その日、 午後八時、 里見鏡介は風見アパートの自室でのんびりと愛機のPowerMacでインターネットを楽しんでいた。それを横から遠野勇那がのぞき込んでいる。
その時、鏡介のPHSがバイブレーション機能で振動し始める。着信を見ると予備校の友人のようだ。
背後から他の連中の「急げよー!」などという声が聞こえる。鏡介は、着ていた長袖のボーダーシャツの上にもう一枚半袖のシャツを着て自室を出る。そこにちょうど隣室の佐古田真一が帰ってくる。
ようやくカラオケボックス『歌町』につくと、既に場は結構盛り上がっていた。総勢15人、結構な人数だが、既に酔って半分眠っているものもチラホラ居る。
どういうわけだか拍手で迎えられ、さっそくジントニックとカラオケのリモコンを手渡される。
鏡介は番号を打ち込み、送信し、ジントニックを片手に他の者の歌を聴いたり近くの者と無駄話をしたり、時折勇那に声をかけたりする。
鏡介の独り言など珍しいことでもないので、気にする者も居ない。
マイクを手渡され、鏡介の顔つきが変わる。
thee michele gun elephant、鏡介の好きなバンドの一つだ。シャウトを交えて歌い終えるとどういうわけだか周りにウケまくっている。
この夜、結局鏡介達は朝まで歌って騒いだ。翌朝喉がガラガラに涸れたのは言うまでもない。
1999年7月。
死人使い、里見鏡介の日常的な遊び方の一幕。