エピソード1443『みかんのエプロン』


目次


エピソード1443『みかんのエプロン』

登場人物

白雲(はくうん、通称「白犬」)
 
ふさふさした毛並みの、大きな大きな白犬。
同じ犬属の先達として、みかんとは仲が良い。
前野 みかん(まえの・みかん)
 
人狼の少女。無道邸にて、前野浩の「妹」として暮らしている。
大きな同属の「おじさん」である白雲になついている。
橘川 徳美(きっかわ・なるみ)
 
無道邸の筆頭メイド。
実は異能者だが、ここ数年で濃い同僚たちが増え、目立たなくなった。

本編

無道邸の一室にて。

みかん
「はくうんさんはね、これを着けるのっ☆」

みかんが取り出したるは、一枚のエプロン。
 小ぶりで(おそらくはみかん自身のだろう)、花柄にフリフリが付いている。

白犬
『これを? 着けるのかね?』
みかん
「うんっ」

もとより白犬自身が着けられるわけではなく、みかんが抱きつくように白犬の首に腕を回して、前掛けよろしく何とかくくりつける。

橘川
「みかんちゃん、用意できましたよ」
みかん
「あっ、きっかわさん、ありがとうなのっ」

いい匂いが漂ってくる。

橘川
「美味しそうに出来上がったわね(にこ)」
みかん
「えへへ……おにいちゃんにおしえてもらったのっ」

ということは、みかんのお手製ということか?

みかん
「はい、はくうんさん、どうぞっ」

大きな平皿に盛られて出されたのは、美味しそうなシチューである。
 みかんの心遣いはもちろん嬉しいが、既に白犬は別のことを心配していた。

白犬
『(これをいただくとすると……)』

白犬は、犬であるから、直接口をつけて飲むわけだが。
 こういったスープの類を飲むと、どうしても口の周りにべっとりと付いてしまう。人間なら「おひげー」などと言えば済むのだが、白犬のふさふさした毛並みに付くと、どうしてもそこから滴ってしまう。

白犬
『(…しかしこのエプロンで拭くわけにはいかないし(悩))』

……そう思うところで既に論点がずれているのだが。

白犬
『(……しかたがない)』

結局、このシチューをぺろりといただいた後で彼は、舐めて取れなかった口の周りの汚れを何と絨毯にこすりつけて拭き取ってしまい、橘川さんにしっかりと怒られてしまったのであった。
 終)

解説

無道邸にて、みかんが白犬を手料理のシチューで接待してくれたときの一コマ。

時系列

2000年5月のある日のこと。
 白犬が無道邸に出入りするようになっていくらか経った時を想定しています。



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