エピソード736『足止め(笑)』


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エピソード736『足止め(笑)』

登場人物

平塚花澄
書店瑞鶴の店員。どこかぼけてる。
平塚英一(店長)
書店瑞鶴の店長。花澄の兄。

本文

某日、瑞鶴裏手。

店長
「おい花澄」
花澄
「はい?」
店長
「ちょっと、手伝え」
花澄
「……って、こっち誰もいなくなるんだけど」
店長
「いいから、ちょっと手伝えって」

裏に回ってみると、店長が小犬を抱いている。
 傍らに困った顔の人が二人。

花澄
「どうしたの、その犬?」
店長
「いや、こいつの兄弟が一匹、そこの車の下に入り込んで出てこないんだ」
花澄
「……は?」
店長
「お前、手、届かないか?」
花澄
「って言っても……ちょっと待って」

膝をついて、手を伸ばす。
 当然というか何というか……小犬は逃げる(笑)

花澄
「駄目。逃げるだけ……どうしたんですか?」
通行人
「すみません、捨て犬拾ったところなんですけど、目を離した隙に車の下に入ってしまって……」
店長
「こちらの人が、車出せないんだそうだ」
花澄
「成程」

わかっても、小犬は出てこない。

花澄
「困ったな……」

と、店長が腕の小犬の前足を取って、おいでおいでをしはじめる(笑)

花澄
「……何やってるの、お兄……店長?」
店長
「ほーら、お前の兄弟はここだぞー…ほら、しっかり兄弟を呼ばんか」
花澄
「またそういう無茶を(呆)」

当たり前の話だが、小犬は出てこない。

花澄
「車のエンジンかけてみたらどうでしょう? 音に驚いて逃げるかも」
運転手
「あ、成程」

エンジンをかけた途端

SE
ぴゅっ。

小犬はその車の下からは飛び出したものの……次の車の下に這い込む(爆)

店長
「……何故逃げる」
運転手
「いえ、とにかくこの車は動かせますね……ご迷惑お掛けしました」

一礼と共に、車が去る。

店長
「じゃ、後は……よし花澄、後は頼んだ」
花澄
「頼んだって、ちょっと」
店長
「店番誰もいない、じゃ困るだろう。兄は忙しい」
花澄
「忙しいって……店長!」

聞く耳持たず、と、背中にでかでかと書いて、店長が店に戻る。
 残った二名。と、犬二匹。

通行人
「す、済みません、ご迷惑お掛けして」
花澄
「いえ、いいんですけど(……お兄ちゃん、そこで逃げるし)」

時系列

1997年、秋頃の一情景。

解説

犬……は、それでもこの程度に納まりますが、寒い朝、ボンネットの中に猫が入りこんだのに気がつかずに運転して、とうとう猫は……という話もあります。
 運転にはお気をつけて。



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