- 一十(にのまえ・みつる)
- 風水師にして修験者な貧乏大学院生
- 湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
- ベーカリー楠の店長
- 平塚花澄(ひらつか・かすみ)
- 書店瑞鶴の店員。酒豪で酒好き
ベーカリー楠。
からんころん、と、音を立てて。
- 花澄
- 「こんにちは」
- 観楠
- 「いらっしゃい」
- 花澄
- 「ええと、ユラさんの紅茶、いれて頂けますか?」
- 観楠
- 「キープしてる分ですね? はい」
花澄の視線が、席のほうに動く。
- 花澄
- 「こんにちは、一さん」
- 一
- 「あ、お久しぶりです」
- 花澄
- 「この前の二日酔い、大丈夫でした?」
- 一
- 「え?」
思いっきり唐突では、ある。
- 花澄
- 「いえ、以前尊さんのとこ行ったら、キノエちゃんがぷんぷん怒ってて(笑) 訳を聞いたら」
- 一
- 「……それで、ですか」
不意に、花澄が笑いを引っ込める。
- 花澄
- 「に、しても」
- 一
- 「は?」
- 花澄
- 「体に悪いですよ。キノエちゃんに聞いたらいつもの事ではないって言ってたし……そも、一さんそんなにお酒強くないでしょう?」
仲秋の名月の夜、皆で一緒に飲んだ時に、大体の強さはわかったらしい。
- 花澄
- 「翌日に残るまで飲む前に、お酒って美味しくなくなる筈なんですけど……それでも、飲んでたんですね?」
問い、というよりは確認だろう。
花澄も返事を待たなかった。
- 花澄
- 「酔う為に飲むなら、私も時々やるから人のこと言えないけど、まわりに心配させるほど飲むのは、やっぱり飲み過ぎですよ。下手すると体壊しますし」
- 一
- 「反省してます(苦笑)」
- 観楠
- 「はいどうぞ、ユラさんのお茶です」
- 花澄
- 「あ、すみません」
- 観楠
- 「それにしても、花澄さんもそんな風に飲んだりするんですか?」
- 花澄
- 「そんな風に?」
- 観楠
- 「酔う為に飲む、って」
- 花澄
- 「ええ、よくやりますよ(にこにこ) 泣きたいくらい疲れた時なんか、わーっと飲んで寝てしまいます」
- 一
- 「で、翌日残らないんですか?」
- 花澄
- 「残しません。……だって、こいつ飲んだな、って他の人に分かってしまったら、何の為に飲んだかわからないでしょう?」
- 一
- 「はあ?」
- 花澄
- 「二日酔いなんてしてたら、酔いたくなる原因があったってことが他の人にわかってしまいますからね」
結構厳しい言葉かもしれない。
- 一
- 「そんなもの、ですか」
- 花澄
- 「飲み助なりの論理、ですけどね(にこにこ)」
1997年冬頃の風景です。
エピソード720『二日酔いの朝』に続く形のエピソードです。
頑として人前では酔わない……まあ、そういうのもポリシーですよね。
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