エピソード1048『無印良品』


目次


エピソード1048『無印良品』

登場人物

西夜一輝(にしよる・かずき)
紅雀院大学総合歴史学科助手。
狭淵麻樹(さぶち・まき)
吹利県立吹利中央病院研修医。

時系列

2000年2月13日。バレンタイン前日の日曜日。

本文

小春日、というものだろう。
 窓からの光は室温よりも柔らかく。
 紙の上を鉛筆が擦る音だけがある。
 麻樹は眼を閉じる。

西夜
「おや、もうこんな時間ですね」

その言葉に麻樹は瞼を開く。
 いつの間にか陽は落ちている。

麻樹
「あぁ。もう夜だな」

寄りかかっていた柱から立ち上がる。わずかに身体が冷えている。

西夜
「それではそろそろ失礼します」

と、用具一式を片づけはじめる。

麻樹
「あぁ、そうだ」

部屋の隅にある、ワンドアの冷蔵庫から無地の段ボール箱を取り出す。割とでかい。

麻樹
「一応、明日はそういう日らしいからな。チョコレートだ」
西夜
「あ、これはどうもわざわざ」

片づけ終わった荷物を持ち。西夜も立ち上がり、その無造作な箱を受け取る。二人とも立ち上がってみると、身長はほとんど変わらない。

麻樹
「そういう日らしいからな」

肩をすくめる。

西夜
「そういう日らしいですね」

くすりと微笑んでみせる。

西夜
「それではまた。失礼します。チョコレートありがとうございました」
麻樹
「あぁ。また」

いつもの様に下まで見送ってから、また自室に戻り。
 さっきまで寄りかかっていた柱に同じポーズで寄りかかり。
 ひとつ深くため息をつき。
 瞼を閉じる。
                         (おわり)

解説

バレンタインデー前日。
 チョコレートを受け渡しする麻樹と西夜。



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