エピソード1040『オフラインで会いましょう』


目次


エピソード1040『オフラインで会いましょう』

登場人物

水瀬璃慧(みなせ・あきえ)
創作やインターネットが趣味の高校生。HNやPNは
瀬川輝(せがわ・ひかる)。HIKARUのニックでIRCによく来る。
狭淵美樹(さぶち・みき)
活字中毒の医学生。筆名神酒副知で小説を書き、
IRCではkamusakeのnickを使っている。
白月悠(しらつき・はるか)
璃慧のクラスメートで、同じくIRCユーザー。
IRCでのnickはsuika。人見知りするが璃慧とは仲が良く、
いっしょにいることが多い。
前野浩(まえの・ひろし)
MIBなフリーター
執事ではない。
蒼月かける(あおつき・かける)
ねこみみふぇちな光使い。
片山慎也(かたやま・しんや)
遊び人大学生で緑の彼氏。サイコダイバー
水島翡翠(みずしま・ひすい)
水島緑の裏人格。凶暴でがさつで好色。お酒で稼働するらしい
天方狼介(あまかた・ろうすけ)
意志具象能力を使う大学生。最近異能を使う姿を見せていない。

IRCにて

深夜、IRCのとあるチャンネルにて。
 01:42 >HIKARU< あ、そーだ
 01:42 <kamusake> はいはい
 01:42 >HIKARU< かむにゃって、しょうせつかくんだよね
 01:42 <kamusake> んみ
 01:43 >HIKARU< 見たいっ
 01:43 <kamusake> あははは(^^;
 01:44 <kamusake> 送りましょうか(^^;
 01:44 <kamusake> でかいのが一本ありますが(^^;
 01:44 >HIKARU< やたっ(笑)
 01:45 <kamusake> 輝さんのも見せて下さいね(笑)
 01:45 >HIKARU< う〜ん、それはいいんだけどお、
 01:45 >HIKARU< ほとんど電子化してなかったりする(汗)
 01:45 >HIKARU< 授業中の内職だからノートに書いてるの(核爆)>創作
 01:46 <kamusake> (^^;
 01:46 <kamusake> んー。
 しばし思考中。

璃慧
(う−ん……。どうしよ〜。確かかむにゃの大学って、うちの学校のそばだったよなあ。オフで会ってもいいかなあ……??信用できそうなひとだし……、会ってみたいよなあ……)

まだまだ思考中。

璃慧
(お母さんさえうまく誤魔化せば……なんとかなるな。部活ってことにしちゃえば……うん、おっけ。お〜し、聞いてみよ!)

01:49 >HIKARU< ねえねえ、かむにゃって、 
 01:49 <kamusake> ほい
 01:49 >HIKARU< 吹利駅の方まで来てるんだよねえ?
 01:49 <kamusake> んみ。そーですが?
 01:49 >HIKARU< えっとお、……手渡しでもいい?>創作
 01:50 <kamusake> ばっちりおっけーです(笑)
 01:50 >HIKARU< どうしよっか?  暇な日とかあります??
 01:50 <kamusake> んーと。
 01:51 <kamusake> 今日とか(爆)
 01:51 >HIKARU< ……別にいいですけど(苦笑) あ、でも11時以降ね。
 01:51 >HIKARU< 眠いもんっ。
 01:51 <kamusake> (^^;
 01:52 >HIKARU< で、場所とかどうします? 近鉄吹利駅周辺かなあ
 01:52 >HIKARU< (ちなみに、土地勘全くないです(爆))
 01:52 <kamusake> んー。
 01:52 <kamusake> ベーカリー楠って知ってます?
 01:53 >HIKARU< まったく(きっぱり)
 01:53 <kamusake> んみ。近鉄吹利駅の西口出たところから一本入ったところにあるパン屋 (兼 喫茶店?)なのですが
 01:55 >HIKARU< ふにい。行けばわかるだろお(いい加減) 何時にします?
 01:55 <kamusake> 3時くらいでいいのでは?
 01:55 >HIKARU< 了解。今日の3時に、その、ベーカリー楠ってとこですね。
 01:55 >HIKARU< あ、それとお、特徴教えて>かむにゃの
 01:56 >HIKARU< わたしはねえ、
 01:56 >HIKARU< 髪は黒でかなり長い。多分おろしているかな。
 01:56 >HIKARU< 背は低めで、少々やせてる。
 01:56 >HIKARU< 水色のワンピースに白のサンダルで行く……はず
 01:56 >HIKARU< いじょー
 01:57 <kamusake> ふみ。
 01:58 <kamusake> こちらは、青いジーンズに、長袖ワイシャツ。で、髪は……この間散髪に行ったので、かなり短めのスポーツ刈りです。
 01:57 <kamusake> 身長は176。ひょろりと痩せております(^^;
 01:58 <kamusake> んで、眼鏡はかけてませんね(笑)
 01:58 <kamusake> あと、たぶん、一番奥の椅子でノーパソいぢっていると
 思うので、すぐに判ると思います(^^;
 01:59 <kamusake> あ、もし判らなかったら、そこの店長も知り合いですので、「狭淵美樹」(あ、本名です(^^;)は誰かと尋ねて下さればだいじょぶですし。
 01:59 >HIKARU< 了解でし。
 01:59 >HIKARU< 話しがまとまったところで
 02:00 >HIKARU< そろそろ落ちますね
 02:00 >HIKARU< おやすみなさいでし
 02:00 <kamusake> ほーい
 02:01 <kamusake> おつかれさまー

お店の中は……

翌日、昼下がりのベーカリーにて、待ち合わせの時間。

SE
からんころん

鈴の音と共に、二人の少女が入っていく。
 どこか頼りなさげな様子の璃慧と悠。

璃慧
(きょろきょろ)

店内を見回して、かむにゃを探す。
 日曜日であるせいか、昼時でもないのに結構人がいる。

前野
「おや…(新しいお客さんだ…)」(じろ)
かける
(はむはむはむ)
かける
「すみません。カフェオレ牛乳抜きおかわり〜」
慎也
「おっ……」
美樹
(かたかたかた………ずずっ)

それぞれの客が、それぞれの時間の中にいた。
 でも、鈴の音に誘われて、そのほとんどが扉の方を振り返る。
 集中する視線。人見知りする璃慧や悠をおびえさせるには、十分だった。

店長
「いらっしゃい」

明るく声をかけてくる店長。
 我に返った璃慧は、軽く会釈を返して扉口から中へと入っていく。
 悠はその後ろにぴったりつくようにいた。

翡翠
「暇だな……(くび)」(慎也にしなだれかかりまくり)
慎也
「……おい、翡翠……(苦笑)」
翡翠
「な〜んか、雰囲気が緑そっくりなのが来たんだが……」
慎也
「……昔の緑を思い出すねえ……(^^;」
かける
「前野君……俺達なんか変な目で見られてないか(小声)」
前野
「まぁ、仕方なかろう。こんなナリだからな」

談笑している4人の先客におびえつつ、店内を見回していると。

美樹
「ほへ?」(気が付いて視線をあげる)

ようやく騒ぎに気づいたのか、奥の席に座っていた青年が顔を上げる。
 その視線は、ちょうど中を不安げに見回していた璃慧のそれと重なる。

璃慧
(あの人……かな?)

奥の方へ歩いていく璃慧。悠はその服の裾を掴んでいた。
 はなれないようにぴったりと、あとをついていく。

はじめまして

テーブルの方に近づくと。

美樹
「あ、もしかして、瀬川輝さんですか?」
璃慧
「はい。神酒さん?」
美樹
「あ、初めましてですね(笑) 神酒です」
璃慧
「はじめまして。瀬川……あ、本名は、水瀬です」
美樹
「あ、そーいえばそうでしたね(にこにこ)」

微笑みかけたまま、パソコンの蓋を閉じる。
 一方外野は。

かける
「むー。美樹さんも隅におけんのぅ」
慎也
「いいな〜、いいな〜(笑)」
翡翠
「なにがいいんだ?(ぎらり)」
慎也
「あ゛、翡翠ちゃん、なんか言った?俺(^^;;;」
前野
「聞こえた所では、どうやらネットの知り合いのようだな」
かける
「むぅ。いわゆるオフ会という奴だな」
かける
「もしくはオフデート」
翡翠
「なんか見とれてたろ(ぎゅー)」(ほっぺたつかむ)
慎也
「ふぐぅ、いひゃいっれ(うぐぅ、いたいって)」
翡翠
「おまえはオレの所有物なんだからな」(はなす)
かける
「なかがいいのぅ」
前野
「何をやっているのやら(苦笑)」
かける
「……むちゃくちゃ言われているのぅ……不憫だ(^^;」
慎也
「もしもし〜?翡翠さん〜、それはなんか違うんじゃないですか〜?(w」

好き勝手言い合ってる。
 ありふれた日常を満喫している人たち。
 そのそばには、非日常を経験してるものたちもいる。

美樹
「えと、そちらは?(悠のほうを一瞥して)」
璃慧
「えっと、親友の翠霞です。付き合ってもらったの。
璃慧
IRCで、何度かあってると思いますけど…………」
美樹
「あー、なるほど。suikaさんでしたか(にこにこ)」
「……はじめまして……」
美樹
「あ、まぁ、てきとーにそこの空いている席にでもどーぞ(にこにこ)」

悠のほうをちらっと見てからすわる璃慧。
 悠はおずおずとその隣に座る。
 近くのテーブルでは。

翡翠
「……はぁ、暇だな」
慎也
「……まあ、確かにヒマだな(笑)」
かける
「暇だ〜」
前野
「暇つぶしに暴れないでくださいよ」
翡翠
「疲れるからしないよ(苦笑)」

滅茶苦茶言ってる(苦笑)
 そんなこと意にもかいせず、がさがさと、机の下でなにやらしている美樹。
 璃慧のほうも鞄の中からなにやら取り出す。
 顔を上げたのを見計らって。

璃慧
「あ、それで、これ……」

3,4冊のノートと5冊の同人誌を袋から出して手渡す。

美樹
「あ、どうもありがとうございます。こちらは………っと」

これまたどさっと。9冊ほどのコピー誌と、2冊のオフセット誌。
 さぞ、重かっただろうに……。
 美樹の異常にひょろっとした体躯を見て、ふと思う。

璃慧
「ありがとうですう(うれしそうに、めくってみてる)」
美樹
(ぱらぱら………ふむ………ぱらり………)

人見知りの少女たち

二人とも夢中になって見ている。
 一人ぼんやりとあらぬほうを見ている悠を見かねたのか、
 外野から突っ込み。

前野
「(苦笑) ……美樹さん。暑い中来たんでしょうから、なにか飲み物を頼んであげたらどうです?(笑)」
慎也
「……美樹さん……(^^;」
美樹
「おぉ、そーですね(前野氏に軽く一礼)。 飲み物はなにがいいです?」
前野
「ここはパンも美味しいんで、食べてみると良いですよ(微笑)」
かける
「ししゃもパンとか人気がありますよ(違う意味で)」

話し掛けてきた人を不思議そうに見る璃慧。
 知り合い、なのだろうか。
 一体どういう関係なのか気になったが、とりあえず注文する。

璃慧
「えっと…………オレンジジュースかなあ。はる……翠霞は?」

本名を言いかけて、慌てて訂正する。
 美樹の方は、璃慧の不思議そうな顔に気づいたのか、

美樹
「あー。この黒服の人は、前野さんという人です。さる大きなお屋敷の執事さんなのですよ(にこにこ)」

説明してくれる。

美樹
「んで、こちらが、蒼月さん。占い師の方です」
璃慧
「はじめまして。水瀬 璃慧です」
かける
「はじめまして(ぺこり)」
前野
「はじめまして、前野浩です。 執事ではありませんけどね(笑)」

挨拶なんかしていると。
 からんころん、と音がなって、なにやら青年が入ってくる。
 すくなくとも、見た目は普通の大学生のようだった。

狼介
「ちわっす」
かける
「よっ」
慎也
「ちゃわ」
狼介
「店長、アイスレモンティーを」(汗だく)
翡翠
「うい〜」
美樹
「んで、向こうにいらっしゃるのが、片山君と水島さん。 で、今入っていらしたのが天方さんです。 みなさん、この店の常連の方々です(にこにこ)」

5、6人であっても、人見知りには少々つらい環境。
 しかも、かなり個性的で……。
 どうしていいのか、固まってしまっている二人。
 それを感じ取ったとは思えないが、とりあえず紹介も終えたので、
 常連客の方からテーブルの方へと向き直って、

美樹
「あ、翠霞さんもオレンジジュースでよかったですか?」

うなずく悠。それを確認して、

美樹
「あ、なら、店長、オレンジジュースを二つ、お願いします。あと、わたしのコーヒーのお代わりも」

美樹が声をかける。
 観楠は、空いている席に座って汗をぬぐっている狼介にレモンティーとお絞りを持っていっていた。

観楠(店長)
「はい、アイスレモンティ」(お絞りも置く)
狼介
「あ、すみません……」

そのあと。

観楠(店長)
「おまたせしました。オレンジジュース2つです」
観楠(店長)
(コーヒー継ぎ足す)
美樹
「まー、変わった方々も多いですが、みなさん、よい方々ばかりですよ(にこにこ)」

といっても、人見知りはそう簡単には直らない。
 璃慧は、周りから逃げるように受け取った同人誌の方に見入った。
 美樹の方も、ふたたび同人誌に視線を落とす。

同人誌の感想は?

美樹
「ふむ。なかなかきっちりとした作りになってますね……」

同人誌を見ての感想。
 正直言って不安だった。中学時代に作ったものである。
 誰も経験者はいなかったのだ。

璃慧
「ど〜も(にっこり)」

笑って返す。
 何かを作るものとして、認めてもらえることほど嬉しいことはない。
 常連客の方も。よほど暇なのか、椅子から身を乗り出して覗き込んできた。

かける
「……字ばっかり……」
慎也
「あ〜、創作系の同人誌だねえ(笑)」
翡翠
「うーん」

前野と紹介されていた青年は、苦笑してこちらを眺めていた。
 例によって、悠があらぬかたを見てぼーっとしていたせいだろう。
 ……、こうしてみていると、いい人たちなのかもしれない。

璃慧
(かなり変わってるのは、お互い様だしね)

苦笑混じりに思う。
 ようやく、彼女は変わった集団を受け入れつつあった。

外野の感想

ようやく自分たちの席に向き直った常連客たち。
 すっかり、璃慧の中で「変な人たち」とされているのだが……。
 璃慧たちの耳には入らないが、何かいっていた。

翡翠
「んーむ(美人かも知れない……)」
かける
「負けたと思った?」
翡翠
「ん?」
かける
「いや、なんでも(^^;」
翡翠
「かーけーるー(ぐりぐり)」
かける
「うぐぅ」
慎也
「どった?翡翠?(^^;」

何かやっていることに気づいて、翡翠のほうに向き直る。

翡翠
「いあ、なんでもない」
かける
「うぐぅ」

手をはなして返答する翡翠。なにやら奇妙な声を発するかける。
 それだけで事態を察したのか、

慎也
「ああ、かけるんがまたなんか言ったのか……(笑)」

どうやらいつものことらしい。

翠霞の絵

いまだ同人誌に目を落としている美樹。
 璃慧はそんな美樹さんを不安と期待まじりに見ている。

美樹
「あ、表紙絵は翠霞さんなんですね。なるほど」

どうやら、奥付をみたようだった。
 絵を書ける人がいなかったので、璃慧が悠に頼み込んだのだった。

「…………」

意識がすっかりあさってのほうに飛んでしまっているようだった。
 璃慧は苦笑まじりに悠をつつく。

「(正気にかえって)……なに?」
璃慧
「……(汗)」

あきれかえる璃慧。美樹の方は気にもとめず、

美樹
「ふむ。なかなか柔らかい感じの絵ですねぇ」

ようやく、テーブルに目を落とし、
 自分の絵が見られているらしきことに気づいて、

「え……私の絵?(真っ赤)」

赤面してうつむく悠。

璃慧
(…………もう、あいかわらずだなあ……)
美樹
「いや、うちのサークルの方の同人誌だと、絵を描ける人間が少なくて(ぽりぽり) こう、ちゃんと絵が描ける人は羨ましいですねぇ(にこにこ)」
「……ありがとうございます……」
美樹
「あ、わたしの方の小説、もう一部持ってくればよかったですね………よろしければ、次にでも持ってきますけど」

しばらく談笑は続いた。

また今度

時計を見ると、もう4時も半頃になっていて……

「そろそろ……帰らない?」

璃慧の方になにやらささやく悠。
 とりあえず用事も終わったし、反対する理由はない。

璃慧
「おっけ。…………ごめんね」(ごめん……無理矢理つれてきちゃって……)

同じく小声で悠に返した後、美樹のほうに向き直る。

璃慧
「あの、そろそろ帰りますね。親がうるさいから……。かむにゃはどうします?」
美樹
「あ、それではどうも。わたしのほうはこのままもう少しここにいますんで」

席を立つ二人。

(ぺこり)
璃慧
「それじゃ、また」
美樹
「それでは。気をつけてくださいね」

からんころん、と。
 鈴の音と共に二人は店を出て、家路へ。
 外は、暑かった。
 まだ、蝉が鳴いていたある夏の午後の記憶……

時系列

1999年9月はじめのとある日曜日。

解説

まだ夏の暑さが残るとある日曜日の午後、璃慧は悠と共にベーカリーを訪れた。
 璃慧と悠の初登場時のエピソードです。
 これが、何かの始まりだった……のかもしれない……。



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