時計はもうそろそろ明日の時刻を示そうとしている。
いつもならば夜更かしの木霊も、今日ばかりはさっさと眠っている。
ワインの瓶を抱えて、花澄はその横に座っている。
サンタから服を借りられるほどのお友達が『そうだねえ、早く寝ないと、サンタさんも来ないかもしれないね』と言うのである。
おかげで部屋に帰った途端、押し入れの戸に取りついて『お布団!』と要求してくれたものだ。
ぐっすり眠り込んでいる譲羽の枕元には、サンタの格好をしたクマと、赤いミトンをはめた手乗り羊が並べてある。
不思議なもので、身動きしない今でさえ、譲羽は既に人形に見えない。
触れてみれば胡粉を塗った肌は、ひんやりと少し湿ったように冷たく、固いのだが。
大きな金色の目の、無類に素直な少女。
木霊。
サンタは本当に居て、花澄や訪雪はそのお友達で……などと言うことを、この少女は一体いつまで信じ続けるのだろうか。
幼児から幼女へ、そして恐らくは少女へ。
これから先、どんな風に成長するのか。
それを思うと、少し怖くもある。
口に出してから、自分でおかしくて、くすりと笑う。
小さな笑いに反応してか、譲羽が一つ寝返りを打った。ぢ、と小さく声が漏れる。
花澄は手を伸ばして、頭をそっと撫でた。
1997年12月24日深夜。
譲羽とクリスマス。
よく考えれば、彼女にとって、はじめてのクリスマスだったわけですが…………花澄にとっても、有る意味でははじめてのクリスマスです。