まあそれなりにそれなりに。
煮物を作る暇のある日は幸いである。
ついでに大豆の水煮を足して。
ざく、と刺し込んだ包丁が、そこで止まってしまったらしい。
こうなると厄介で。
包丁に体重をかけて、南瓜を割る。
……時折かぼちゃをすっ飛ばした経験者の言である。
よいしょ、と、結局あるだけの南瓜を割りながら、花澄は微かに苦笑する。
好き嫌いを言うこと自体、許さなかった父親が、しかしほぼ唯一手をつけなかったのが、南瓜だった。「お父さんは召しあがらないで下さいな」との言葉を聞き流して、食卓に乗った南瓜の煮付けの鉢を、睨んでいたこともある。
一生分、既に食べたから俺はもういい、というのが口癖で。
南瓜の葉から、茎から。
当時は甘くて旨かった……と。
酒の傍ら、昔話していた記憶がある。
甘くて旨かった筈のものを、嫌うほどに食べざるを得ない環境。
それは……確かに、想像の外にある状況かもしれない。
とりあえず、切った南瓜の面取りをしながら。
細く、細く角を削りながら。
花澄は一つ苦笑した。時系列-------
2000年3月初旬
IRCでの、年代談義からふと生まれた話です。
親の世代、というものは、手の届くくらい近くという印象もあるんですけど。その生活は既に、想像でもきついものがあるのかもしれません。