- 琴羽愛(ことは・あい)
- 吹利学校高等部養護教諭。こんな名前だが男である
- 火撫楓(ひなず・かえで)
- 吹利学校高等部実験科の二年生
とある日の吹利学校高等部の昼休み。火撫はふらりと保健室へ赴いた。
- SE
- こんこん
- 火撫
- 「失礼しまぁす」
- 琴羽
- 「はい、どうかしましたか?」
- 火撫
- 「あ、怪我とかじゃないんです。パッチテストやりたいんですけど、できますか?」
- 琴羽
- 「ええ、できますよ。ちょっと待ってて下さい」
戸棚の引出しから紙袋を取り出す琴羽先生。
- 琴羽
- 「でも、どうしていきなり?」
- 火撫
- 「え、あの、えっと、去年文化祭でやってましたよね? あのとき忙しくて時間がなかったんです」
保健委員の企画でパッチテストをやっていたのである。
- 火撫
- 「そいで、お願いしようと思っていながらもずるずると」
因みに文化祭は九月に行われている。
- 琴羽
- 「そうですか。では……」
パッチテストのやり方を写真を見せながら説明してくれる。まず五分間エタノールを染み込ませた綿を腕に張り付けて反応を見る。その後、はがしてから十分間放置して再び反応を見るというものだった。写真には全く跡のついてないものから綿をつけていた部分がくっきりと赤くなっているものまで五分後と十分後のものがそれぞれ4枚ずつ。
- 琴羽
- 「跡がくっきりつくのは分解酵素が少ない人で、大量に飲んだときに急性アルコール中毒になりやすい人ですね。 こっちの跡がつかない人はアルコール依存症にならないよう注意する必要があります。それじゃぁ、これを腕のぷにぷにしてるところにはりつけて下さい」
- 火撫
- 「は〜い」
- 琴羽
- 「弱くはないといったところですね」
- 火撫
- 「そうみたいですね〜」
ほんのちょっとだけ赤くなっている。
- 琴羽
- 「お酒を飲むようになったら、依存症には気をつけましょうね」
- 火撫
- 「そーですね……」
- 琴羽
- 「けっこう強いと分かったからといって、まだ飲んじゃいけませんよ」(にこり)
- 火撫
- (ぎくぅ)「は、は〜い。あ、有難うございましたぁ〜」
2000年6月の半ば頃
目的がバレバレ
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