今日は、納期の締め日。目的の開発部分は昼過ぎにはあげ、既に納品している。事務所の移転や、能力の暴走などいろいろあったが、逆に一度暴走した能力はさらに安定化し、仕事は驚異的なスピードで片づける事が出来た。
当然、納めたプログラムが形になるまで、わずかの休暇が訪れる。
会社にいても、やる事はない。いつもなら、ゲーセンに繰り出すところだが、ゲーセンで暴走したのはつい先日の事である。
どうやら、懲りてないらしい。ただ、彼なりの根拠はあるようだ。ゲーセン近くをうろついて、危うく不信人物で通報されそうになったのも、先日の事だ。
こうして、ゲーセンにやってきた。一瞬扉の前で一息ついてから、扉を開ける。今度は、身構えているせいか、制御しているのか、強烈な意志のほとんどを排除し、自分の意識を保つ。
あっと言う間に、正面で一番目立つ筐体を横切る。彼は、人に見せる程ゲームがうまい方ではないし、体力も自信が無い。あの手のゲームは苦手なのだ。
割と有名な、画面が弾で埋まるシューティングゲームを選ぶ。別に、得意なわけではない。前までは、2面位までしか行けない程下手なのだ。
筐体の前に座り、コインを入れる。普通にゲームがはじまるが、司は自機を決めたきり操作をしない。
しばらくしてから操作を開始する。自機が、紙一重で弾を避けているように見えるが、普通にやっていると命中している弾も命中せず、すり抜けてゆく。
普通なら、バランスを壊し、面白さを半減させるはずなのだが……。
それでも、結構熱中できるのだから、ある意味、幸せなのかもしれない……。
不毛である……。
いわゆる日常系の単独型エピソード。キャラクターの異能により日常が異化され、人物のあり方が見えたりするのが興味高いところです。