エピソード1014『かみなり』


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エピソード1014『かみなり』

登場人物

布施美都(ふせ・みと)
1999年4月より前の記憶、記録の無い少女。自分の過去を探している。
布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)を現臨させる108の要素の一つ。
紫苑(しおん)
 美都が目覚めたときからそばにいる金属生命体。 どのような姿を取る事も可能。

夕立

SE
ポッ……ポツッ……ザー
美都
「ああっ! 降ってきちゃった……」

夕食の買い物帰り、降りそうだった天気ではあったが、とうとう降ってきた。しかも、今まで我慢していたかのようなどしゃ降りである。

美都
「ひやあぁぁ……雨粒が大きいっ……痛いぃ……」

雨と感じてすぐに走り出したが、間に合うわけが無い。
 白いTシャツとホットパンツという服装は、雨を防ぐには何の効果も持たない。

効果
ピカッ

あたりが一瞬光る。

美都
「えっ?」

思わず立ち止まる。
 ……数秒後……

SE
ゴロゴロゴロ……
美都
「あ……雷?」

記憶にある中で、雷に遭った事はない。いわゆる初体験である。

効果
ピカッ
SE
ゴロゴロ……
美都
「うわぁ……」

雨にうたれるのも気にせずに、上空を見上げる。山の方で、まさに落ちている様が見えた。

美都
「なんだろ……どきどきする……」

既に背中までの黒髪から水滴が滴り、Tシャツは肌に張りついている。雨は相変わらず肌を刺すかのごとく降り注いでいる。

美都
「……」

その中で、ただ上空を眺めている少女。
 しかも、そこそこの美人と来ている。道行く人は傘の隙間から遠巻きに見て、足早に通り過ぎていく。

美都
「いかずち……かみなり……かみ……なり……」

「雷」は「神成り」。そして、布都御魂剣を携えるのは雷神、タケミカヅチである。
 彼女の中の、自分の存在そのものが、雷に反応しているのであった。
 そのときふっと雨が遮られたのに気づく美都。
 後ろを振り返ると、傘を差し出す紫苑が居た。

紫苑
「美都……」

傍らから、声がかかる。

美都
「あ……紫苑ちゃん……」
紫苑
「どうしたんですか? こんな所で傘もささずに……」
美都
「え……あ、夕食作らなくちゃね。ああっ……もうびしょびしょ……下着までしみちゃってるよぅ……」
紫苑
「ふむ……下着まで透けてますね。これを羽織っていてください」
美都
「ん……ありがと……」

紫苑から、白い雨合羽のようなものを渡される。マントだと気づいたのは後の事だ。

紫苑
「では、帰りましょうか」
美都
「うん……あ、また……」
SE
ごろごろごろ……

今日の雷は、夜まで鳴り止む事はなかった。

解説

夕暮れに買い物に出た美都は、突然の雨に降られてしまう。
 雨は酷くなり、雷まで鳴り出す。美都は初めての雷に、何かを感じるのだった。



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