- 西夜一輝(にしよる・かずき)
- 毒舌家の紅雀院大学総合歴史学科助手。
- 最近天使のせいで影が薄い。
- 狭淵麻樹(さぶち・まき)
- 男らしい狭淵流鍼灸術伝承者。(おい)
狭淵美樹(さぶち・みき)から双子の妹の狭淵麻樹(さぶち・まき)が越中富山藩の藩医関係の史料を保管していると聞いて、麻樹に会いに行く西夜であった。
非社交的な西夜はこういった仕事は苦手。ちょっと緊張している。
- 西夜
- 「ここに未整理の文書があると聞きまして。よろしかったら補修整理させていただけませんか?」(折り詰めを差し出す)
- 麻樹
- 「ん。判った(受け取る) ん、兄貴の紹介か。どの史料がいる?」
あっさり中に通される。少々拍子抜けしたらしい。とにかく史料を見てみる。
- 西夜
- 「おや、ずいぶんと丁寧に保管されていますね。御性格ですかね?」
- 麻樹
- 「ん。父親からの預かり物だからな。まだ」
- 西夜
- 「預かり物ですか。困りましたね。では大学で預かる訳にもいきませんね」
- 麻樹
- 「んー、それもそうだな」
- 西夜
- 「ふむ。これはずいぶんと古い物ですね。コピーやカメラの強い光を当てると変色するかも知れない」
- 麻樹
- 「ふむ。そうなのか」
- 西夜
- 「ええ。配慮の足りない『知識人』どもがその手のミスを繰り返していましてね」
- 麻樹
- 「ふむ。そうかもしれんな。………すると筆写か?」
- 西夜
- 「ええ。全部手作業の筆写になります」
- 麻樹
- 「なるほど。時間がかかりそうだ」
- 西夜
- 「まことに申し訳ありませんが、そういうことでたびたびおじゃますることになるかも知れません」
- 麻樹
- 「ふむ。あぁ、仕事で居ないことの方が多いから。次に来る時を連絡してくれればいい」
なにげに携帯番号まで教えてもらう西夜。他人事ながら、初対面の人間に、ここまで教えていいものだろうかと心配になる。
- 西夜
- 「ご親切にありがとうございます。今度お礼に食事でも、どうですか? まあ、たいしたものは出せませんが」
- 麻樹
- 「ん、暇があるときにな」
- 西夜
- 「時間は合わせますよ」(苦笑)
社交的なふりをしつつも、興味は手元の史料の方へ。
そのまま挨拶もそこそこに作業にはいる。
- 西夜
- (かりかりかりかりかりかりかりかり)
普段は落ち着かない駄目人間が、こういうときだけ集中力を発揮する。
- 西夜
- (ん?)
気が付けば麻樹は邪魔しないように部屋の隅に腰掛けてじーっとしている。
- 西夜
- (いやよく見ると、寝ているのかな?)
どうもそのようだ。
- 西夜
- (休みの日じゃないと、病院勤務で連日午前様という話だったしな。休みの日におじゃまして悪かったかな?)
そして数時間経過。
- 西夜
- 「おや、もうこんな時間か……あんまり遅くまでいても失礼ですし、今日はこれで失礼します」
- 麻樹
- 「そうか。お疲れさま」
- 西夜
- (帰り支度をしながら)「正直、親切な方で助かりましたよ。文書をお持ちの方は、なかなか出し渋って見せていただけない場合もおおいですし」
- 麻樹
- 「あぁ、兄貴の紹介だからな」
- 西夜
- 「まあ、もったいぶるだけぶって、たいしたことのない場合が大多数ですけどね。そういう場合は」
- 麻樹
- 「(肩をすくめて) そうかもな」
- 西夜
- 「まあ、学術研究とテレビのバラエティー番組の区別の付かない人も多くて困りますよ」
- 麻樹
- 「(わずかに唇を歪めて) …………ふむ」
- 西夜
- 「では今日はこれで。活字になったら進呈しますよ」
- 麻樹
- 「あぁ、では」
(おわり)
2000年1月。受験騒動の合間を縫ってのある日。
狭間06ラブラブ補完計画から話題が出たものの、全く色気のない二人であった。
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