エピソード1044『天寿』


目次


エピソード1044『天寿』

登場人物

白月悠(しらつき・はるか)
 
内向的な高校一年生。
最近の生活は9割までPCに依存(笑)
白月里花(しらつき・さとか)
 
悠の中一の妹。
テレビゲームと機械いじりを好む。
母親
 
二人の母親。
一般常識は備えた人だがどこかずれているところあり。
父親
 
二人の父親。DTMを生業としている。
しかし職種のわりにPC操作をなにも知らない(苦笑)

突然のハプニング

とある日の夕方、白月家にて。

SE
ばきっ☆
里花
「……へ?」
「なんの、音?」

もくもくもくもく…………
 黒煙が上がる。

悠&里花
(あぜーん)

……時間は、少し前に遡る。

平穏な時間

里花
「ねーお姉ちゃん、スーパーゲームボーイ知らない?」
「……いまさら、あんなもの使うの?」
里花
「だって、友達からおもしろいソフト、借りてきたんだもんっ♪」

カラフルな、小さめの箱をちらつかせる。

(ため息)「はいはい」
里花
「どこ?」
「そこらへんにない?」

『そこらへん』とは、テレビの周辺。
 スーパーファミコンやプレイステーション、ゲームソフトやビデオテープの類が散乱しているあたりのこと……なのだが。
 置いてあったはずの硝子テーブルが見当たらないのは……ソフトに埋没しているせいだろう。

里花
「んー、あたしもそう思ったんだけど、見つかんなくて」
「だって昨日、そこに置いてたじゃない?」
里花
「ちゃんと見たよお……後で探そっと」

……時間の消費は気に食わないらしくて(苦笑)
 里花はプレイステーションを起動させた。

里花
「お姉ちゃん、後でパソコン替わってね」

釘をさすことも忘れない(苦笑)

「……メールのお返事書いたら、替わるよ」
里花
「はーい」

言質を取った里花はご機嫌で、ゲームを始めた。

立ち上る黒煙

それから、三十分ほどして。

「(だいたい書き終わり、かな……)」

もう替われるよ、と声をかけようとした次の瞬間、テレビの方から。

SE
ばきっ☆
 
里花
「……へ?」
「なんの、音?」

もくもくもくもく…………
 黒煙が上がる。

悠&里花
(あぜーん)
 
里花
「あ、画面っ……」

その声に、つと画面を見ると。
 画面いっぱいに広がっていたはずの画像が、フェードアウトしていくときのように、どんどん小さくなっていくのが見て取れた。

(思考停止中)

音楽だけが、変わらず流れつづけている。

里花
「あ、えっと、あ、う」

音量も変わらずに。

「あ……っと、お母さんっ!」
母親
(台所から)「なに?」
「テレビから、煙、出てる……(汗)」

がっしゃあああんと。
 手に持っていた金属のボウルを取り落とす、お母さん。

母親
「かかか、火事になっちゃうじゃないっ(汗)ああ里花、水なんかかけるんじゃないわよっ(汗)」

慌ててテレビに駆け寄って、裏手の窓を明けて。
 手近なレコードを手に、必死にテレビを扇ぐ。

母親
「里花、お父さん呼んで、悠はパソコン消して!」

…………家族四人がそろったリビングで、煙は五分後に消えた。

天寿

まだ、樹脂の焦げる異様な匂いは漂っていて。

母親
「あとは、家中の窓、網戸にして、換気扇回して、と……」

風のとおり道を、家中にはりめぐらせる。

父親
「また、すごい匂いだな、こりゃ」

感慨深げに、電源を切ったテレビを眺めやる、お父さん。

里花
「でも、ブレーカー飛ばなかったってことは、ショートしたんじゃないよね?」
父親
「抵抗が焼き切れたんだろうな」
母親
「無理もないわよ。一日24時間のうち、23時間は働いていたようなものだし」
父親
「え、そんなに使ってたか?」
母親
「ええだって、わたしたちが出かけている間は、ずっとあなたが意味もなくつけっぱなしにしてるし、夜も遅くまでついてるし」
里花
「あたしが起きたときに、ゲームやってること、多いもんね……(汗)」
「それで、ゲームを止めたらそのかわりに朝のニュースがつくしね(苦笑)」

みんなの視線がお父さんに集中する。

父親
「ははは……まぁ、86年型だしな、古いから……」
母親
「天寿を全うした、とは言えるわね」
里花
「ヘー、あたしと同い年だったんだぁ☆」
父親
「おー、そういうことだ」

味方を得たり、とでも言うかのように、里花の頭をくしゃくしゃする。

母親
「まあ、どうせそろそろ引っ越すつもりだったし」
「朝も図面書きながら、テレビが邪魔って騒いでたね、そう言えば(苦笑)」
母親
「そうそう、神様が、もっと小さなテレビにしなさいって仰ってるのよ、きっと」

ちなみにこの後、里花によって前の家で使っていた古いテレビ(82年型)が新しくセットされたが、その際いろいろと騒ぎがあったのは、お約束(苦笑)

時系列

2000年の1月7日。
 この騒ぎで七草粥どころではなくなってしまった(苦笑)

解説

なぜか古いものが多くある白月家。
 そのなかのひとつが、今日、天寿を全うしました……



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