某日、瑞鶴近辺。
冬の日が暮れるのは早く、既にあたりはとっぷりと闇の色に染まっている。
細い路地を、とことこと人形娘が歩いている。
と。
真っ白な、ふわふわの壁が、目前にぬっと……
譲羽の頭より、もっと先までふわふわが続いて……いるなあ、と思った時。
それが、くるり、と向きを変える。
真ん丸い黒い目が、こちらを見ている。
目の下には、黒い鼻。
それがぬーーーっと近づいて。
譲羽の額にぶつかる。
……まあ、相手にしたら、匂いをかぐ積りだったかしれないのだが。
……上を見ようとして、結果そっくり返っているものだから(汗)
と……また、鼻先が伸びてきて。
ぷんぷん怒る譲羽を、じーーーっと黒い目が見ていたが。
飽きたのか、諦めたのか、そのままくるりとまた向きを変えて………
静かな、足取りで歩いていった。
白い壁が段々遠くなって……初めて譲羽は、ぽん、と手を打った。
2000年一月中頃
仙犬白雲と、木霊の譲羽の遭遇です。
……一応、魑魅魍魎を食らう筈の仙犬なんですが……
彼の感覚に、譲羽は危険とは映らなかった模様ですな(笑)