エピソード『終業近くの図書室にて』


目次



エピソード『終業近くの図書室にて』


登場人物

 石上正弘(いしがみ・まさひろ)	:図書室の本を黙って持ち出す常習犯。言霊使い。
 佐柄夢希(さがら・ゆめき)	:念動力者の図書委員。


本編

 図書室の机には入ってすぐの6人用の大きい机と、奥の方にある1人1人の
スペースに区切られた机とがある。その奧の机の一角。

 石上		:「……」

 石上は本を読んでいた。
 『高等魔術の教理と祭儀 <教理編>』
 同じ章を読むのはこれで3度目。
 文章が難しいので理解できないのである。

 石上		:(著者の情熱は感じられるんだけどな)

 哲学の書棚に並んでいる中で、周囲と違う言葉を感じたから読んでみる気に
なったのだが。2時間かけて100ページも読めていない。
 もうすぐ終業の鐘が鳴る。

 石上		:(後は家で読むか……)

 本の背表紙には「禁」のシールが貼ってあるがそんな物はお構いなしである。
本を鞄の中に入れ、立ち上がる。

 夢希		:「それ、持ち出し禁止」

 振り向くとそこに図書委員がいた。よく見る顔。名前を佐柄とかいった。

 石上		:「一週間ほど、いいだろ? この本、時間をかけないと読
		:めないし」
 夢希		:「だめ。決まりは決まり」

 心に訴えかけてみる。前は効かなかったけど今度は……。

 石上		:「ちゃんと返すからさ」
 夢希		:「だめ」

 やっぱだめか……。

 石上		:(ため息)

 鞄から本を取り出すと元あった場所に返す。

 夢希		:「もう一冊あるでしょ」
 石上		:「はい?」
 夢希		:「もう一冊、鞄の中に」
 石上		:「……」

 もう一冊も取り出すと元の場所に返す。

 石上		:「なんで判ったんだ?」
 夢希		:「見てたから」
 石上		:「……不覚」

 石上		:(今日はついてないな……)
 夢希		:「鍵閉めるから早く出て」
 石上		:「はいはい」

 図書室を出る。今日のところは素直に帰ろう。
 と、後ろから。

 夢希		:「ポケットの中の本は明日でいいから」
 石上		:「……」


あとがき

 石上は佐柄女史に勝てないらしい……。今回は、きっちりさいころ振ってみ
ました。その結果が上記の通り。
 能力値的には同じはずなんですけどねぇ。



解説

 BOBUさんによる作品。ゲーム的には言魂使い15で許諾を得ようとしたものの、
自律15の夢希には通じなかった……というあたりですね。
 原題は『終業近くのちょっとした出来事』でしたが、いじりました。



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