- 狭淵美樹(さぶち・みき)
- 本好きの医者の卵。不養生。
- 狭淵麻樹(さぶち・まき)
- 美樹の双子の妹。医者。不養生ではない。
- 平塚花澄(ひらつか・かすみ)
- 書店瑞鶴店員。春の結界の持ち主。
- 平塚英一(ひらつか・えいいち)
- 書店瑞鶴店長。結構口は悪いかも。
某日。
しんしんと冷え込む雨が降っている。
…………の割に、瑞鶴内部は暖かである。
故に、常連が数名。
……暖を取っているのやら、本を探しているのやら。
からからと、また硝子戸が開く。
- 花澄
- 「いらっしゃいませ……あ、狭淵さん」
- 美樹
- 「あ、こんにち…」
挨拶が一瞬止まったのは、レジの前の約1名のせいだったりする。
- 麻樹
- 「生きてたか」
- 美樹
- 「…………(汗)」
- 店長
- 「噂をすれば(苦笑)」
- 美樹
- 「へ?」
- 花澄
- 「いえ、風邪かなにか引いてらっしゃるんじゃないかって、今、話してたとこなんです(笑)」
- 美樹
- 「……実はそうなんですが(汗)」
- 花澄
- 「ここ1週間ほど、お見かけしなかったから、多分そうじゃないのかな、と(苦笑)」
……1週間見かけなければ、風邪を疑われる。
常連中の常連たる所以である。
- 店長
- 「それで、具合の方は如何です」
- 美樹
- 「ここ二日ほどごろごろしてたんで、おおむね大丈夫かと」
- 麻樹
- 「……『おおむね』か(ぼそ)」
- 美樹
- 「…………(汗)」
- 麻樹
- 「それで兄貴、今から大学か」
- 美樹
- 「ええまあ。仕事もありますし……」
- 花澄
- 「お仕事も?」
- 美樹
- 「ええ……まー、大丈夫でしょう」
ちょっと沈黙。
……えらい疑わしげな顔になった二名を見やって、店長が苦笑した。
- 店長
- 「狭淵さん」
- 美樹
- 「はい?」
- 店長
- 「もし、私か花澄が同じような体調で、今から仕事に行く、と言ったら、お医者さんとしてどう言われます?」
………五秒経過。
……………十秒経過。
…………………十五秒を数える前に、ぷっと花澄が吹き出した。
- 美樹
- 「あ”ーーと(汗)」
- 麻樹
- 「…………(嘆息)」
- 店長
- 「……お大事に(苦笑)」
2000年二月初め。
医者の不養生という言葉はありますが。
医者の卵もまあ似たようなもの…………なんでしょうかねえ?
瑞鶴での常連と店員達の会話です。
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