エピソード1032『時間が無いなんて『嘘』っ(笑)』


目次


エピソード1032『時間が無いなんて『嘘』っ(笑)』

登場人物

水瀬璃慧(みなせ・あきえ)
創作活動に勤しむ高校1年生。PNやHNは、瀬川輝(せがわ・ひかる)。
勧誘されて、9月にオーケストラに入部。パートはクラリネット。
白月悠(しらつき・はるか)
璃慧のクラスメイト。
璃慧をオーケストラ部に引き込んだ張本人。担当はフルート。
雪丘望(ゆきおか・のぞむ)
璃慧と悠のクラスメイト。女の子。
オーケストラ部ではヴァイオリンパート。
部長
オーケストラ部の部長。楽器はファゴット。

本編

3階の、東側の一角に音楽室はある。
 扉だけ見れば、普通の部屋。
 だけど、休み時間と放課後には特別な賑わいを見せる。
 
 放課後。一番活性化する時間。
 第三者から見ると、不思議な雰囲気が醸し出されているらしい。
 本人たちは、ただ普通に練習しているだけなのだが。
 とりあえず、練習が一段落して休憩である。

璃慧
「(うぅ、疲れた〜)」
「……璃慧、だいじょうぶ?」
(腕を伸ばして)「つかれたぁ……腕がばきばきっていってる……」
璃慧
「筋肉痛い……(つぶやく)」

休憩になったとたんに騒ぎ出す部員たち。
 公演まであと1ヶ月を切っているというのに、気楽なものである。

部長
(突然出没)「輝ちゃんだいじょうぶ?」
璃慧
「(相変わらず神出鬼没だなあ……) ……眠いっ(はきすてるように)」
部長
「入ったのが遅かったからね……まぁでもあとは練習次第かな。けっこうよくなったし」
「おーぱちぱち」
「よかったね」
璃慧
「まだ音が全部は出ないんだよう」
部長
「練習あるのみ。あ、これ、これからの練習予定ね」

部長は練習予定表ををみんなに配ってまわっていたらしい。
 それを見た璃慧の顔がひきつった。

璃慧
「う゛……(絶句)」
部長
「ん?」
璃慧
「予定というか……毎日あるように見えるのは気のせいかなぁ……」
部長
「いんや。毎日だよ。毎日放課後授業が終わったらここに直行。で、下校時間まで練習」
璃慧
「(即座に) ばっくれるぅ〜。時間ないんだよぉ。文芸の方だって〆きり近いのに……(ぶつぶつ)」

会話を聞いて、紙に視線を落とした悠と望も固まる。

(小声で)「朝と昼もこいって言ってたよね(汗)」
(同じく小声で)「言ってたねぇ(遠い目)」
(まだ小声)「中間試験があるって、わかってるのかな部長は(汗)」
(やっぱり小声)「はうっ……勉強しないとなぁ……」
(小声で)「オケラに入った時点で、勉強はあきらめろと言いたいのかなぁ……」
(ぼそっと)「やばい……」

とかやっている間に、強引に説得されてしまった璃慧。
 部長の笑顔と言うのも、それなりに恐いものがある。

部長
「じゃ、そういうことで。今日はとりあえず他のパートといっしょにメインの音階の部分を合わせればいいかな」
璃慧
「わたしはやることあるのっ」
部長
「がんばってね。このあとはパート練習だから」
璃慧
「う〜」

あっさり言われ、二の句がつげない璃慧。
 もともと練習不足は自覚しているので、言われると、やらざるを得ない。
 部長が去ったあとでパート練習をしながら。

璃慧
「やんなきゃいけないこといっぱいあるのに……」
「あはは(苦笑)」
「……いろいろ、仕事を抱えすぎなんじゃない?」
璃慧
「やりたくてやってるんじゃないよお(涙) あ゛ー、もうっ! 最近勉強もやばくなってるしさあ、レポートもあるでしょ。文芸の〆きりもすぐだし、知り合いに押し付けられた小説は、一向に進んでないし……。 HPも更新とまってるしなあ……。サークルの方も……(延々と続く)」
「……テストだって言って、少し休めばいいじゃない」
「まぁ僕もいろいろあるしなぁ(汗)」
璃慧
「はああ。だから公演のらないっていったのにいっ。 2ヶ月でふけるようになるわけないじゃん…… もう蹴れないところまできちゃってるしなあ……。 ……蹴れるとしたら、テストかあ(嘆息)」
「……蹴るつもり?」
璃慧
「だってえ、たとえどうなっても直接的には人に迷惑かけないのって、それだけなんだもん(涙) まあ、平均ぐらいは取れるだろうし……」
「でもさあ……」
璃慧
「あ、でも、親に怒られるなあ……。そして、ネット禁止になって、みんなに迷惑をかける、かも…………。 はああっ。いつになったら暇ができるんだよお。 創作が進まないじゃないか〜っ!! 中学の時は暇だったのにな〜(とーいめ)」
「(あっさり) 忙しくなくなったら、人生終わり」
璃慧
「もう終わってもいいよ…………」
「ひとつ終わっても、またすぐ次がくるもんね……」
璃慧
「はぁ……」
「とりあえずテスト勉強」
璃慧
「言うなっ!  はああ、もう70点取れれば良いよ……」

璃慧に平穏な日はとうぶん訪れそうにない。

時系列と場所

1999年10月、吹利学校高等部の音楽室でのできごと。

解説

オーケストラ部の何気ない日常。
 テスト前であろうが、忙しい部員がいようが、練習はすべてに勝る(笑)。



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