- 水島緑(みずしま・みどり)
- 内気な女子大学生。人見知りが激しい。
- 金元吉武(かなもと・よしたけ)
- 無口な怪しい小男。よく人に恐がられる
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
その日は朝から雨が降っていた。
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
- 緑
- 「んー、バス遅れてるのかなぁ……」
バスの停留所の庇の下で、水島緑は雨を避けながら一人でバスを待っていた
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
- 緑
- 「あれ?」
視界のずっと先に人影が現れた。
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
人影はこちらへ歩いて来る。
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
人影は、緑よりも身長が低く、丸い黒眼鏡をかけた黒ずくめの小男だった。
安物の透明なビニール傘をさして、無表情にバス亭の方へやって来る。
- 緑
- 「(ううっ、怪しい……)」
男はどんどん近づいて来る。
- 緑
- 「(うー……早く通りすぎてよぉ……)」
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
男はバス亭を通り過ぎなかった。
- 緑
- 「(ええっ!? うそっ!)」
男はバス亭の庇の下に入ると傘を閉じた。
- SE
- カンカンカン…………
そして傘の軸先を地面に軽く叩きつけて傘の水を払った。
その作業が済むと、男は無言で緑の横に並んだ。
- 吉武
- 「………………」
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
- 緑
- 「(ううっ、この人もバスを待ってるのぉ?)」
- 吉武
- 「……」
- 緑
- 「(こ……この人、なんかこわいよぉ……)」
緑は首を正面に向けたまま、視線を合わさないようにビクビクしながら、チラチラと横目で隣の小男の様子を伺う。
- 緑
- (ちらちら……)
- 吉武
- 「……」
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
不意に男が緑の方へ首を向けた。緑と小男の視線が合う。
- 吉武
- 「……」
- 緑
- (びくぅっ!)
緑は慌てて目線を正面へ向け、そのまま硬直する。
- 吉武
- 「……」
- 緑
- 「(うぅ……バス早く来ないかなぁ……)」
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
雨音が激しい。
- 吉武
- 「……」
- 緑
- 「(うう……嫌だなぁ……)」
バス亭に他の誰かがやってくる気配は無い。バス亭には緑と小男の二人きり
- SE
- ペキパキポキ…………ポキパキペキ…………
- 緑
- (びくぅぅっ!)
突然、小男が指の骨を鳴らした。
- 吉武
- 「……」
- 緑
- 「(うううう…………(どきどきどき))」
緑は、最早「バス、早く来てっ!」と心の中で繰り返し祈り続けていた。
- 吉武
- 「……」
- 緑
- 「……(汗)」
- 吉武
- 「………………」
- 緑
- 「………………(汗汗)」
- 吉武
- 「………………………………」
- 緑
- 「………………………………(汗汗汗)」
- 吉武
- 「………………………………………………」
- 緑
- 「………………………………………………(汗汗汗汗っ)」
バスはまだ来ない。
- 吉武
- 「……」
- 緑
- 「……」
- 吉武
- 「……あの」
- 緑
- 「(びくぅっ!)……え、あ、はい……」
男が緑に声をかけた。
- 吉武
- 「……激しいですね」
- 緑
- 「え、えと、あの、その……」
- 吉武
- 「……いや、雨が……」
- 緑
- 「あ、ああ、ええ……はい」
- 吉武
- 「…………」
- 緑
- 「(うううううう……(汗汗汗汗))」
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
再び沈黙が続く。又、男が口を開いた。
- 吉武
- 「……バス」
- 緑
- 「は、はいっ(びくっ!)」
- 吉武
- 「……遅いですね」
- 緑
- 「え、ええ……(若干の愛想笑)」
- 吉武
- 「……」
- SE
- ザーーーーーーーーー…………
それっきり、二人はバスが来るまで一言も言葉を交わさなかった。
2000.6.梅雨の季節のある激しい雨の日
コミュニケーションがまるで成り立っていません(爆)
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