- 平塚英一
- 書店瑞鶴の店長。花澄の兄。
- 平塚花澄
- 書店瑞鶴の店員。運動が苦手。
某日曜日、瑞鶴。
- 店長
- 「おい花澄、この雑誌、外のほうに出しといてくれ」
- 花澄
- 「はい」
からからと硝子戸を開けると、空が蒼い。
- 花澄
- 「いい天気」
- 店長
- 「そりゃよかった」
- 花澄
- 「?」
- 店長
- 「確か、今日は近くの小学校で運動会だ」
ひく、と、花澄の表情が引きつる。
言われてみれば、どこからともなく微かに、運動会につきもののBGMが、流れてくるような気がする。
- 店長
- 「雨で流れたりすると、見に行く家族も大変だしな」
- 花澄
- 「……そりゃ、体育が好きならいいけど……」
運動会。
雨で流れてくれるのならば一日中数学でも英語でも構わない……と、切実に願った一人である。
- 花澄
- 「そういう子、必ずクラスに一人はいると思うけどなあ……」
- 店長
- 「少数派だ、そういうのは」
- 花澄
- 「……まあね」
- 店長
- 「それにどうせ高校を卒業したら縁が無くなる」
最後の運動会(名称は体育大会だったかもしれないが)が終わったときには、
「これで一生、この手のものとは縁が切れた!」と喜んだものだ。
そのことを思い出して、花澄は苦笑した。
- 花澄
- 「……晴れて、良かったね」
- 店長
- 「ああ……この雑誌も追加」
- 花澄
- 「はい」
1997年秋の、丁度運動会のシーズンの頃の話です。
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