エピソード1019『3kgのカレー』


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エピソード1019『3kgのカレー』

登場人物

豊秋竜胆(とよあき・りんどう)
ベーカリーの常連。無道邱の居候。
湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
ベーカリーの店長。
前野浩(まえの・ひろし)
ベーカリーの常連。無道邱の料理担当。
滝郁代(たき・いくよ)
ベーカリーの常連。香辛料会社研究員。
片山慎也(かたやま・しんや)
ベーカリーの常連。
佐久間拓巳(さくま・たくみ)
風見アパートの住人

本編

竜胆
「辛いよ〜〜」

ベーカリーでこんな悲鳴があがった。

観楠
「あ、おめでとう。それ当たりだ(笑)」
竜胆
「当たりってなによ〜」

そんなに辛かったのか、涙目になっている竜胆。
 すかさず、前野がピッチャーからグラスに水を注いで竜胆に手渡す。
 この気配り。さすがである。

観楠
「あれ、言ってなかったっけ。ほらこれ。」

と、指さした先には貼り紙が。
  カレーパンフェア実施中!
  当たりが出ればもう一個。喫茶コーナーで食べた方限定。
  なお、当たりのパンは中身の色が赤くなっています。

竜胆
「……」
観楠
「ってなわけで。はい、カレーパンもう一個」
竜胆
「もう要りません……前野君、あげる(水ごくごく)」

パンを受け取った前野。観楠に確かめる。

前野
「これは普通のカレーパンなんですよね?」
観楠
「ああ、それは大丈夫。いつもの奴だよ」

からんからん。
 と、佐久間がベーカリーに入ってきた。

郁代
「……カレーといえば、ここに分析用のレトルトカレーが3kgあるんやけど。誰かいらん?」
慎也
「あ、ほしいかも」
郁代
「ちなみに1パックで3kgね」
慎也
「う、それはちょっと……」
竜胆
「それはちょっとほしいですけど……味はどうなんですか?バーモント、インド、ジャワ、ゴールデンのどれくらいですか?」

後者三つは同じ位の気がするが……。

郁代
「味見してへん」
前野
「それって、何リットルぐらいあるんですか?」
郁代
「ん〜、大体3リットルくらいやろか」
竜胆
「それくらいなら大丈夫、ちょーだい、ください(>▽<)」

珍しく自分で料理する気になったんだろうか。

郁代
「……一気に3リットルを鍋にかけるんか(汗)」
前野
「寸胴がありますから。……でもカレーなら、レトルトじゃないちゃんとしたのを作りますよ?」
竜胆
「うー…そっちのほうがいい、かな?」

それを聞きつけた佐久間。

佐久間
「あの、それ譲っていただけません?」
郁代
「ん? 別にいいけど。何に使うん?」
佐久間
「あ、うちの下宿に置いてあるカレーがほとんど無くなってまして」
慎也
「それって……もしかして永久カレー?」
佐久間
「ええ。今週は僕が当番なんですよ」

佐久間の住んでいる風見アパートには、昔から常にカレーで満たされている鍋がある。
 もちろん、無限にカレーが湧いて出るわけはなく、週代わりで当番をおいてカレー鍋の中身が無くなってしまわないよう、常に補給しているのであるが。
 これが永久カレーとよばれている代物である。

佐久間
(よっし、これで今週のカレー代が浮いた〜)
郁代
「あ、でもこれ分析用やから具は入ってないで。具は別にかってな。(笑)」
佐久間
(がく)

なかなかうまい話は転がっていないものである。

解説

実際のレトルトカレーネタをもとに、永久カレーネタとからめてエピソード化したもの。ちなみに本物にはちゃんと具が入っているらしい。



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