- 富良名 裕也 (ふらな・ゆうや)
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通称フラナ。大学に入学したが、どう見ても小中学生にしか見えない。
- 平塚 花澄 (ひらつか・かすみ)
- 四大の力を従え「春の結界」を身にまとう女性。
書店「瑞鶴」の店番にして欠食児童達の守護者、でもある。
- 堀川 祐司 (ほりかわ・ゆうじ)
- 静電気を操る、生きた電源装置。
紅雀院大学の考古学教室に助手で勤務。
某日、瑞鶴。
明るい音と共に、硝子戸が開く。
入り口の猫がよいせ、と立ちあがる。
- 花澄
- 「いらっしゃいませ……ってあら(笑)」
- フラナ
- 「お久しぶりっ(にぱっ)」
相変わらずの笑顔に、花澄もやはり笑顔で応じる。
- 花澄
- 「ほんとに……大学合格、おめでとうございます(にこにこ)」
- フラナ
- 「ありがとーございますっ(ぺこっ)」
そういえば、と店長が少し驚いたようにフラナを見る。
フラナのほうは……気がついていない。
- 花澄
- 「それでフラナ君、今、家から通ってるの?」
- フラナ
- 「大学?ううん、アパートに一人暮しだよっ」
- 花澄
- 「…………え?(途端に心配顔)」
一十。狭淵美樹。八神敦。
食糧難を如実に表す人々が、男子大学生一人暮し組に多すぎるのである。
- 花澄
- 「フラナ君」
- フラナ
- 「なに?」
- 花澄
- 「あのね、御飯に困ったらいつでも来てね。こちら10時までお店開いてるからその後かも知れないけど……でも必ず何かご馳走するから(真剣っ)」
- フラナ
- 「うんっ。花澄さんありがとう(にこっ)」
- 店長
- 「それで……富良名君はどこの大学だったっけ」
- フラナ
- 「紅雀院大学文学部!」
- 店長
- 「へえ……で、その中の?」
- フラナ
- 「国史学科」
- 花澄
- 「面白そうね……授業はどう?」
- フラナ
- 「面白いよ。でも、一時限からあるとやっぱり眠いなー」
- 花澄
- 「それは寝たら駄目よ。先生だって眠いの我慢してるんだから(まじ)」
- フラナ
- 「うん。それに一時限の授業面白いし(^^)」
- 花澄
- 「どんな?近代史か何か?」
- フラナ
- 「ううん、堀川先生の考古学」
- 花澄
- 「……え?堀川?」
- フラナ
- 「堀川……えと、祐司先生。まだ若い先生だよっ」
ホリカワユウジ……堀川祐司。
漢字変換はごく容易だった。
音による記憶力はろくでもないのだが、一旦活字と化した情報についての記憶能力は並み以上をゆく。
本の予約をする際に書いてもらった名前は、そうそう忘れるものではない。
まして、本が本である。
すっと視線を店長に移すと、向こうも気がついていたらしく、微かに眉を動かした。
- 花澄
- 「若い……どんな人?」
- フラナ
- 「背の高い人っ」
……ちょっと……比較対象に難があるかもしれない。
- 花澄
- 「考古学、で国史……ねえ……面白い授業、なんだよね?(にこ)」
- フラナ
- 「うんっ」
- 花澄
- 「じゃ……ね、フラナ君。夕飯うちで食べるときにでも、その授業の話、してくれる?」
- フラナ
- 「うん、勿論!」
悪党、と、店長の口元が動く。
かろく無視して花澄はにこにこと笑う。
猫が欠伸をして、背中を伸ばした。
フラナを中心に、花澄、祐司、それぞれが顔見知りであることによる「情報漏洩」(笑)のヒトコマを描写したエピソードです。(^_^;
フラナにまつわる「情報漏洩」シリーズの第1弾でもあります。
時期としては、『そして始まりの春』より一ヶ月ほど後、フラナ君が大学や風見アパートに、それなりに馴染んだ頃だそうです。
(『夕餉の図』は、大体同時期の少し後の出来事です)
『「吹利史」』『そして始まりの春 '99』『到着!風見アパート』も、参照して下さい。
(解説・文責:ごんべ)
- 初出
- 1999/5/24 "[KATARIBE 13039] [HA06][EP] 「筒抜け」"
- 作者
- E.R
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