エピソード『逃亡』


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エピソード『逃亡』



円尾食品会社地下研究所所長室


 所長		:「どう? あれの調子は」
 研究員1	:「順調です、先日の試験では次元断層生成能力も確認しま
		:した」
 所長		:「そう、もちろん意志はない人形のままよね?」
 研究員1	:「はい、まだ確認できません」
 所長		:「そう」
 研究員2	:「自我を覚醒させなければいけないのでしょうか?」
 所長		:「そうではないわ、意志なんてない方が主人に忠実に動く
		:もの。ただ、人間の因子を組み込んだことで、自我に目覚
		:めるんじゃないかと私は心配してるの」


地下研究所第1研究室


 洋子		:「この子、今なにを考えてるのかしら?」
 研究員3	:「なにも考えてませんよ。意志はありませんから」
 洋子		:「カプセルの中で培養液に浸かったまま、いつ出てこられ
		:るの?」
 研究員3	:「もう何回か出てますよ、ただ能力試験が終わるまではし
		:ばらく出たり入ったりを繰り返すでしょうね」
 洋子		:「……」
 研究員3	:「どういう気分ですか?」
 洋子		:「えっ?」
 研究員3	:「いや、言ってしまえばあれはあなたの分身のようなもの
		:ですよ? そんなのが実際目の前に居てどういう気分なの
		:かなって」
 洋子		:「そうね、我が子みたいな気分……かな?」
 研究員3	:「そうですか、それじゃ僕はデータの処理が有るんでこれ
		:で」
 洋子		:「がんばってね」



所長室


 所長		:「さて、そろそろ行きますか」
 研究員1+2	:「おともします」


第1研究室


 洋子		:「さて、目覚めなさい……薫」
 薫		:「(カプセルの中で目を開ける)ごぽごぽ」
 洋子		:「培養液排除……カプセルオープン」
 薫		:「(カプセルの外に一歩出る)……」
 洋子		:「うーん、がっちりしてていい体ね。ほら、この服を着て」
 薫		:「……?」
 洋子		:「ん、もう。着せて上げるから早くしてよね」
 所長		:「なにをしているんですか?」
 研究員1	:「ああっ、『薫』を外に出してどうするつもりなんですか
		:っ」
 洋子		:「あら、所長。はいこれ」
 所長		:「退職届? なんですか、これは」
 洋子		:「だから退職するのよ、退職金はこの『薫』でいいわ」
 所長		:「ここから逃げられると思っているんですか?」
 研究員2	:「所長! 警備の方には連絡しました」
 所長		:「そうですか。さて、どうするんですか? 姫野洋子博士」
 洋子		:「薫、逃げるわよ」
 薫		:「……わかった」
 所長		:「ばかなっ、意志を持っているわけがない」
 研究員1	:「まさか、組み込まれていた博士の因子が反応して……」
 洋子		:「そうかもね(本当は私の血を使ったのだけど)」
 薫		:「いくぞ」
 所長		:「とめなさいっ」


研究所出口

 洋子		:「結構、あっけなく出れるわね」
 薫		:「あれほどの物なら簡単だ。実験の方がよっぽどましだ」
 所長		:「に、にがしませんよ(発砲!)」
 薫		:「ぐ(命中!)」
 洋子		:「きゃぁ、薫っ」
 薫		:「貴様……殺す(次元断層生成!)」
 所長		:「そ、そんな……馬鹿な」
 薫		:「あばよ」


夜空の下で

 薫		:「さて、どうしようか」
 洋子		:「さっき空間から取り出したあの槍……あれは何なのよ」
 薫		:「あれか? ひみつだ」
 洋子		:「あんたカプセルの中にいた割には変なところで素直じゃ
		:なくなるわね」
 薫		:「ははっ、さて。野宿するわけにも行かないし、さっさと
		:歩くぞ」
 洋子		:「あ、こらっ。まってってば」



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