エピソード1097『似合う似合わないの問題でもなし』


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エピソード1097『似合う似合わないの問題でもなし』

登場人物

小松訪雪
松蔭堂の店主。ロングの茶髪。
前野みかん
人狼の少女。よく松蔭堂に遊びに来る。
前野浩
無道邸雑用係。みかんの兄代わり。
譲羽
少女人形に宿る木霊。松蔭堂によく遊びにくる。

本文

某日、松陰堂。
 春休みのまだ初め。

SE
からから
前野
「こんにちは」
みかん
「こんにちはっ」
訪雪
「(奥から) ……おや、いらっしゃい」

沈黙。
 
 まだ沈黙。
 
 まだまだ沈黙。

訪雪
「(苦笑) そんなに似合わんかね」
前野
「いやその、似合う似合わない、というわけでは……(汗)」

つまり、髪の毛である。
 茶髪のロングだった筈の髪が、金髪刈り上げ、と化している。
 似合っているかどうかは、判然としない。
 というか……似合っているとしても、判断がそこまで行く前に急ブレーキを踏んで立ち止まってしまう、というか何というか(苦笑)

みかん
「……おおやさん、本物?(おそるおそる)」

返事の代わりに、訪雪は頭に手をやり、すぽりと抜き取る。

前野
「……かつらですか(何となく安堵)」
訪雪
「うむ、一君の友達が置いていったとかで、面白そうだから借りてきたんだが」
前野
「……お茶目な友達ですね(汗)」

一が付けても……同等か、いやそれ以上に珍妙であったに相違ない。

訪雪
「儂としては案外気に入ったんだが……そうか似合わんか、みかんさん(苦笑)」
みかん
「…………」

そこで『うん、似合わないっ』と言いきるには、みかんは優しすぎるのだ。

前野
「ゆずちゃんは、その髪見たんですか?」
訪雪
「ん?(すぽんとかつらを被って) いや、今日はまだ来とらんからね」

かつらと思ってみると確かに、長めの髪を押しこんでいる分、どこか変なのだが……
 と。

SE
とてとて☆
前野
(うわさをすれば……(汗))
譲羽
「ぢいっ(ひょこっ)」
訪雪
「いらっしゃい、ゆずさん。元気にしとるかね?」

……。
 …………。
 ………………。

譲羽
………………(((((((@_@;;;)

目をまん丸に見開いて訪雪を見ながら、譲羽は廊下の端まで後ろ向きに走って逃げて行く。

みかん
「あ(汗)」
前野
「あ、逃げた(^^;;」
訪雪
「…………(汗)」
譲羽
                こそっ   |_・) 

それでも怖いもの見たさ(?)なのか、台所の扉の陰から覗いていたりする。
 しばし、動きが無い。
 そのうち、だんだんと小さな顔が歪んできて。

譲羽
                      |_;)
訪雪
「…………(滝汗)」
前野
「ゆずちゃん、怖くないよ。ほらほら、訪雪さんだってば(汗)」
譲羽
                      |_T)

……違うひとに見えるらしい(爆)

訪雪
「……………………(が〜〜〜ん)」
前野
「ちょっと失礼……(ごそごそ) ……ほら、これでどう?(^^;;」

どこからか取り出した手拭いで、すばやく訪雪さんにほっかむり。

譲羽
                      |_・)
 
訪雪
「…………(汗)」
前野
「…………(汗)」
 
譲羽
                      |_^)

ちょっと安心したらしい。

前野
(苦笑)
訪雪
「……怖がらせてしまったか(痛恨) ……どれ」

すぽっと、ほっかむりと一緒にかつらもはずす。
 譲羽の目が、もう一度まん丸になって。

譲羽
「ぢいっ(おおやさんだあっ)」

とてててて、と走りより、ぽふ、と飛び付く。

譲羽
「ぢいぢいぢいっ(ほんとうの、おおやさんだあっ)」
前野
「……ゆずちゃん、もう大丈夫?(苦笑)」
譲羽
「ぢいっ(こっくり)」
みかん
「……(ほっ)」
訪雪
「……そんなに怖かったかね、ゆずさん?(おそるおそる)」
譲羽
「ぢいっ(思いっきりこっくり)」
訪雪
「……………………」

前野が笑いをかみ殺す。
 みかんが困った顔になる。
 譲羽は、とんと構った様子も無く、訪雪のひざの上でぽふぽふ跳ねている。
 
 なんとも呑気な、春の一日である。

時系列

1999年 3月頃

解説

松蔭堂での一こま。
 まあ、見知った筈の人が眼鏡を外しただけで、わんわん泣く子供もいるということで……



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