夕食の買い物帰り、降りそうだった天気ではあったが、とうとう降ってきた。しかも、今まで我慢していたかのようなどしゃ降りである。
雨と感じてすぐに走り出したが、間に合うわけが無い。
白いTシャツとホットパンツという服装は、雨を防ぐには何の効果も持たない。
あたりが一瞬光る。
思わず立ち止まる。
……数秒後……
記憶にある中で、雷に遭った事はない。いわゆる初体験である。
雨にうたれるのも気にせずに、上空を見上げる。山の方で、まさに落ちている様が見えた。
既に背中までの黒髪から水滴が滴り、Tシャツは肌に張りついている。雨は相変わらず肌を刺すかのごとく降り注いでいる。
その中で、ただ上空を眺めている少女。
しかも、そこそこの美人と来ている。道行く人は傘の隙間から遠巻きに見て、足早に通り過ぎていく。
「雷」は「神成り」。そして、布都御魂剣を携えるのは雷神、タケミカヅチである。
彼女の中の、自分の存在そのものが、雷に反応しているのであった。
そのときふっと雨が遮られたのに気づく美都。
後ろを振り返ると、傘を差し出す紫苑が居た。
傍らから、声がかかる。
紫苑から、白い雨合羽のようなものを渡される。マントだと気づいたのは後の事だ。
今日の雷は、夜まで鳴り止む事はなかった。
夕暮れに買い物に出た美都は、突然の雨に降られてしまう。
雨は酷くなり、雷まで鳴り出す。美都は初めての雷に、何かを感じるのだった。