エピソード746『女の子って』


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エピソード746『女の子って』

登場人物

如月尊
花屋FLOWER SHOP Mikoの店主。退魔師でもある。
平塚花澄
書店瑞鶴店員。四大の加護を受けている。
譲羽
少女人形にとっついた木霊。花澄の擬似娘。
キノエ
一十の式神。オコジョの姿をとることもある。

本文

某日、FLOWER SHOP Miko。

「いらっしゃいませ、って、あ、花澄さん」
花澄
「こんにちは」
譲羽
「ぢいっ」
「ゆずちゃんも(笑)」

背中の袋から、ぴょい、と飛び出した人形は、元気よく手を振り回した。

花澄
「今日は、ゆずのほうがお花買いに来たんです」
キノエ
「え、ほんと?誰に?」
譲羽
「ぢいぢいっ(大家さん)」
キノエ
「……大家さんって……大家さん?(汗)」

何か妙、とは、目の前の大真面目な顔を見るに……流石に口に出せない。

「えっと、どんな花がいいのかな?」
譲羽
「ぢ……?」
花澄
「茶室とか、床の間に飾って似合う花、がいいと思うんですけど」
「成程。じゃ、適当に見繕いますけど……それでいい、ゆずちゃん?」
譲羽
「ぢいっ!(うん!)」

暫し後。
 キノエが花束を抱えた譲羽を松蔭堂に『配達』しに行ってから。

「でも、ゆずちゃんどうしたんです?」
花澄
「いえ、この前の騒ぎから、あの子、松蔭堂に行ってないんですよ」
「ああ、あの……(汗) ゆずちゃん、怖がってましたもんね」
花澄
「それもあるんですけど、ね」

花澄が困ったように笑う。

花澄
「どうもあの子……それ以上に『自分が大家さんから逃げちゃった、ああ悪いことした』って思ってるらしくて」
「は?」
花澄
「で、一人で行くのいやだ、って言うから」
「配達してもらう為に、ですか?」
花澄
「口実にもなりますしね」

溜息が、一つ。

花澄
「……どーしてああも、女の子やってるのかな、とか思うんです」
「だってもう、女の子でしょ?(笑)」
花澄
「そうですけど……部屋の中でぐずぐずしてるし、そんなに悪いと思うならまず謝りに行ってみたら、って言ったら泣きそうになるし……。 ああもう、女の子ってややこしいんだから」
「だから、女の子って、やってて楽しいんですって(笑)」

……沈黙。
 花澄は、まじまじと尊を見ている。
 結構……なんてものではなく、居心地が悪い。

「………花澄、さん?」
花澄
「……そーなんだあ……」
「は?」
花澄
「女の子って、やってて楽しいものなんですね!?」

そこでそこまで驚くか(呆)

「何もそこまで意外そうに……」
花澄
「意外ですよぉ。そうか、女の子って、そう生まれて楽しいもの、なんですね! ……そうかあ……」

唯一人納得しつつ、花澄は何度も頷いていたが、

花澄
「じゃ、有難うございました(ぺこり)」
「あ、はあ」

硝子戸が開いて、また閉まってから。

「……花澄さんて、時々良く分んない……(汗)」

時系列

1997年、秋の深まる頃の話。

解説

エピソード『黒ファイル』の後を受けた話です。この「黒ファイル」騒動の際、散々っぱら大家さんに驚いた譲羽が、お詫びに……というシーンです。
 しかし…女の子に生まれるって、楽しいものなんですねえ(感心するな)



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