エピソード1011『試験勉強』


目次


エピソード1011『試験勉強』

登場人物

津久見神羅(つくみ・から)
 吹利大の情報工学科一年生
佐久間拓巳(さくま・たくみ)
 吹利大の情報工学科の学生

試験前

図書館には人が多くて嫌気がさした神羅はベーカリーに逃げ込んでいた。
 アイスコーヒーを注文して空いていたテーブルにつく。

神羅
「はぁぁ……」

溜息をつきながらも教科書とノートを開く。

神羅
「分からん……」

シャーペンを持つ手はいっこうに動かずに何分か過ぎていた。
 カランカラン、と来客を示すベルが鳴った。

佐久間
「ふぅ、外は暑いなぁ」

店内を見渡すと、勉強をしている男が一人。後ろからそっと近寄ってテーブルを見ると見慣れた教科書があった。

佐久間
(おや? この教科書は……)

後ろに人の気配がして神羅が振り向く。すると、そこに立っていた佐久間と目があった。
 何となく、二人とも会釈をする。

佐久間
「もしかして君、吹利大の情報工学科?」
神羅
「はぁ、そうですけど……あなたは?」
佐久間
「君と同じ情報工学科の3年で、名前は佐久間拓巳」
神羅
「そうなんですか。あ、ワシは津久見神羅といいます」
佐久間
「で、その教科書って事は白崎先生?」
神羅
「そうです。非常に訳が分かんなくて」
佐久間
「あぁ、あの先生の試験は簡単だから大丈夫だよ」
神羅
「簡単なんですか?」
佐久間
「うん。だって、その先生の試験は毎年同じだしね。 しかも、持ち込み可」
神羅
「それは確かに。じゃあ先輩、過去問持ってますか?」
佐久間
「うん。丁度、今日後輩から返してもらったからね。 君に貸してあげるよ」
神羅
「ありがとうございます」

試験後

神羅
「いやぁ、本当に過去問のまんまとは思いませんでした」 「おかげで助かりました」
佐久間
「いやいや、僕も去年あの先生の授業を取っていたから。 で、試験の出来はどうだった?」
神羅
「9問中8問はできました」
佐久間
「ほう、それは良かった」

少しして。

佐久間
「(ぼそっ) ……僕も来年また受けるとしよう」

時系列と舞台

1999年。前期試験中のベーカリーでの一場面です。



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