- 御剣司(みつるぎ・つかさ)
- 電操士。最近吹利に越してきた。
- 前野浩(まえの・ひろし)
- 人間コンバータ。
- 天方狼介(あまがた・ろうすけ)
- くらい過去を持つらしい具象化能力者。
- 蒼月かける(あおつき・かける)
- ねこみみふぇちな光使い。
ベーカリーでのひととき、司は暇があるとここにきていた。
珍しく人の少ない日曜日。いつもいるメンバーは、何やら怪しげな専門雑誌を読んでいるかける、眠っている狼介、前野。ふと、前野浩と目が合う。
- 前野
- 「ところで、どうです? 此処には慣れましたか?」
- SE
- ゴンッ
- 狼介
- 「……」(テーブルに頭をぶつける)
- 司
- 「そう……ですね。昔を思い出しますよ」
- かける
- 「……(^^;」(狼介を見る)
- 前野
- 「むかし?」
- 狼介
- 「……Zzz……」(それでも寝ている)
- 司
- 「高校のとき、放送委員でね、こういう雰囲気だったんで
すよ」
そこまでいって、自嘲の笑みを浮かべる。
- 司
- 「昔を懐かしむなんて、年取ったなぁ……(苦笑)」
- 前野
- 「あぁ、いや……吹利には……。って事だったんです
が……(苦笑)」
おおぼけである。先ほどまでコーヒーを飲んで雰囲気に浸っていたせいか、質問内容に疑いもせずにベーカリーのことだと決め付けていた。
- 司
- 「あ……そうですか(苦笑)こいつは失礼」
またも自嘲。
- 司
- 「そうだな……何とか、迷わないでここにこれるようにな
りましたよ」
方向音痴の彼にとって、同じ所に1度や2度ほど到着ところで、道を覚えるわけではない。記憶力が無いわけではないが、記憶している方向が違うのである。
- 前野
- 「すぐに慣れますよ(笑)」
- 司
- 「社長が……あ、うちの会社の社長がですね。吹利に事務
所を移したのも、なんとなく分かる気がします」
- 前野
- 「へぇ……」
- 司
- 「そうだな……不思議な土地ですね。吹利って」
- 狼介
- 「……」
- 前野
- 「そうですな」
- 司
- 「事故があってからの孤独感とか、焦燥感とかは、今は感
じてません。それって『吹利に慣れた』って事なのかな?」
- 前野
- 「じゃないですかね(笑)」
「“風都”って、聞いた事在ります?」
- 司
- 「……いえ」
- 前野
- 「吹利の雅号でしてね。風の都と書くんです」
- 司
- 「風都……何か意味があるんですか?
- 狼介
- 「……」(うつ伏せの状態で微動だにしない)
- 前野
- 「さぁ……? ただ、風が集うと考えると、なんとなくしっ
くりきませんか(笑)」
- かける
- (ひまつぶしに某専門誌を読んでる)
- 司
- 「はい。たしかに。かぜ……か。風が集まる都……なんで
すね。吹利は」
- 前野
- 「きっと、慣れるのは早いですよ」
- 司
- 「”慣れるのは”?」
- 前野
- 「あっ、別に意味はないですから、気にしないでください」
- 司
- 「そうですか。どうも、深く考えちゃうんですよね。悪い
癖だな……」
- 前野
- 「深く考えすぎない方が、身のためですよ(笑)」
- 司
- 「はい」
吹利は風都、狭間から吹く風は、吹利に集まる……。司もまた、風に乗って集まった一人なのかもしれない。
狭間06の企画そのものに慣れつつあった心境と重ね合わせての、一話。
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