エピソード1435『楽譜』


目次


エピソード1435『楽譜』

登場人物

沢野口博康(さわのくち・ひろやす)
 
東京在住の知識欲の怪物。彼に聞いて分からないことはないと言い
切っても過言ではない。
大沢祐太(おおさわ・ゆうた)
 
吹利在住の若きピアニスト。吹利大学で超絶系作品に染められた。
三橋徹(みつはし・とおる)
 
吹利高校3年生のクラシック・マニア。クラシック以外にもかなり
人脈が広い。

本編

昼過ぎ、吹利学校にて。

三橋
「まいっちゃいましたよ〜」
大沢
「どうしたんだ?」
三橋
「うん、今度葛城高校のオケと合同練習なんですけど、手土
産が見つからないんですよ。なにかいい楽譜持っていません
か?」
大沢
「どのくらいの?」
三橋
「前回ソラブジのソナタを持って行っちゃったので、それに
匹敵する楽譜をお願いします」
大沢
「おい、天下のソラブジに対抗するって……。沢野口なら何
か持っているかもしれないな。今度聞いてみよう」

自宅へ帰った大沢は「楽譜ライブラリー」を検索する。存在そのものが明らかでないアイテムはいくら三橋の異能を使っても難しいので、大沢が自宅の書庫を漁ったほうがよほど楽。
 しかし、ふさわしい楽譜は見つからない。第一、「あれ」に匹敵する楽譜自体そうそうあるものではない。
 
 そこで東京へ電話する。沢野口なら何かやばいものを持っていそうだ。

沢野口
「はい、沢野口です」
大沢
「三橋くんが葛城高校オケと合同練習で会うらしいんだけど、
それでちょろっと相談が」
沢野口
「貢ぎ物か?」
大沢
「そ〜ゆうこと。で、何か妖しげな楽譜持ってない?」
沢野口
「メールで送ろうか?」
大沢
「頼む」

一時間後、インターネットに繋いだ大沢は唖然とした。

大沢
「って、妖しげな楽譜とは頼んだが、よりによってアムラン
かいな!」

巨大添付ファイルつきのメール1通到着。サブジェクトは「かんぱねら」。

大沢
「そういやあ、これ生身の人間じゃ弾けないんだよな?
確か。まあいいや」

アムランはテクニック世界一のピアニスト。彼が弾けない作品は、生身の人間には弾けない。自編の一部に「自分でも弾けません」と宣言するレベルの作品があり、すなわちそれは現在の人間には演奏不可能である。
 
 楽譜を刷って、考える。
 ……これ、さすがに外道と言わないか?

大沢
(電話で)「『妖しげな楽譜』は手に入ったけど、いつ渡そ
うか?」
三橋
(喜色満面)「なんですか?」
大沢
「アムランのカンパネラ」
三橋
「素晴らしいアイテムですね。いただきです。じゃあ明日学
校で」
大沢
「了解」

時系列

2000年7月のある日。

解説

85%以上実話。(てか、人間にアムラン・カンパネラなど弾けません〜〜)
 吹利学校のピアノサークル人脈には、妖しげな楽譜を一山お持ちな方がたくさんいらっしゃいます。



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