- 佐久間拓巳
- にせ幽霊。日本語より人外との意志疎通の方が得意らしい。
- 富良名裕也
- 霊感まったくナシの天然お気楽大学生。
- 佐古田真一
- スナフキンとサボテンを愛する青年。会話はギター
- 平塚花澄
- 書店瑞鶴店員。吹利大学生の食糧連鎖の上位に位置するらしい。
- カレー鍋
- 風見アパートの古株。住人達の栄養状況についてはうるさい。
某日。
風見アパートから叫び声が聞こえる。
……というのが、珍しくないから困るのだが。
- フラナ
- 「佐久間さん、どーしたのっ?」
- 佐久間
- 「い、いや、鍋が……(汗)」
- フラナ
- 「へ?……(目が点)」
風見アパート名物(迷物)永久カレー鍋。
その声を聞くことの出来る者もおり、出来ない者もいる。
…………が、しかし。
- フラナ
- 「……鍋が、体操してるー(汗)」
……表現としては、当たらずと言えども遠からず。
長の年月、火にかけられ続けてきた寸胴鍋。大きさといい形といい、なかなかの良品である……筈なのだが。
それが中のカレーをぽっちゃんぽっちゃんゆすらせながら、伸びたり縮んだりを繰り返している。
- フラナ
- 「佐久間さん、これ、どーしたの?」
- 佐久間
- 「……わからない。今見たらこうなってて(汗)」
- フラナ
- 「変だねー」
いやまあ変なんだけど(汗)
- 佐久間
- 「それにしても……フラナ君は聞こえない?」
- フラナ
- 「へ?」
- 佐久間
- 「いや……いいんだ(汗)」
勘が良い、もしくは霊能があるというのも、時に災難である。
- カレー鍋
- 『儂のぉ〜〜(ふんっ) かれーをぉ〜〜〜(むきっ) 残さずぅ〜〜〜(ふぬっ) 食べろぉ〜〜(むきっ)』
……合いの手が。
なんかこー非常に特徴的というかなんというか(汗)
- 佐久間
- (……動きと声が合ってるのが嫌だな(汗))
見ているうちに、ぽっちゃんぽっちゃんと、カレーの揺れは大きくなる。
- フラナ
- 「ふきこぼれちゃうね(心配)」
- 佐久間
- 「いや、そーじゃなくて(汗)」
と。
困惑している二名の肩越しに。
- フラナ
- 「何、佐古田?」
- 佐古田
- 「じゃんっ(お客)」
- フラナ
- 「お客?」
…友情とは、言葉の壁をも越えさしめるものである。
玄関を見ると。
- 花澄
- 「こんにちは、フラナ君」
- フラナ
- 「あ、こんにちはー……あ、花澄さん花澄さんっ」
- 花澄
- 「はい?」
靴を脱いで揃え、短い廊下を歩いて。
- 花澄
- 「………………?(汗)」
- フラナ
- 「変でしょ」
- 花澄
- 「変ね」
のびーっ、ちぢみーっ……と鍋がやってれば、それはまあ変である。
- 花澄
- 「んーと……(小声)通訳お願い」
- 火
- 『了解』
コンロの火が、一瞬延びて縮む。
と、同時に。
- カレー鍋
- 『儂のぉ〜〜(ふんっ)かれーをぉ〜〜〜(以下略)』
- 花澄
- 「…………(脱力)」
- 佐久間
- (……聞こえてるのか(汗))
台詞はともかくとして。
合いの手には、聞き覚えのある花澄である。
- 花澄
- (肉体派の鍋………………(頭痛))
とはいえ。
一人暮し歴相当、その間自炊歴も相当、となってくると。
この程度の鍋の反乱には負けないもので。
- 花澄
- 「……中のカレー、こぼれますよ(ぼそっ)」
一瞬。
鍋の動きが止まった…………かに見えたのだが。
- カレー鍋
- 『ぬう……』
- 佐久間
- (諦めたかな?)
しかし今度は、中のカレーに注意を払いながら動き出したものである(爆)
- カレー鍋
- 『このっ〜〜(ふぬっ) ポーズならっ〜〜〜(むきっ) カレーはっ(ふんっ) こぼれないぃ〜〜〜(むききっ)』
…………。
- SE
- ぷっつん☆
- 佐古田
- 「…………(汗)」
後ろから、ギターを持ったまま覗いていた佐古田が、一歩後退した。
- 花澄
- 「…………そういう問題なのかなあ……」
にっこー、と。
笑みを顔に張り付けたまま、なのだが。
- 佐久間
- 「…………(何となくつられて一歩後退)」
何となく、春雷一歩手前の空気を漂わせながら。
花澄はよいしょ、と、お鍋を持ち上げた。
- カレー鍋
- 『む? ……こ、こらこらこらこらこらっ』
なんと言っても永久カレー鍋である。
その身体(とゆーのか?)がコンロから離れるというのは、椿事である。
- 花澄
- 「……肉体派を、目指しているんですよね?(にっこり)」
- カレー鍋
- 『こら離せ、離せと言うにっ(一心にぢたぢた)』
- 花澄
- 「赤銅色の肌は、理想ですよね?(にっこりにこにこ)」
笑いが………恐い。
そのまま真っ直ぐに流しへと向かい。
- カレー鍋
- 『こら、中のカレーがっ〜〜〜〜』
- 花澄
- 「ちゃんと、赤銅色の肌に戻るまで研いて差し上げますっ」
どん、と、流しに置く。
と……ぴたり、と、鍋の動きが止まった。
沈黙。
- 花澄
- 「……諦めたかな?」
- カレー鍋
- 『…………中のカレーがぁ……(涙声)』
- 佐久間
- 「みたいですね(溜息)」
すんすん、と、泣き声と愚痴のまざったものが、佐久間の耳には届いている。
- カレー鍋
- 『カレーがぁ……』
- 花澄
- 「もう、やらない?」
- カレー鍋
- 『…………了承(しぶしぶ)』
では、と、花澄はカレー鍋をコンロに戻そう……として。
- 花澄
- 「……重い(汗)」
- フラナ
- 「あ、手伝うっ」
先程は、さほど重いとも思わなかったのだが。
……火事場の莫迦力という奴かもしれない(苦笑)
- 花澄
- 「……大体、カレー鍋がマッチョになりたがってどうするんだか(憮然)」
鍋は元通り、静かにコンロの上に乗っかっている。
動き回っていたのが、嘘のようではある。
ある……のだが。
- 佐久間
- 「…………(沈思黙考)」
- フラナ
- 「どーしたの?」
- 佐久間
- 「……このカレー、食べて大丈夫かな(汗)」
2000年2月初め。
風見アパートの(七つでは納まりそうにも無い)不思議の一つのカレー鍋。
彼が何故肉体派を目指したのかは……永遠の謎かもしれません(爆)
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