エピソード『しらないの?』


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エピソード『しらないの?』


登場人物

 宮部晃一(みやべ・こういち)	:強化超能力少年。
 森江新(もりえ・あらた)	:先天的な操水術士
 谷山麻衣(たにがわ・まい)	:天才的な才能を持つ(鎮魂の)舞姫


解説

 木曜日の午後の谷山家。
 午後四時になると、すでに麻衣は帰宅している時間である。今日はついでに、
晃一と新(それに鬼李)の姿もあった。
 木曜日は晴美(麻衣の母)の音楽教室は休みなので、晴美の仕事部屋は子供た
ち(プラス影猫)に解放されている。
 防音処置の施された重いドアの向こうには、グランドピアノ。壁の棚にはバ
イオリンも置いてある。そのうちの一つは麻衣のもの。

 新		:「ねえっ、これ、さわっていいっ!?」
 麻衣		:「うん。…………ちがうよ新君、弓はこう持つのっ!」
 新		:「こう?」
 麻衣		:「そう。それで弾けるよ」

 SE		:ぎーこぎーこ

 新		:「へんなおとがする〜」
 麻衣		:「もっとそっと弾くんだよ」

 晃一		:『僕も、やってみていい?』
 麻衣		:「うん。ほら、ここをこうして……」
 晃一		:『……指、いたい』

 弓を持とうとして、小指がつった晃一。バイオリンを諦めて、グランドピア
ノに興味を示す。

 晃一		:『おおきいね……これも、楽器だよね』
 麻衣		:「うん。弾いてみたら?」
 晃一		:『うん……』

 曲など知らない。それ以前に、どうしたら音が出るのかよく解らない晃一だっ
た。

 新		:「ぼくもっ!」

 戸惑っている晃一をしり目に、新が椅子によじ登る。鍵盤の蓋だけあけて、
赤いフェルトのカバーを放り出して。

 SE		:どんばんじゃーん

 でたらめに鍵盤を押す新。

 晃一		:『そっか……そこを押すと、音が出るんだね』
 麻衣		:「そうだよ。ほら」

 麻衣に押しやられて、おそるおそるさわってみる晃一。タッチが弱く、ろく
な音が出ない。

 晃一		:『音、でない……』
 麻衣		:「もうちょっと強くおさないと、音でないよ」

 SE		:ぽ……ろん

 まあ、晃一の力ではこんなものだろう。しばらく、新と晃一はピアノで遊ん
でいたが

 新		:「ねえ、まいちゃんはなにかひけないの?」
 麻衣		:「うーん…………あ、かんたんな曲があるよっ」

 新と晃一をどけて椅子に登る麻衣。

 麻衣		:「♪ねこふんじゃったっねこふんじゃったっ♪」

 歌いながら弾き始める麻衣。

 鬼李		:「…………嫌な歌だ(汗)」

 ぼやく影猫。そこに、

 晴美		:「おやつができたわよ」

 顔を出す麻衣の母。

 晴美		:「三人とも、手を洗ってらっしゃい」
 麻衣&新	:「はーい」
 晃一		:『……うん』
 晴美		:「麻衣、使った楽器は片付けていきなさい」

 ちゃんと釘を刺すことも忘れない。

 晃一		:『ふぅん……』
 麻衣		:「どしたの?」
 晃一		:『おかあさんって、ああいうひとなんだ……』
 麻衣		:「なにが?」

 首をかしげるが、それ以上に何か言おうとはしない。

 新		:「ぼくもかたづけするっ!」
 麻衣		:「あーっ、新君、そのフェルトであそんじゃだめっ!」

 片付けるといいながら、鍵盤カバーを顔に巻いて「ミイラ男っ!」とふざけ
る新に、麻衣が言う。

 晴美		:「ミルクティ、もう入れるわよ」
 麻衣		:「いま行く〜」

 防音ドアを完全に閉め切らないまま、三人は洗面所に直行。そしてダイニン
グに行くと。

 晃一		:『これ…………なんだろう』

 テーブルの上に鎮座ましますラウンドケーキ一つ。丸ごと一つのケーキ、そ
れも生クリームのデコレーションのないケーキなど、見たこともない晃一だっ
た。てっぺんにアーモンドスライスがたっぷり乗って、アイシングがかかった
ケーキ。

 晴美		:「新君、お皿をだして」
 新		:「これ、おばさんがやいたのっ!?」
 晴美		:「そうよ。はい、新君の分。晃一君」

 目の前で切りわけてもらって、フォークを片手に迷う晃一。

 晃一		:『これ、どっちから食べるといいんだろう……』

 扇形の細いところと太いところ、どっちを先にすべきか悩む晃一だった。



解説

 お子様たちの日常。



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