会社帰り、かつかつとヒールを鳴らして帰宅する瑞希。そこに通りかかったのは……
- 瑞希
- 「おーい、ゆーうやっ」
- フラナ
- 「あ、瑞希ねーちゃん」
- 本宮
- 「どうも」
- 佐古田
- 「じゃじゃぁぁん(こんにちはぁ)」
- 瑞希
- 「なぁんだ、今帰りなんだ(ぎゅう)」
- フラナ
- 「あうあうあう」
がっしりと首に腕を回され、目を白黒するフラナ。
- 瑞希
- 「ん?」
その時、ふわり……と瑞希の鼻先をかすめた匂い。なんとなく覚えのある、汗臭いのとも違う……お世辞にもいい匂いとは言えない、でも落ち着ける匂い。
- 瑞希
- 「……」
- 本宮
- 「どうしたんですか? 瑞希さん」
- 佐古田
- 「ぼろろん(黙っちゃって)」
- フラナ
- 「うみゅ? どーしたのねーちゃん」
急に黙り込んでしまった瑞希に、不思議そうな表情を浮かべる三人。黙ってしまった瑞希、不意にフラナの頬を引っ張る。
- 瑞希
- 「……なによ、生意気っ!(うにうに)」
- フラナ
- 「みゅうぅ〜なんでぇ」
- 本宮
- 「どうしたんですか?」
- 瑞希
- 「(ひょい)ちょっち失礼」
フラナを離し、すいっ……と、本宮の首筋に顔を近づける。
- 本宮
- 「(真っ赤)な……なんですか、瑞希さんっ(焦)」
- 瑞希
- 「ふむ……次」
お次は佐古田に同じく顔を寄せる。
- 佐古田
- 「じゃぎぃぃぃぃぃぃぃん(焦っ)」
- フラナ
- 「な……なんなんだよぉ、瑞希ねーちゃん(焦)」
- 瑞希
- 「なるほど……ねぇ」
何が何だかわかってない三人など気にもとめず、一人納得している瑞希だった。
- 瑞希
- 「ん……じゃあね……あんた達。あたしグリーングラス寄ってく」
- フラナ
- 「え、うん」
急に踵を返し歩き去っていく瑞希。呆然と見送る三人。
- フラナ
- 「瑞希姉ちゃん、変なの……」
- 本宮
- 「俺達なんかおかしかったか?」
- 佐古田
- 「じゃんじゃん(別に?)」
一方、歩いている瑞希。風が吹き抜け、長い髪が揺れる。
- 瑞希
- 「なによ……生意気……」
ちらりと振り返る。もう、三人は見えない。
- 瑞希
- 「いっちょまえに……男の匂いがする」
懐かしい匂い……男の匂い。あいつら、もう……男を匂わせる歳なのだろうか?
- 瑞希
- 「もう……そんなになるのかな」
なんとなく……さみしいような、頼もしいような……不思議な感じがした。
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