願い? どんな」
- フラナ
- 「あのね……ひそひそ」
- 観楠
- 「へぇ……うんうん」
観楠に耳打ちするフラナ。だんだん観楠の顔が笑顔になる。
- フラナ
- 「お願いしていいかなぁ」
- 佐古田
- 「じゃかじゃん(いいかな)」
- 観楠
- 「うん、いいよ。そうかぁ……何か用意しないと」
そして……午後。三人揃って図書館で最後の宿題の追い込みをしていた。いや、正確には本宮の宿題を二人がせっせと写していた。
- フラナ
- 「えーと(書き書き) ……佐古田、まだ書いてる?」
- 佐古田
- 「……(書き書き) ……(もう少し……の視線)」
図書館なのでギターを取り上げられた佐古田だった。
- 本宮
- 「ちゃんとやっとけよな……まったく」
- フラナ
- 「みゅ〜」
- 佐古田
- 「……(ギターが無いので視線で訴える)」
- 本宮
- 「ちゃんと帰るときには返すから、しっかりやれ……」
- 佐古田
- 「(しゅうぅぅぅ)」
そして……帰り道。
- フラナ
- 「やっと終ったぁ」
- 本宮
- 「写してただけだろうが」
- 佐古田
- 「じゃんじゃかじゃんじゃんじゃぁぁん(ギターだぁぁっ)」
- 本宮
- 「近所迷惑だから……他でやれ、佐古田」
- フラナ
- 「ねぇ……もとみー、ベーカリー寄ってこうよ」
- 本宮
- 「え? ああ、俺もそのつもりだけど」
- フラナ
- 「よぉしっ! 行こう」
ほどなくベーカリーに着く一同。
- フラナ
- 「じゃ、もとみーが一番乗りね(ぐいぐい)」
- 本宮
- 「一番って? ……ま、いいけど」
言われるままに本宮が店内に入っていく……と。
すぱぱぱぱぱぱんっ
- 本宮
- 「うわたぁっ」
はじけるクラッカー、思わずその場に尻餅をついてしまう本宮。
- 千影
- 「本宮君お誕生日おめでと〜っ」
- 瑞希
- 「おっめでとうっ! 華の十七歳ねっ!」
- 幸久
- 「彼女イナイ歴十七年め突入かぁ、和〜」
- 史久
- 「いやぁ〜おめでとー和」
- 本宮
- 「え……」
いつもの常連達が顔をそろえている。母、兄弟までもが笑いながら迎えている。驚きのあまり声を失ってしまう本宮。
- フラナ
- 「えへへっもとみーっ! お誕生日おめでとうっ」
- 佐古田
- 「じゃじゃじゃんじゃじゃぁぁぁん(おっめでとぉ〜っ)」
- かなみ
- 「和久お兄ちゃん、おめでとうっ」
- 観楠
- 「いやぁ、おめでとう本宮君」
- 琢磨呂
- 「おう、本宮。誕生日おめでとう」
- 尊
- 「はい、本宮君おめでとう」
尊が可愛らしい花束を渡してくれる。
- 本宮
- 「え……あの……あ……ありがとうございますっ! みん
な……ありがとう」
呆けていた本宮、慌てて周りに礼を言う。
- 麻須美
- 「和ちゃんおめでとう、みんないいお友達ね」
- 本宮
- 「……ありがとう……」
突然の、バースデー騒ぎに奥の席に座っていた美樹、顔を上げる。
- 美樹
- 「いや……おめでたいですね。最近の常連さんですか」
- 花澄
- 「ええ、本宮君っていうんです、うらやましいなぁみんな
に祝ってもらえて」
- 美樹
- 「微笑ましいですね」
- 花澄
- 「ええ」
- 譲羽
- 「ぢぃぢぃっ(ゆずもおいわいするっ)」
一方、パンの耳をほおばっていた一、遠くをみる顔になる。
- 一
- 「十七歳……一番ういういしい時期だよな」
- 直紀
- 「う〜ん(汗) にのまえさんが言うと」
- 御影
- 「ひっかかるものがあるな」
- 一
- 「なぜ(涙)」
- 直紀
- 「でも……一さん、本宮君のことお気に入りでしょ」
- 一
- 「うっ(汗)」
- 御影
- 「なぜ詰まる」
- 紘一郎
- 「もとみー、十七かぁ」
- すー
- 「めれふぁいね、こーひゃん(訳:めでたいね、紘ちゃん)」
- 紘一郎
- 「……食いながら話すのはやめろって(^^;」
そのまた一方で……興味深げに本宮を見ているユラ。
- ユラ
- 「成人まであと三年か、期待してるわよ本宮君」
- 豊中
- 「三年後……南無……(合掌)」
- 訪雪
- 「いやぁ……まだ三年もあるのか、若いのぉ」
- 茜
- 「(くす) おぢさんみた〜い」
- 豊中
- 「茜、シャレにならんぞ」
夏期講習を終え、一息ついていた夏和流、みのる。
- 夏和流
- 「いやぁ〜若くていいなぁ、うらやましいぞ、もとみー」
- みのる
- 「お前も同じ十七だろうが」
- 夏和流
- 「あうあう、だからって刺さなくても」
イワシパンを買っていた萌、大河。
- 萌
- 「マサヒロの時もみんなでお祝いしようねっ」
- 大河
- 「ああ、そうしてもらえたらいいな」
そして、周りじゅうから祝福される本宮当人。思わず、鼻の奥がむずかゆくなってしまう。
- 本宮
- 「(こいつらって……)」
- フラナ
- 「どしたのぉ? もとみー」
- 本宮
- 「いや……いいもんだな……って思って」
- 観楠
- 「おーい本宮君、ケーキの代りにバースデーパン焼いたん
だよ」
- フラナ
- 「わぁいっ、もとみー食べよっ! もとみーが主役なんだ
からっ」
- 本宮
- 「ああ、ほんと……みんなありがとう」
十七歳の誕生日……この日、本宮にとって……一番心に残った誕生日だった。
人物は多いけど細かく見る必要もないので登場人物表はなし……ということで。スナフキン愛好会の苦労人、本宮君をみんなで驚かそう、ってな話ですな。もう少し、裏での計画のシーンがあっても良かったのかも知れませんが、読み手も本宮君と一緒に驚かすという趣旨なら、こんなものなのかな?
人物への思いいれで書いたようなところはありますが、通してみていれば積み上げられた話と人格の知識がありますから、やはり勘当の話になったりします。そのあたりも、「エピソード」と呼ばれる由縁でしょうか。
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