エピソード654『生意気』


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エピソード654『生意気』

会社帰り、かつかつとヒールを鳴らして帰宅する瑞希。そこに通りかかったのは……

瑞希
「おーい、ゆーうやっ」
フラナ
「あ、瑞希ねーちゃん」
本宮
「どうも」
佐古田
「じゃじゃぁぁん(こんにちはぁ)」
瑞希
「なぁんだ、今帰りなんだ(ぎゅう)」
フラナ
「あうあうあう」

がっしりと首に腕を回され、目を白黒するフラナ。

瑞希
「ん?」

その時、ふわり……と瑞希の鼻先をかすめた匂い。なんとなく覚えのある、汗臭いのとも違う……お世辞にもいい匂いとは言えない、でも落ち着ける匂い。

瑞希
「……」
本宮
「どうしたんですか? 瑞希さん」
佐古田
「ぼろろん(黙っちゃって)」
フラナ
「うみゅ? どーしたのねーちゃん」

急に黙り込んでしまった瑞希に、不思議そうな表情を浮かべる三人。黙ってしまった瑞希、不意にフラナの頬を引っ張る。

瑞希
「……なによ、生意気っ!(うにうに)」
フラナ
「みゅうぅ〜なんでぇ」
本宮
「どうしたんですか?」
瑞希
「(ひょい)ちょっち失礼」

フラナを離し、すいっ……と、本宮の首筋に顔を近づける。

本宮
「(真っ赤)な……なんですか、瑞希さんっ(焦)」
瑞希
「ふむ……次」

お次は佐古田に同じく顔を寄せる。

佐古田
「じゃぎぃぃぃぃぃぃぃん(焦っ)」
フラナ
「な……なんなんだよぉ、瑞希ねーちゃん(焦)」
瑞希
「なるほど……ねぇ」

何が何だかわかってない三人など気にもとめず、一人納得している瑞希だった。

瑞希
「ん……じゃあね……あんた達。あたしグリーングラス寄ってく」
フラナ
「え、うん」

急に踵を返し歩き去っていく瑞希。呆然と見送る三人。

フラナ
「瑞希姉ちゃん、変なの……」
本宮
「俺達なんかおかしかったか?」
佐古田
「じゃんじゃん(別に?)」

一方、歩いている瑞希。風が吹き抜け、長い髪が揺れる。

瑞希
「なによ……生意気……」

ちらりと振り返る。もう、三人は見えない。

瑞希
「いっちょまえに……男の匂いがする」

懐かしい匂い……男の匂い。あいつら、もう……男を匂わせる歳なのだろうか?

瑞希
「もう……そんなになるのかな」

なんとなく……さみしいような、頼もしいような……不思議な感じがした。



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