エピソード657『江戸の夢』


目次


エピソード657『江戸の夢』

キャスト

春宵姫
平塚花澄
御落胤
岩佐琢磨呂(←Jなんでこの名前なんですわ)
茶店「楠や」店主
観楠
茶店「楠や」看板娘(まだ小さいけど)
かなみ
隠密頭
御影武史
くのいち
如月尊
老中  
高村文雄
瓦版売り
スナ同
悪代官 
豊中雅孝

前口上

江戸時代後期のいつか。場所は江戸。とある大身旗下の御息女、春宵姫が屋敷を抜け出した。
 んなこといったって、庶民にゃ関係ないこと……のはずだったのだが。

江戸下町・傘貼長屋、岩佐宅

琢磨呂
「ふぁ〜〜ぁ……世は平穏、事も無しっ……てか」

典型的な浪人姿の若侍。その名は岩佐琢磨呂。いつものように知り合いの茶店『楠や』から戻った彼を、顔馴染みの町民が呼び止めた。

町民1
「あ! ダンナ、岩佐のダンナっ!」
琢磨呂
「おぅ、どうした?」
町民2
「どーしたもこーしたもねぇよっ!!」
町民3
「俺ぁ、ダンナだけは不実はしねぇ、と思ってたのに」
琢磨呂
「……なんのことだ?」
町民1
「なんのこと……って、あっきれたねぇ!」
町民2
「自分のしたことが解ってねぇんですかい?」
琢磨呂
「だから……なにがだ?(汗)」
町民3
「よござんす。その目でとっくり、ごらんなせぇ」
琢磨呂
「全く……なにがなんだか(がらりっ)」

琢磨呂、障子張りの木戸をあけて部屋の中を見まわ……すまえに(汗)

琢磨呂
「おい、なんだこりゃ?(汗)」
町民1
「なんだこりゃ、って?」
琢磨呂
「……俺の部屋の中がいきなり華やかじゃねーか(汗)」
町民2
「そりゃぁねぇ……」
町民3
「そんな奇麗な着物着たお嬢さん連れ込んでりゃねぇ」
琢磨呂
「ち、ちょっと待て! 俺は知らん!!(汗) どこぞの茶屋 の親父じゃあるめーし、しらねーうちに女が家に来たなんて話があるかっ!」

そのころ、楠やでは。

観楠
「ふ、ふぁ……ふぇえーっくしょぃぃっ!!」
おかな
「とうさま、おかぜ?」
観楠
「ん……誰か噂してるかな……?」

首をかしげる観楠。戻って岩佐宅。喧嘩になっている琢磨呂と近所の連中。

琢磨呂
「だいたい、おめーらもなぁ……!」
町民1
「ダンナ、ダンナ」
琢磨呂
「なんでぃっ!」
町民1
「小間物屋のお麗ちゃんが知ったらどーなります?」
琢磨呂
「う、そ、そー……れはだな……とりあえず知られないよ うに協力しろっ(汗)」
「で、まずどーするの?」
琢磨呂
「そーだな、とりあえず……」
「その目立つ服をとりかえてみるとか?」
琢磨呂
「そ、それだ! 頭いーじゃねーか、なぁ! って(汗)」
お麗
「お褒めにあずかり、恐悦至極にございます……岩佐様」
琢磨呂
「お、お、お、お麗っ!?(大汗)」
お麗
「あたしと言う人がありながら……今日という今日は許し ませんっ!(怒)」
琢磨呂
「まて、落ち着け、話せばわかるっ!!(汗)」
お麗
「問答無用ーっ!!」

閑話休題(笑)。

お麗
「さて……と。この人、一体誰なんです?」
琢磨呂
「だから……さっきから知らんと言っとろーが……(いて てててて)」
お麗
「……にしても、勝手に人の家に上がり込んで、そのまま 寝込んでるなんて、絶対へんでしょ?」
琢磨呂
「そりゃまそーなんだが(汗) お?」

件の女性、もぞりと動く。

琢磨呂
「おめーがぴーちくうるせーから、起きちまったじゃねー か」
お麗
「なぁんですってぇ!?」

お麗、琢磨呂を締め上げる(笑)

春宵姫
「あのー……おとりこみ中、申し訳ありませんが」
お麗
「なにっ!(きぃっ)」
春宵姫
「ここ、どこでしょう?(にっこり)」
お麗
「……はぁ?」
春宵姫
「城の、桜の間へはどう行けばたどりつけるのでしょう か……?」
お麗
「城……って、あそこのお城のこと?」
春宵姫
「えぇ、実は道に迷ってしまいまして……」

目を点にしつつも、お麗、春宵姫から事情を聞く。その時琢磨呂は。

琢磨呂
「(し、死ぬ……死んでしまう〜〜)」

締め上げられたままだったりするんだな、これが(笑)

春宵姫
「椿の間から、帰ろうと思ったのですけれども……」

春宵姫がの〜んびり言ったことをまとめると、こんな風になる。

春宵姫
「……あら?(ここが桔梗の間で、あちらが藤の間で……)」
老女
「おひい様、どこにいかれますか」
春宵姫
「あ、あの、桜の間に戻ろうと……」
老女
「方向がまるきり逆でございましょう(呆) こちらでござ います。(ぐいっ)」
春宵姫
「え……こちら?」

もう一度元に戻ってよく考えれば彼女といえども桜の間に辿りついた事だろうが、ここで向きを変えられてはどうしようもない。(笑)

老女
「そこを真っ直ぐ行けば宜しゅうございます」
春宵姫
「は……はあ。(でも、真っ直ぐ行くと障子にぶつかるよ うな気が……どうしよう)」

とぼとぼ。

お麗
「……そこまではいいとして、なんでこんな城下まで?」
春宵姫
「それで、思いついたのですけれど、……よく、樹を見て 森を見ずと申しますね? それで、城の外へ出てみれば分かるのではないかと」
お麗
「……はあ。(呆)」

……ま、普通は呆れる。

春宵姫
「そう思い、庭にまで出ましたのですけれども、そこから ではよく分かりませんでしたので」
お麗
「でも、よく庭まで行けたわねえ。(しみじみ)」
春宵姫
「……いえあの……多分、庭だったと……」

取り合えず地上に出たので、良しとしたらしい。って、ちっとも良くないぞおい(汗)

春宵姫
「で、どうしようかと思いましたら、生け垣の間から外が 見えまして……で、あそこからなら分かるのではないか、と」
お麗
「でも、分からなかった」
春宵姫
「はい。(にっこり)」
お麗
「……(言葉が無い)」
春宵姫
「ところが歩けば歩くほど迷いまして、途方に暮れており ましたところ、こちら様のお宅の戸が半分ほど開いておりまして」
お麗
「で、入ったの?」
春宵姫
「御挨拶致しましたのですが、御返事も無く、通りすがり の方が岩佐のダンナならすぐ帰るから、入って待ってな、と仰言ったもので……」
お麗
「……(溜息)」

老中 高村乃守の御用邸

お麗がため息をついている頃。見事に整えられた枯山水の裏庭。
 かこーん。
 小さく湧く泉の水が獅子脅しを動かし、時折涼しげな響きを立てる。小さな離れの中では、時の老中、高村乃守が書台で和綴じ本を呼んでいる。

謎の声
「御前、お呼びで……」

何処からとも無く女の声が響くが姿は見えない。

高村乃守
「ふむ……おみこ……か」
謎の声
「はっ、これに」

書物から目を放さず喋り出す。

高村乃守
「また御主の手を借りねばならぬようだ、春宵姫様の一件 聞き及んでおろう」
おみこ
「何でも城内から姿を消されたとか……」

姿は見えないがおみこの口調に苦笑が交じる。

高村乃守
「うむ。恐らく城内から迷い出てしまわれたのであろう、 ……姫様の方向音痴は筋金入だな(苦笑)」
おみこ
「では、姫様を探して連れ戻せ、と?」
高村乃守
「いや、姫様の居所はもう分っておる、岩佐の所だ(笑)」
おみこ
「……若の所でございますか(笑) それはまた……」
高村乃守
「うむ、あそこなら危険はあるまい」
おみこ
「では御用向きとは……まさか!」
高村乃守
「うむ、どうやら城内、城外共に頭の黒い大鼠が動き出し ておるようだ。これを機会に姫様を亡き者にして幕府の混乱を画策している奴等がいるらしい」
おみこ
「では……」
高村乃守
「おみこよ、岩佐と一緒に鼠退治を頼まれてくれぬか」
おみこ
「承知いたしました」
高村乃守
「うむ、では行け」

スッと声と気配が消え、辺りはまた水音だけの静かな裏庭に戻る。

高村乃守
「(ふと目を本から庭に転じて) 頼むぞ……」

再び江戸下町・傘貼長屋、岩佐宅

春宵姫
「(居住まいを正して) けれども、どうやらすっかりご迷 惑をおかけしてしまった様子です。……申し訳ございません(深々)」
お麗
「あ、いえあのう……」
春宵姫
「どうぞ、そちらの方をお責めになりませぬよう……私も これで失礼させていただきます。本当に有難うございました」

深々、ともう一度頭を下げると、そのまま立ち上がり、出て行こうとする。

お麗
「あ……ちょっと、お姫様!」
春宵姫
「はい? ……きゃっ」

足元がお留守になった途端、長い裾を踏んづけてそのままぺたんと座り込む。みっともないと言えば言えるが、顔面から床に衝突しなかっただけでも上出来である(笑)。

お麗
「(無事に帰れそうに無いわねえ、これは……)」
琢磨呂
「さーて……どーしたもんかなぁ」
お麗
「どうもこうも、籠屋を呼んでお城に送ってあげれば良い じゃないですか」
琢磨呂
「そりゃま、そうなんだが……」
お麗
「他になにがあるって言うんです?」
琢磨呂
「先立つものが無い」
お麗
「……は?(汗)」
琢磨呂
「簡単に言うとだな、金が無い」
お麗
「……じゃぁ、岩佐様がお城まで送ってあげれば良いんで す」
琢磨呂
「……俺はそんなにヒマじゃねぇ」
お麗
「……(呆)」
琢磨呂
「……」
春宵姫
「?(にっこり)」

読み売り

ふらな
「てぇへんだ、てぇへんだよぉぅ!」
おかな
「とうさま、あっちでなにか言ってるよ?」
観楠
「ん? なんだろ……」
ふらな
「将軍様のお膝元でてぇへんな事件だ! なんとご息女春 宵姫様が何者かにさらわれて、お城は上へ下への大騒ぎ!
江戸中の番所、奉行所総出で目下捜索中ってなもんだが、これが一向に見つからない!」
観楠
「はぁ……ありゃ、瓦版のふらなだな。いつもながら上手 い口上だねぇ」
おかな
「おひめさまがどこかいっちゃったの?」
観楠
「うん、そうみたいだね」
ふらな
「そこで、俺達江戸っ子にも姫様探しを手伝うように、と のお達しだ!(ばんっ) 詳しくは、この瓦版をみてくんなっ!」
群集A
「俺に見せてくれ!」
群集B
「あたしにもちょうだい!」
群集C
「おれにもだ!」

ざわざわざわ

おかな
「とうさま、あたしもみたい!」
観楠
「え!?(汗) ち、ちょっと待ってね(汗) おーい」
ふらな
「あ、楠屋の(笑) いつもどーも(笑)」
観楠
「一枚くれないか?」
ふらな
「へぇ、毎度(笑) 楠屋さんもご興味が?」
観楠
「……というか、娘がね(苦笑)」

湯殿

悪代官の屋敷。湯殿。なぜか乳白色の湯につかり、気持良さそうにしている尊。うなじのほつれ毛が妙になまめかしく、窓の桟に顔を張り付けている連中が押し合いへし合いしている。

岩佐
「こら、見えんじゃないか」
ふらな
「いいですね旦那ぁ、へぼな春絵なんかよりずぅっといい ですぜ」
観楠
「こう言うことをしてはいけないと思うんですけど……あ、 見えないじゃないですか」
佐古田
べんべん(見えない、という不満の音色)
岩佐
「おいおい、三味線なんか鳴らす……」

尊、きっと窓をにらむ。

おみこ(尊)
「そこにいるの、だれっ!?」

言葉と同時に、湯がぶっかけられる。慌てて逃げ出す一同。そのあとを手裏剣や苦無が飛んでくる。むろん多少刺さっていても誰も気にせず猛ダッシュ。屋敷の外に出て、やっと一息つき

岩佐
「惜しかったな」
観楠
「おしかったね」
佐古田
『べんべべん』(手裏剣刺さってるよ、という音色)

そのころ、湯殿の梁の上には御影がおり、やはりこれも入浴シーンを見物中であった。

御影
「ふむ、おみこめ、ずいぶんよいおなごになったのう……」

尊、気配に気付き、無言で手桶を投げる。手桶は御影を直撃。御影、湯殿に落下するがこたえた様子はカケラもなかったりする。

御影
「腕をあげたな、おみこ」
「なんの御用でございましょうか、御影様?」

尊の視線は絶対温度零度の冷たさであった。

御影
「うむ、実はな、ちと手を貸してもらいたいことがあって な」
「なにも湯殿に忍び込まれる必要はございませんでしょう」
御影
「いやいや、そこはそれ男子たるもの」

尊、手裏剣を投げつける(どこに持ってたんだ?)。御影に命中、血が噴水のように額から吹き出すが、頑丈人間はいっぺん引っくり返ったあとすぐに起き上がる。

御影
「う、むう、このようなものをぶつけたら、並の武芸者で は怪我をするのだぞ」

……そ〜ゆ〜自分も怪我をしとるぞ(笑)
 (湯殿の外から)

豊中
「何やら騒がしいようだが、鼠でもいたのか」
御影
「むむ、まずい。ではおみこ、あとで高村様の屋敷へ来い」

足音が湯殿に近づき、御影は梁の上へ飛び、そこから消える。足音は窓のそばで止まる。

SE
どすっ! 

板屏から漣丸が生え、豊中の鼻先に触れそうになっていた。豊中、そそくさと撤退。

「まったくもう、ゆっくり入っていられないんだから」
御影
「特等席はいいとして、なぜかお湯が乳白色なので胸元 までしか見えん」
豊中
「そこはそれ、見えそうで見えないあたりがなんともいえず色っぽい んじゃないですか‥‥‥‥くくう、惜しい!」
ここらで殺気を探知。

御影
「お湯は透明だろ、普通」
豊中
「しかし考えようによってはこの方がいいですよ。なにしろ、乳 白色ということはたぶん入浴剤入り、つまり湯上がり後の肌は入浴前よりももっと眺めるのによろしく‥‥‥」
御影
「なるほど、湯冷めしにくくなるのか」
豊中
「なぜそこで見え見えのボケを……。いっぺん頭の中、 看てもらいますか旦那?」
御影
「湯冷めしにくくなるイコール……桜色に火照った白磁の肌。 汗ばむ肌にはりつく薄物。着物の合わせ目からのぞく白い胸元に流れるしっとりと濡れた黒髪」
豊中
「(想像中)……おうっ(流血)」
御影
「得心がいったかな?」
豊中
「(鼻を押さえながら)おっけぇっす」
「なにが『おっけぇ』かぁぁぁぁっ!(ざくざくざくざく)」
2人まとめてみじん斬り)
**************************************************訪雪 :「お代官様のお好きな山吹色のかすていらでございます。
あちらの品々ともども、お納めください」ぽん、と手を打つと、隣室との境の襖が開いて、阿蘭陀渡りの珍奇な品々の山が現れる。豊中 :「ふん、御主もなかなか気が利くではないか」訪雪 :「有難きお言葉。これからもどうぞお引き立てを。
それと……」今度は自分で立ち上がり、反対側の襖を細く開く。薄暗い行灯の点った室内には、紅色も艶かしい夜具一式。訪雪 :「(小指を立てて)こちらの方も、お望み通りにご用意してござい
ます。のちほどわたくしめが退散致しましたら、どうぞごゆるりと
お楽しみを……くふふふふ」豊中 :「くっくくく……大黒屋、そちも悪よのう」訪雪 :「いえいえ、お代官様には到底叶いませぬよ」

「お呼びにより参りましたおみこにございます(しずしず)」
豊中
「おお、よく来た。(にたにた)ささ、近う寄れ(がし)」
「あれぇ……何をなさいます、お代官様」
豊中
「まあ、よいではないか。(襖開ける) さあ、参れ。儂とともに楽しもうではないか」
「あ〜れ〜(くるくるくる)……(にやり)」

帯が解けた瞬間、着物が宙を舞う。
 頭から襦袢をかぶってもがく豊中。
 ようやく顔を出した目の前には、目もあやな網タイツ姿のくノ一・尊。
 鋲打ち手甲の右手には、一体あの着物の何処に隠していたのか、
 名刀・漣丸が握られている。

「ふふ……小娘だと思って甘く見たわね豊中。 成敗!(ざしゅううっ)」
豊中
「うぐぁああっ……む、無念……でもちょっとシ・ア・ワ・セ……
がくっ)」
*************************************************************************************************************************ずんばらりと悪役が切られたあと。-------------------

直紀
「とっよなっかさん!」
豊中
「ん〜‥‥‥‥‥んあ?」
直紀
「起きましたぁ?」
豊中
「え〜と」
周囲を見回す。ベーカリー楠店内の喫茶コーナー。海に行く相談をしていたのだった。

豊中
『夢か‥‥‥』
ユラ
「で、車なんだけど‥‥‥‥聞いてる、豊中?」
豊中
「あ、ああ、うん‥‥‥‥‥」
ユラ
「完璧に寝惚けてるわね」
「珍しいですね」
豊中
「はあ」
ちらっと夢の中のシーンが頭をかすめる。御影が尊の入浴を覗く、例のシーンだった。

豊中
『う〜ん‥‥‥‥‥御影の旦那、尊さん相手にはあれは やらんだろうしなあ‥‥‥‥そもそも、どうしてあんな夢なんか見たんだ?』
瑞希
『(思考中)う〜みゅ、御影さんが来ないとなると、み こちゃんラブラブ補完計画が進まないのになぁ。どこで次の補完しよ〜かな』

ある意味)強烈な思考に、豊中は横を見る。瑞希の肘が、ジャケットを脱いだ豊中の腕にわずかに触れていた。そして視線をテーブルに戻すと、置いてあったのは小柄(刀身のみ)。

豊中
『‥‥‥‥‥これか』
居候
『おまえもどうしようもない夢を見るようになったな、若 いの(呆)』



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