- 津久見神羅(つくみ・から)
- 吹利大の情報工学科一年生
- 佐久間拓巳(さくま・たくみ)
- 吹利大の情報工学科の学生
図書館には人が多くて嫌気がさした神羅はベーカリーに逃げ込んでいた。
アイスコーヒーを注文して空いていたテーブルにつく。
- 神羅
- 「はぁぁ……」
溜息をつきながらも教科書とノートを開く。
- 神羅
- 「分からん……」
シャーペンを持つ手はいっこうに動かずに何分か過ぎていた。
カランカラン、と来客を示すベルが鳴った。
- 佐久間
- 「ふぅ、外は暑いなぁ」
店内を見渡すと、勉強をしている男が一人。後ろからそっと近寄ってテーブルを見ると見慣れた教科書があった。
- 佐久間
- (おや? この教科書は……)
後ろに人の気配がして神羅が振り向く。すると、そこに立っていた佐久間と目があった。
何となく、二人とも会釈をする。
- 佐久間
- 「もしかして君、吹利大の情報工学科?」
- 神羅
- 「はぁ、そうですけど……あなたは?」
- 佐久間
- 「君と同じ情報工学科の3年で、名前は佐久間拓巳」
- 神羅
- 「そうなんですか。あ、ワシは津久見神羅といいます」
- 佐久間
- 「で、その教科書って事は白崎先生?」
- 神羅
- 「そうです。非常に訳が分かんなくて」
- 佐久間
- 「あぁ、あの先生の試験は簡単だから大丈夫だよ」
- 神羅
- 「簡単なんですか?」
- 佐久間
- 「うん。だって、その先生の試験は毎年同じだしね。
しかも、持ち込み可」
- 神羅
- 「それは確かに。じゃあ先輩、過去問持ってますか?」
- 佐久間
- 「うん。丁度、今日後輩から返してもらったからね。
君に貸してあげるよ」
- 神羅
- 「ありがとうございます」
- 神羅
- 「いやぁ、本当に過去問のまんまとは思いませんでした」
「おかげで助かりました」
- 佐久間
- 「いやいや、僕も去年あの先生の授業を取っていたから。
で、試験の出来はどうだった?」
- 神羅
- 「9問中8問はできました」
- 佐久間
- 「ほう、それは良かった」
少しして。
- 佐久間
- 「(ぼそっ) ……僕も来年また受けるとしよう」
1999年。前期試験中のベーカリーでの一場面です。
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