某日早朝、瑞鶴に向かう道すがら。
濡れてお互い同士べたりとくっついた落葉が、道の脇にわだかまっている。
街路樹の根元に盛り上がるように溜まっている落葉を、花澄はしばし立ち止まって眺めた。
歩いてゆく途中に、松の木が並ぶ一角がある。
細い松の葉が、道中に波を描いている。
きしきしと、踏む足に妙な感覚が伝わってくる。
御免ね、と呟くと、花澄は不安げにしがみついてきた譲羽の頭を一つ撫でた。
靴の裏に付いた松の葉を、とん、と一つ足踏みして払うと、
花澄はまた歩き出した。
1997年晩秋から初冬にかけての頃の、話です。
松の葉って、なかなか腐らないですから。