エピソード『天文部長の素顔』


目次



エピソード『天文部長の素顔』


登場人物

 秋乃仁(あきの・じん)	:ビルの下になっても平気なタフ男。帰宅部。
 柘俊章		:天文部部長。『調達』が得意。


本編

 西生駒高校天文部。
 外部から見れば高校生とは思えない、極めて優秀な連中が揃った団体である
が、その実体は「コメットシーカー」「小惑星ハンター」「CCD命」「写真は
銀塩」……いろんなやつがいる、実にまっとうな逸般人部員集団である。
 そして彼らをまとめる部長、柘俊章。彼もまた……。

 昼休み、屋上に登る階段のつき当たりの踊り場。そこは我らが天文部が望遠
鏡を常駐させる、神聖なる領域。

 天文部長	:「ちょっとそこの秋乃君。屋上に出るのかね?」
 仁		:「活用させてもらってます」
 天文部長	:「君は屋上が好きと見える」
 仁		:「昼寝によし、早弁によし、気分転換にもいいし」
 天文部長	:「シュミカセ(*1)、壊したら50万だからな」
 仁		:「何で俺に言うんだよ(^^;;」
 部長		:「こっちの20センチ屈折も、2、30万する(*2)」
 仁の連れ	:「……^^;」

 たしかに、部費でこれだけ揃えている高校の部と言うのはタダモノではない。

 仁		:「だから、俺に説明するなって」

 仁ならば、意地になって、自作とかしそうだ(笑)

 部長		:「作ると言うのも手だが、ドブソニアン(*3)は当面いらん
		:ぞ。シュミカセが壊れたらやはりシュミカセを後継機にし
		:たい」

 仁		:「お前ら……もし壊れたら全部俺の責任にするつもりじゃ
		:無いだろうな」
 部長		:「まさか。ただ、こうやっていっておけば、犯人にされそ
		:うになったら捜査してくれるだろう?( ̄ω ̄)」
 仁		:「おひ」
 部長		;「で、わからなかったら君が犯人、と」
 仁		:「こらこらこら」
 部長		:「と、言うわけなのでよろしく」
 仁		:「それは、冤罪と言うのだぞ」

 そのと〜り。しかし、部長はこれで引っ込むほどやわではなかった。部長の
顔は鉄張りで、心臓には鋼鉄の毛がブラシのように生えているのである。

 部長		:「ここでは大陸法が適用されると言うことだなうむうむ」

 迷惑だな(笑)
 で、仁たちが屋上に消えた後。現れたのは部員A。又の名を後藤『CCD初心
者』隆と言う。それがうっかりとカラーCCDのスイッチを入れ。

 部員	:「ぶちょ〜っ、CCD壊れましたっ」

 たうぜんであらう。夜間のみの使用を考えた静止画CCD。動画用CCDとはわけ
が違う。ちなみに値段はものすごく高い。が。

 部長		:「わかった。一週間以内に調達してこよう」

 ……資金はどうするのだ、天文部長。その疑問への回答は、小さな看板が教
えてくれていた。

 謎の看板	:「何でもお申しつけ下さい。調達致します」
 生徒B	:「何でも……^^;」

 人間の調達もするのだろうか。やばげな部活ぞな(笑)

 仁の連れ2	:「彼女、だよな? 仁」
 仁		:「くおらぁ!」(げしっ)
 部長		:「女子剣道部長一人、ですね」
 仁		:「ちょっと待て〜(汗)」(ぼがっ)
 部長		:「しかしなあ、信頼できる筋からの情報ではそう言うこと
		:になっているぞ?」

 大真面目。

 仁		:「その情報が間違ってるんだよ」

 と言っているところへ、やってきた生徒が一人。

 生徒A	:「次の大会で部員が足りないんです。有能な部員一人を!!」
 部長		:「有能な部員一人。……求める資質は?」
 生徒A	:「とりあえず、バスケットがうまい人をお願いします」

 仁		:「ったく……かえろかえろ……」

 帰りかける仁。それの襟首を天文部長がむんずと捕まえる。

 部長		:(むんず)「仁君、バイトだ」
 仁		:「ぐえっ!」

 仁		:「ごほっごほっ……いきなり襟首を掴むな!」
	
 知らん顔で交渉を進める天文部長。

 部長		:「(Aに)バイト代は食べもので支払ってくれれば良いそうだ」
 仁		:「あ? バスケ?」
 生徒A	:「有り難うございました。(ずるずる)」

 交渉は成立。が、まだ十分な条件を提示されていないものが一人。

 仁		:「(振り払って) まだ受けて無いだろうが!」
 部長		:「私に逆らう気かね(にや〜り)」
 仁		:「厭な笑みを浮かべるんじゃない」

 この部長に関わって、ろくな目にあっていない仁であった。しかしそこはそ
れ、精神的にもタフな仁である。転んでただで起きる玉ではない。

 仁		:「報酬の交渉はちゃんとしておかないとな」
 部長		:「サボった授業の代返……どうする?」
 仁		:「此方の食事についての交渉だよ!」
 部長		:「それは当事者間で決めてくれ」

 生徒Aに向き直る仁。

 仁		:「相場としては、一試合\3000。食事なら購買部の食券で
		:二割り増しだ」
 部長		:「試合結果で多少上下するはずだったな?」
 仁		:「酒ならそのままだぞ」

 かくして、人身売買……もとい人手の調達はなされ、天文部の財政は少々潤
うのであった。


用語解説

 (*1)		:略称、正確にはシュミット・カセグレンという望遠鏡の種
		:類。反射の一種です。性能が良くて小型だが、しっかりつ
		:くってあるものはやはり高い。ふつ〜、高校の天文部には
		:……あまりないよなあ。
 (*2)		:安物ははっきり言って使い物にならないんですね。レンズ
		:のフチに発生する「色収差」を考えると……
 (*3)		:これも反射望遠鏡の一種です。手作りしやすいのですが、
		:光の侵入が少々気になります(カバーかければいいんです
		:けどね)


参加者

 ハリ=ハラ	:秋乃仁
 中崎実	:柘俊章
 Kou		:仁の連れ、生徒B、地の文
 更毬静夢	:生徒A


解説

 IRCでのなりきりチャットをもとに再構成されたエピソード。
 内容は……まあ天文部の紹介ですか。



連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作“語り部”総本部