小説『冷たい月』


目次



小説『冷たい月』


登場人物

 宮部晃一(みやべ・こういち)	: 強化超能力少年



本文

 冷たい床、がちがちに固いベッド、鉄格子のついた小さな窓。かすかに月明
かりが部屋を照らしている……
 これが僕のいる世界。他は……知らない。
『……寒い……』
 ベッドの上でひざを抱えてうずくまる。ほんとは寒くないけど。心が……寒
い。さみしくて、さみしくて、心がつぶれそうで……さむい……。
『お母さん……』
 呪文のように繰り返す言葉。呼んでも、呼んでも……お母さんは答えてくれ
ない。視界が歪み、抱え込んだひざに生温かいものが落ちる。
『……たすけて……』
 誰も……助けてくれない……わかっているのに……それでも助けを求めずに
はいられなかった。チカラがつかえない今の僕には……泣くことしかできない
から……。
 殺風景な部屋、わずかに月明かりの照らす中、声も無く、ただ泣き続ける。
 ……ひざを抱えて、泣きながら、お母さんを呼び続ける……ずっと……。



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