- 平塚花澄(ひらつか・かすみ)
- 書店瑞鶴店員。おおぼけ。
- 平塚栄一(ひらつか・えいいち)
- 書店瑞鶴店長。そこそこぼけ。
日曜、瑞鶴。
開店前。
- 花澄
- 「おはようございます」
- 店長
- 「誕生日だったなあ」
途端に眉間にしわが入る花澄である。
- 花澄
- 「……人の顔見た途端、それ?」
- 店長
- 「人が親切にも、ああめでたいな、と思って」
- 花澄
- 「ないくせに」
- 店長
- 「めでたいとも。還暦までの折り返し地点まで来たじゃないか」
- 花澄
- 「……自分はもうとっくに折り返し地点をまわってるくせに」
三十歳は、正直結構重い。
若造、という言葉でけなされる事はあっても、若造、という言葉で
逃げる事は出来なくなる歳。
- 花澄
- 「……この程度で三十歳、っていうと、文句でそう」
- 店長
- 「文句は出んさ。ただ、相手にされんだけだろう」
叩き潰された後に、立ち直る事も……無くなっていくのかもしれない。
- 花澄
- 「……立つ、んだよね」
- 店長
- 「そう、言うよな」
- 花澄
- 「ぐらぐらしそう」
- 店長
- 「まあ、四十までは迷ってもいいみたいだから」
- 花澄
- 「……そこまで、お兄ちゃんは後何年?」
- 店長
- 「……やかましい」
結局は、全て未知数。
- 花澄
- 「今まで何人が三十歳になってきたとしても、私がなるのは、これが初めて、なんだなあ」
- 店長
- 「…………で?」
- 花澄
- 「覚悟、決めないとね」
真っ正面から受けて立つのか、何となく引きずられてゆくのか。
- 店長
- 「ま、そんなもんだろうな。……で、そら、この雑誌」
- 花澄
- 「あ、はいはい」
1998年1月18日
要するに、花澄の誕生日エピソードなんですけど。
人間、還暦の半分くらいになると、誕生日もそんなもん、ってところです。
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