空を見上げて開口一言。雲ひとつない真っ青なドーム。
とか言っていると
大家のお嬢さんが声を張り上げて叫んでいる。どうでもいいが眼鏡っ娘である。
潤は再び、声を張り上げながら探し始める。
手首を軽く振る。黒い袖から、小さな鏡が手の中に収まる。
対象を頭の中に思い浮かべる。
緑の中にうずくまる黒い影。木の上かな?
風見アパート近くの小学校の前。校庭には、サッカーボールで遊んでいる中学年ぐらいの子供たちしかいなかった。ゴールの後ろの自転車が陽光にきらめく。
校舎近くの大銀杏。その木の上に、黒い影。普通の人だと気づきようのない小さな影を、銀杏の葉を透視して見つける。
気が付いた様子がない。
なぜそんなものを持ち歩いているのだ(^^;
それでも、反応無し。
かける、銀杏の幹に手を掛け、
ずるっ
ずるっ
学校にいた先生に事情を話し、倉庫から脚立を持ってくる。
枝の上の丸い影。
そーっと手を伸ばし、包むように触れる
耳をぴくっとうごかす。目を開けて、くるりとこっちを見る。
あっ。とかけるが思った瞬間。幹の上を走り出す。
ずるっ
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…………………………
……………
自由落下
走り去る足音が聞こえたかもしれない。
足をひきずりながら風見アパート前。
潤が猫を抱えているのがちらりと見えた。
かける君の報われない親切の話。どうも能力をつかって親切にをすると報われない傾向があるような気がするねぇ。