エピソード1046『ふぁしすと?』


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エピソード1046『ふぁしすと?』

登場人物

平田阿戸(ひらた・あど)
  : 駄目な吸血鬼ハンター。ミリタリーマニアで妙なこだわりを持つ。
湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
  : ベーカリー楠の店長。むかしはサバゲでならした。 : 最近、NHKで「映像の世紀」を見た。
本宮和久(もとみや・かずひさ)
  : もとベーカリーバイトの大学生。数少ない常識人の一人。

本編

昼時の混雑も終り、学校帰りの学生が立ち寄るにはまだ早い時間のベーカリー楠。

SE
からんからん

黒のブッシュハットに黒いダブルのコートを着込んだ男が入ってくる。

観楠
「いらっしゃい」
平田
(おや? パン屋だと思ったが喫茶店だったのか?)

店内を見回し、いずれにせよパンも売っているだろうと判断してカウンターへ進む。しかし……怪しい。

観楠
(どこかで見たような………テレビで……………まさか!?)

何故か動揺する店長。

平田
「アンパン3つとクリームパン3つ。ああ、このプリソパンとかいうの1つ。………何か?」
観楠
「………いえ。(まさか、昨日NHKで見たあれでは!?)」
平田
「持って帰るので包んでください(……?)」
観楠
「………(間違いない! 記章こそないが、この黒いコートは!!)」
平田
(聞こえてないのだろうか?)

店長、視線に気付く。
 平田本人にそんなつもりがなくても、深めに被った帽子はは表情を隠してしまい、無言の威圧のようにも取れる。店長の脳裏に、『クリスタルナハト(水晶の夜)』、『アウシュビッツ』といった、不吉極まる単語が浮かんでは消える。

観楠
(反射的に)「ハ、ハイル!」(ビシッ)

静まり返る店内。
 ベーカリー楠店長楠観氏は後にこう述懐している。「ああしないとゲットーに入れられると思った。」と。

平田
「……………(思考中)…………………………ハイル」

とりあえず返礼。

平田
「………(冗談のわかるおもしろいパン屋だ。)」

そして明らかに誤解したまま去っていく平田。
 しばらくして。

SE
からんからん
本宮
「おはようございまーす」
観楠
「も、本宮君、今、SSが! SSがうちの店に!!」
本宮
「はあ?」

取り乱す店長を前に茫然とするもとみー。
 その後、気を良くした平田はベーカリーでの挨拶を「ハイル」と(勝手に)設定したのである。

時系列と舞台

1999年11月中頃のベーカリー楠。

解説

駄目ハンター登場のエピソード。
 既に普段着となっているSSのコート。本人は意識しなくなっていますが、知識のある人から見れば、嫌なものかもしれません。



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