エピソード1400『かるぼなーら2』


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エピソード1400『かるぼなーら2』

登場人物

御剣司(みつるぎ・つかさ)
 
電気を遠隔操作できる能力者。最近、スパゲティを良く食べる。一
人暮らし。

米が無いとき

「……米が無い……」

司の言う“米”とは、炊き上がったご飯の事を言う。
 正確には、米びつにまだ数キロ残っている筈である。

「……別のもの別のもの……」

空になっていた釜をシンクにおいて水を浸し、冷蔵庫を開ける。
 牛乳は常備、卵もある。野菜は既に干からびているが、納豆もある。
 おかずは、一食位なら何とかなりそうであった。しかし……。

「主食が無いなぁ……」

仕方ないので、備え付けのスパゲティを手に取る。
 困った時はスパゲティ。いつもの事だ。
 鍋に水を張り、塩を適当に混ぜて沸騰を待つ。
 待つ時間を利用して、パソコンの電源を入れ、着替えをする。
 最近買い変えたパソコンは軽快に動き、ものの数十秒で立ち上がり、凍る
 動かなくなる事をフリーズ=凍ると言う)事も無い。
 着替えをしながらマウスポインタを目と意志で操作。アイコンの一つ、IRCクライアントソフトを起動する。
 IRCサーバに接続し、自動的にチャンネルに接続されて行く、いつものIRCのチャンネル。
 挨拶を適当に返しつつ、ニックを変える。
 katana > katana_wk
 仕事、作業中等は、このニックにする事にしていた。
 何かと聞いて来る相手に、食事作成中と答える。
 “……もしやスパゲッティだったりして……”

「……ばれてる……」

“そうですよ”
 一方、湯は沸いたようで、ぱらぱらと麺を入れる。しばらくは手が離せない。
 ほぐして湯の中に浸してから、タイマーをセット。6分。
 ここで、パソコンに目を移すと
 “……そうなのか(笑)”
 “……今度は火を通してくださいね”
 と、書き込まれていた。

「……読まれてる……」

以前、自分のカルボナーラ作成をネタにした話を作ったところ、カルボナーラは火を通すものだと教えられた。いや……もちろん知っていたのだが……。
 その後、何かと司の食事事情を心配してくれる人もいる。

「……と、ソース作らなきゃな……。卵……粉チーズ……生クリームが無いな……、牛乳で良いや」

適当な分量を混ぜて、箸でかき回しておく。
 両手がふさがっていてもIRCで会話が出来るのは便利だ。
 しかし、こんなくだらない事に目覚めた能力を使って良いのか……と思う事もある。
 まあ、誰に迷惑を掛けるものでもないので、開き直っているが……。

タイマー
ぴぴぴっ
「あ……できた」

“あ……できた”
 口調と同時にIRCに書き込み、鍋から上げて水を切り、フライパンを熱す。

「いちおう……火……通そう」
SE
ジュアァァァ

茹で上がった麺を軽くあぶり、塩こしょうをしてから先ほど混ぜたソースを入れる。
 その直後に火を止め、手早くかき回す。
 しばらくかき混ぜた後、皿にうつした。

「完成……ちと、火に掛けすぎたかな……」

卵、チーズ、塩こしょうの良い匂いは漂って来ているのだが、卵は完全に固まり、どろりとした半熟ではない。
 口に含んで見れば、その舌触りが明らかに違う。

「やっぱり失敗だなぁ……まあ、食べられない事はない」

もう少し、技術がいるようだ。
 “完成〜”
 “おおー(ぱちぱち)”
 “どうですか?”
 “うーん……ちと失敗……”
 “(^_^;”
 そう言った会話を交わしながら、ずるずると食べる。食べ方も、箸のままで食べているから、スパゲティというよりはヤキソバに近い。

「さて、食事終了。洗い物は……あとにしよう……」

シンクに皿を置き、水を浸す。

「……心配されるのも無理ないかもな……」

そう苦笑しつつ、パソコンの前に座り直す。
 これから、IRCの時間なのだ……。

時系列

2000年初期。

解説

電機を操る電操士、御剣司の日常の1コマ。
 前回の「すぱげってぃ・かるぼなーら」の続編である。



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