ベーカリー楠にて・昼)からんころん
- 観楠
- 「いらっしゃいま……あ、かなみちゃん。おかえり(笑)」
- かなみ
- 「ただいまっ。あのね父様、お店にふるいものある?」
- 観楠
- 「ふるいもの?」
- かなみ
- 「んと、社会のしゅくだいなの」
- 観楠
- 「宿題で……古い物?」
- かなみ
- 「いまつかってるいろんな道具と、むかしのふるいのを
くらべて発表するの」
- 観楠
- 「あぁ、なるほどね。さて……古い物ねぇ……なにか
あったかなぁ」
- 望
- 「おーぃ、かなみぃ」
- 智博
- 「かなみちゃーん」
- 観楠
- 「あれ、みんなと一緒だったの?」
- かなみ
- 「うん。グループでふるいものさがししてるの」
- 毅
- 「パン屋さんはなにかあった?」
- 大樹
- 「おれんち、ふつうの家だからなにもないし」
- 茂
- 「パン屋だからってふるいものがあるとはかぎらんが」
- 寧
- 「なにかあるかもしれないでしょー」
- 茂
- 「……ねいの家ならなんでもあるような気がするんだ
がなぁ……」
- 寧
- 「ちょっとそれ、どーゆー意味よっ(汗)」
- 観楠
- 「グループって……なるほど(笑)」
- かなみ
- 「父様、なにかない?」
- 観楠
- 「うーん……お店にはなにもないんじゃないかなぁ」
- かなみ
- 「うちにはなにかないの?」
- 観楠
- 「家……あ、古い型のゲーム機があるなぁ(笑)」
- かなみ
- 「そんなのだめなのっ!」
- 望
- 「かなみの父ちゃん、まじめに考えてくれよぉ」
- 観楠
- 「(……なんで俺が?)しかし、古い物って言っても、
あれだろ? 昔の生活道具ってやつ」
- 毅・大樹
- 「そうでーす」
- 観楠
- 「みんなが生まれる前の道具なんて、もう何処にも売っ
てないし……」
- 茂
- 「どこかそういうのがあるところ知りませんか?」
- 観楠
- 「図書館とか、民俗資料館なんかにいけばわかるんじゃ
ないかなぁ(笑)あ、学校の図書室は調べたかい?」
- 寧
- 「そんなところ他のグループがとっくに使ってるわよ。
あたしたちはもっと違う所から攻めたいのよね」
- 観楠
- 「(……だからってうちに来るか)うーん……となると
……はて(考え中)」
- かなみ
- 「父様、どこかふるいものあるところ、ない?」
- 観楠
- 「えーと……あ!」
- 望
- 「知ってるの?」
- 智博
- 「どこに?」
- 観楠
- 「みんな、松陰堂って知ってる?」
- 毅・大樹
- 「しょういんどう?」
- 茂
- 「通りのずっとむこうのこっとう屋さんですか?」
- 観楠
- 「うん(笑)」
- 寧
- 「……あんた、なんで骨董屋なんか知ってんの?」
- 茂
- 「たまにいくのだ」
- 寧
- 「……なにしに?(汗)」
- かなみ
- 「こっとう屋さんってなあに?」
- 観楠
- 「古い道具や貴重品なんかを売ってるお店だよ。あそこ
なら珍しいものたくさんあるんじゃないかな(笑)」
- 寧
- 「あのねおぢちゃん。珍しい物じゃなくて古い生活道具
探さなきゃなんないんだけど?」
- 観楠
- 「……その他はもう知らないよ」
- かなみ
- 「ねいちゃん、行ってみよっ!」
- 望
- 「そーだな。面白そうじゃん(笑)」
- 茂
- 「ふむ、こっとう屋……ふむふむ」
- 毅
- 「そーと決まったら!」
- 大樹
- 「すぐにいこーぜ!」
- 寧
- 「……仕っ方ないわねー」
- 観楠
- 「道、わかるかなぁ……地図描いてあげようか?」
- 寧
- 「お願いするわ」
観楠の描いた地図を受け取り、子供達ぞろぞろとベーカリーを出て行く。
- 観楠
- 「……子供達がいきなり押かけたら訪雪さん困るかなぁ。
……困るよな普通(汗)TEL入れとこ……」
松蔭堂。
- SE
- 「ぢりりりりりん」
黒電話のベルのけたたましい音で、板敷で居眠りしていた訪雪は文字どおり飛び上がった。
- 訪雪
- 「うひゃあっ(どびくう)……ほえ? んぁ、電話かぁ……
がちゃ)はい、こちら松蔭堂でございます」
- 観楠
- 『もしもし、ベーカリー楠の湊川ですが』
- 訪雪
- 「あ、こりゃどうも……
しかし、店長がこちらに電話を下さるとは、珍しい」
- 観楠
- 『確かに(笑)……で、用件ですが。
うちのかなみが、友達を連れてそちらへ伺いましたので、済みませんがよろしくお願いします』
- 訪雪
- 「ま、それは構わんですが……『伺いました』?」
- 観楠
- 『いまこっちを出たところです。なんでも学校の宿題で、
昔の暮らしについて調べるんだそうで(笑)……それじゃあ、ご迷惑お掛けします』
- 訪雪
- 「あ……はいはい。それじゃあ」
受話器を置いた訪雪は、おもむろに小机の引き出しを開けて、いくつにも折り畳んでしまってあった大きな紙を引っ張り出す。紙の上には、ランク分けされた膨大な量の商品リスト。
- 訪雪
- 「……とりあえず、店頭と母屋二階の在庫だけはこれで判る
はずだが……はて、ニンベン民俗系の品物なんて、いまうちにあったかなぁ……」
板敷いっぱいにリストを広げて、しばらく考え込んでいたが、やがてその表のあちこちに、赤鉛筆で猛然と線を引きはじめる。
- 訪雪
- 「これ……と、これと、このふたつと、あとこいつと……
このへんのもんは蔵へ避難させにゃ駄目だな。で、(店を見回して)空いたとこにこいつを出しておく、と……どっちにせよでかいもんまでは移動できんな」
リストを懐に、ばたばたと店の中のものを移動して、冷蔵庫の中身を確認したところで、表のガラス格子を叩く音がした。
- かなみ
- 「こーんにーちわぁ、だれかいますかぁ」
- 訪雪
- 「お、来たな……はいはい、いらっしゃい」
連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部