- 平塚花澄
- 書店瑞鶴の店員。どこかぼけてる。
- 平塚英一(店長)
- 書店瑞鶴の店長。花澄の兄。
某日、瑞鶴裏手。
- 店長
- 「おい花澄」
- 花澄
- 「はい?」
- 店長
- 「ちょっと、手伝え」
- 花澄
- 「……って、こっち誰もいなくなるんだけど」
- 店長
- 「いいから、ちょっと手伝えって」
裏に回ってみると、店長が小犬を抱いている。
傍らに困った顔の人が二人。
- 花澄
- 「どうしたの、その犬?」
- 店長
- 「いや、こいつの兄弟が一匹、そこの車の下に入り込んで出てこないんだ」
- 花澄
- 「……は?」
- 店長
- 「お前、手、届かないか?」
- 花澄
- 「って言っても……ちょっと待って」
膝をついて、手を伸ばす。
当然というか何というか……小犬は逃げる(笑)
- 花澄
- 「駄目。逃げるだけ……どうしたんですか?」
- 通行人
- 「すみません、捨て犬拾ったところなんですけど、目を離した隙に車の下に入ってしまって……」
- 店長
- 「こちらの人が、車出せないんだそうだ」
- 花澄
- 「成程」
わかっても、小犬は出てこない。
- 花澄
- 「困ったな……」
と、店長が腕の小犬の前足を取って、おいでおいでをしはじめる(笑)
- 花澄
- 「……何やってるの、お兄……店長?」
- 店長
- 「ほーら、お前の兄弟はここだぞー…ほら、しっかり兄弟を呼ばんか」
- 花澄
- 「またそういう無茶を(呆)」
当たり前の話だが、小犬は出てこない。
- 花澄
- 「車のエンジンかけてみたらどうでしょう? 音に驚いて逃げるかも」
- 運転手
- 「あ、成程」
エンジンをかけた途端
- SE
- ぴゅっ。
小犬はその車の下からは飛び出したものの……次の車の下に這い込む(爆)
- 店長
- 「……何故逃げる」
- 運転手
- 「いえ、とにかくこの車は動かせますね……ご迷惑お掛けしました」
一礼と共に、車が去る。
- 店長
- 「じゃ、後は……よし花澄、後は頼んだ」
- 花澄
- 「頼んだって、ちょっと」
- 店長
- 「店番誰もいない、じゃ困るだろう。兄は忙しい」
- 花澄
- 「忙しいって……店長!」
聞く耳持たず、と、背中にでかでかと書いて、店長が店に戻る。
残った二名。と、犬二匹。
- 通行人
- 「す、済みません、ご迷惑お掛けして」
- 花澄
- 「いえ、いいんですけど(……お兄ちゃん、そこで逃げるし)」
1997年、秋頃の一情景。
犬……は、それでもこの程度に納まりますが、寒い朝、ボンネットの中に猫が入りこんだのに気がつかずに運転して、とうとう猫は……という話もあります。
運転にはお気をつけて。
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