エピソード1415『連鎖連想』


目次


エピソード1415『連鎖連想』

登場人物

平塚花澄(ひらつか・かすみ)
書店瑞鶴店員。けっこうぼけ。
平塚英一(ひらつか・えいいち)
書店瑞鶴店長。花澄の兄。それなりにぼけ。

本文

某日、瑞鶴。
 開店前。
 つまりは、まだ人が居ない。

花澄
「………?」

倉庫から、店長が本を運んでくる。一部は棚に入れ、一部は棚の下の引き出しに入れる。
 いつもの……ごくいつもの風景なのだが。

花澄
「……何歌ってんの、お兄ちゃん?」
店長
「あ?」
花澄
「……歌ってなかった?」
店長
「あー……ああ」

何だかよく分らない声を出して、暫しの後。

店長
「……声に出てたか」
花澄
「それはもうしっかりと」
店長
「ふむ…………」

こり、と、こめかみを指でこすって。

店長
「聞かなかったことにしとけ」
花澄
「……………………お兄ちゃん(じとー)」
店長
「言ってもいいけど、お前絶対後で文句言うぞ」
花澄
「言わなかったら、今文句があるんだけど」
店長
「……道理だ」

……そーかい?(汗)

店長
「ダンチョネ節ってあるだろ、水島新司さんの漫画に」
花澄
「……『男どアホウ甲子園』?」
店長
「それそれ」
花澄
「で、それが?」
店長
「昨日から頭の中を巡って離れんのだ」
花澄
「………………」

元々は、「沖の鴎と飛行機乗りは」で始まる曲である。某日、政治結社と大書した車のスピーカーから流れていたところから察するに、どうやら軍歌に属する歌らしいのだが。
 

花澄
「三途の川で、鬼集めて……お兄ちゃんだと野球はしないでしょ?」
店長
「そもそも鬼を集めるのが面倒だ(まじ)」
花澄
「……三途の河原で、いつまでもあぐらかいて座ってそう(ぼそり)」
店長
「……そんなとこだな(あくまでもまじ)」

茫洋と。
 業の深さそのままに。

花澄
「で、なんでそれを言いたくなかったの?」
店長
「いや、俺は良いけど……うつらんか、こういうの?」
花澄
「…………あ”(汗)」

一度巡り出したら、この手の曲は頭の中でエンドレス状態になるもので……

花澄
「……改めて言われると、本当にうつる(憮然)」
店長
「そらみろ」

時系列

2000年の2月頃。

解説

相も変らぬ瑞鶴の風景。
 まあ、兄妹揃って、妙な漫画読んでたってことで。



連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部