- 布施美都(ふせ・みと)
- 過去の記録、記憶の無い少女。
- 過去の記録が無いため、履歴書の作成に苦労する。
- 紫苑(しおん)
- 金属生命体。
- 紫の猫、美形の男性、女性と、多様な姿に変じる事が可能。
- 紫苑
- 「にゃー」
- 美都
- 「あ、紫苑ちゃん、待ってたよ(にこ)」
窓から猫の姿で帰ってきた紫苑を、笑顔で迎える美都。
床には、白紙の履歴書と顔写真が置いてある。
- 紫苑
- 「わざわざ“来い”とは、どうしたのですか?」
- 美都
- 「えっとね。竜胆さんのところでバイト雇ってもらえるかもしれないんだ」
- 紫苑
- 「竜胆さん……ですか、よかったですね」
- 美都
- 「でも、履歴書は必要なんだって。だから、作るの手伝って欲しいの」
- 紫苑
- 「なるほど、そういう事ですか。で、明日面接なのですね?」
- 美都
- 「うん、だから、急がないと」
- 紫苑
- 「わかりました。始めましょう」
そういうと、二人して部屋に寝転がり、履歴書を書き始める。
- 美都
- 「名前……ふせ……みとっと……。性別、おんな。……生年月日?」
- 紫苑
- 「誕生日の事ですよ」
- 美都
- 「んー……覚えてないよ」
- 紫苑
- 「日は、適当で良いでしょう。問題は年齢ですね」
- 美都
- 「年齢かぁ……いくつなのかも覚えてない」
- 紫苑
- 「アルバイトをするのだから、学生である方が良いでしょう」
- 美都
- 「そっか。じゃあ……20歳にしとこうっと」
- 紫苑
- 「身分証明は、学生証が適当ですね。偽造するなら元があった方が良いですが……」
- 美都
- 「ユラさんに借りよう。じゃあ、誕生日もユラさんの借りちゃおっと……6月18日……と」
- 紫苑
- 「良く覚えていましたね」
- 美都
- 「うん」
- 美都
- 「次は……学歴、職歴?」
- 紫苑
- 「学生なら、職歴は必要ないですね。学歴です……」
- 美都
- 「とおくからこっちに出てきた方がばれにくいかな?」
- 紫苑
- 「そうですね。美都は言語が標準語ですから、東京の学校を選びましょう」
- 美都
- 「ん……じゃあ……適当に……っと」
- 紫苑
- 「ふむ、今の大学はユラさんの学生証を拝借するなら、同じ所が良いでしょう」
- 美都
- 「じゃあ、吹利大学……と。人が多い学部……文学部で良いや」
- 美都
- 「資格、免許……“なし”じゃ駄目かなぁ?」
- 紫苑
- 「大丈夫だと思いますよ」
- 美都
- 「じゃあ、無しで良いや。次は……趣味?」
- 紫苑
- 「これも、好きに斯いて良い筈です」
- 美都
- 「紫苑ちゃんとお昼寝……とかはまずいよね……」
- 紫苑
- 「そ……それはまずいでしょう」
- 美都
- 「んー……料理!」
- 紫苑
- 「(下手の横好きですか……)」
- 美都
- 「あ、紫苑ちゃん、今“下手の横好き”とか思ったでしょう……(じと)」
- 紫苑
- 「良く分かりましたね」
- 美都
- 「いいもん。別に。一個ずつ覚えれば良いんだもん」
若干幼児退行しながら、書き込む。
再び見渡してみる。これで大体埋まった。
- 美都
- 「これで良いかな?」
- 紫苑
- 「ええ、大丈夫でしょう」
- 美都
- 「できたぁ……」
- 紫苑
- 「お疲れ様です」
こうして履歴書は出来上がった。
明日の面接さえパスすれば、レストラン『マリカ』でのバイトが始まるのだ。
バイトをするため、履歴書を作る美都。自分の過去が分からない美都は、仕方なく(?)でっち上げる事に……。
1999年8月頃。「バイト探し」の日の夜。
連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部