エピソード1008『クロ探しに苦労する』


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エピソード1008『クロ探しに苦労する』

登場人物

蒼空かける(あおぞら・かける)
  ねこみみふぇちな光使い。風見アパート住人
中渡潤(なかわたり・じゅん) 風見アパートの大家の孫娘。中学1年生
クロ(くろ)
潤の飼い猫

いなくなったクロ

かける
「ふぃ。今日も暑くなるねぇ」

空を見上げて開口一言。雲ひとつない真っ青なドーム。

かける
「日曜はすることないし。ベーカリーで涼むかなぁ」

とか言っていると

「おーい。クロやーい」

大家のお嬢さんが声を張り上げて叫んでいる。どうでもいいが眼鏡っ娘である。

かける
「どうしたんだい?」
「クロが帰ってこないんです」
かける
「クロというと、あの白猫か」
「……(ふぅ) クロ、見かけませんでしたか?」
かける
「いいや」
「そうですか……失礼します」

潤は再び、声を張り上げながら探し始める。

かける
(ちょっと調べてみるか)

手首を軽く振る。黒い袖から、小さな鏡が手の中に収まる。

かける
(クロくろ黒kuro〜)

対象を頭の中に思い浮かべる。

かける
(ふむ)

緑の中にうずくまる黒い影。木の上かな?

かける
(けっこう高いなぁ……てことは)

木の上にはなにがある

風見アパート近くの小学校の前。校庭には、サッカーボールで遊んでいる中学年ぐらいの子供たちしかいなかった。ゴールの後ろの自転車が陽光にきらめく。

かける
「いたいた」

校舎近くの大銀杏。その木の上に、黒い影。普通の人だと気づきようのない小さな影を、銀杏の葉を透視して見つける。

かける
「おりてこーい」

気が付いた様子がない。

かける
「おーい。猫皇帝だぞ〜」

なぜそんなものを持ち歩いているのだ(^^;
 それでも、反応無し。

かける
「……降りられないのかなぁ」

かける、銀杏の幹に手を掛け、

かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」

ずるっ

かける
「あうっ」
かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」
かける
「よいしょ」

ずるっ

かける
「……」
かける
「……はしご借りてこよう」

到着

学校にいた先生に事情を話し、倉庫から脚立を持ってくる。

かける
「……よいしょっと」

枝の上の丸い影。

かける
「……眠っている(^^;」

そーっと手を伸ばし、包むように触れる

クロ
(なきごえ)

耳をぴくっとうごかす。目を開けて、くるりとこっちを見る。

クロ
(たったった)

あっ。とかけるが思った瞬間。幹の上を走り出す。

かける
「おい、ちょっと待て」

ずるっ

かける
「え?」

………………………………………
 …………………………
 ……………
 
 自由落下

クロ
(鳴き声)

走り去る足音が聞こえたかもしれない。

帰還

かける
「えらい目にあった」

足をひきずりながら風見アパート前。
 潤が猫を抱えているのがちらりと見えた。

かける
「……さて、仕事にいきますか」

解説

かける君の報われない親切の話。どうも能力をつかって親切にをすると報われない傾向があるような気がするねぇ。



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