エピソード699『本日晴天』


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エピソード699『本日晴天』

登場人物

平塚英一
書店瑞鶴の店長。花澄の兄。
平塚花澄
書店瑞鶴の店員。運動が苦手。

本文

某日曜日、瑞鶴。

店長
「おい花澄、この雑誌、外のほうに出しといてくれ」
花澄
「はい」

からからと硝子戸を開けると、空が蒼い。

花澄
「いい天気」
店長
「そりゃよかった」
花澄
「?」
店長
「確か、今日は近くの小学校で運動会だ」

ひく、と、花澄の表情が引きつる。
 言われてみれば、どこからともなく微かに、運動会につきもののBGMが、流れてくるような気がする。

店長
「雨で流れたりすると、見に行く家族も大変だしな」
花澄
「……そりゃ、体育が好きならいいけど……」

運動会。
 雨で流れてくれるのならば一日中数学でも英語でも構わない……と、切実に願った一人である。

花澄
「そういう子、必ずクラスに一人はいると思うけどなあ……」
店長
「少数派だ、そういうのは」
花澄
「……まあね」
店長
「それにどうせ高校を卒業したら縁が無くなる」

最後の運動会(名称は体育大会だったかもしれないが)が終わったときには、
 「これで一生、この手のものとは縁が切れた!」と喜んだものだ。
 そのことを思い出して、花澄は苦笑した。

花澄
「……晴れて、良かったね」
店長
「ああ……この雑誌も追加」
花澄
「はい」

解説

1997年秋の、丁度運動会のシーズンの頃の話です。



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