語り部サプリメント「霙の街」


目次



語り部サプリメント「霙の街」


  コンセプトは、ボスニア・ヘルツェゴビナ化した日本です。
  1995年1月6日。南関東は上空で爆発した一基の核弾道弾によっ
て潰滅しました。
  それは、バブルの夢に酔っていた日本人の目を覚まさせるのに充
分すぎる衝撃でした。
  しかし、日本人が目を覚ましたとき……時は既に遅かったのです。
  日本は分断され、崩壊しました。
  自国民保護の名を借りた国外勢力の侵入と地方政権の分立。そし
て凄惨な内戦が日本を覆いつくしました。

  それから6年の月日が過ぎ去り、多くの価値あるものが失われま
した。……今だ日本は統一されていません。

  あなたはこの時代に生きる1人の民間人としてたっぷり運命に翻
弄されて下さい。



「霙の街」舞台設定書


  1995年1月6日、80年代後半に始まる人類史上空前の好景気に浮
かれる日本国の首都、東京で出所不明の核弾道弾による爆発が起こ
った。ただの一撃で関東平野全域は潰滅し、政府は消滅した。報道
機関も潰滅した。そして続く1月17日、神戸市を震度7の震災が襲
った。世界を分割統治しながらも未曾有の対日貿易赤字に苦しんで
いた列強各国は競うように緊急援助を名目とする派兵に踏み切った。
動脈を断ち切られ、脳髄を失った日本では統一を失った。そしてそ
れは日本という国の分裂の始まりだった……
  そして5年の歳月が過ぎ去った。成金大国日本が崩壊、消滅した
後も世界はあいも変わらずどうという事なく元の秩序……新世界秩
序とやらを全面戦争に陥ることなく保っていた。そしてかつて日本
と言う国家が支配していた跡地には、正当な日本国の支配者を名乗
る政府が五つ、そしてかつての県レヴェルを支配する小政府がいく
つか成立し、日本の覇権を競っていた。


2001年冬における旧日本領土の政治情勢



北海道地方

  ここは比較的まともな日本国札幌政府によって一応の統治状態を
保っている。更に、旧陸自第7師団他の自衛隊最強たる北方方面隊
を有していることもあり、ロシア連邦帝国(旧ロシア共和国)と友
好条約を結んでからは旧日本領の中では最強の政府であるが、いか
んせん工業力と人口の不足がネックとなって本州へは侵攻できずに
いる。


東北地方

  ここでは日本国仙台政府が旧山形県を除く大部分を支配している。
ただし、北の札幌政府の脅威に備えるために、八戸港に米国第七艦
隊が駐留している。
  また、山形県地方はロシア連邦帝国の傀儡政府であるところの新
潟共和国のこれまた傀儡政権である山形人民戦線が実効支配してい
る。また、福島県は西半を新潟共和国に奪われている。猪苗代湖北
岸における戦いにより、それ以上の進出はくい止められたが、反撃
には及んでいない。


関東甲信越地方

  南関東はこの崩壊の原因となった水爆の被害により、ノーマンズ
ランドと化している。全く立ち直っておらず、いわゆるどうしよう
もない状態である。一応、調査団程度は派遣されているが、どの政
府も支配権を無理に主張してはおらず、無政府状態が横行している。
それに引き替え、北関東の群馬、栃木の二県は半独立(と言うより、
ゲリラが少数残るのみ)の形で自治政府(県庁を名乗っている)は
あるが仙台政府の支援によって、新潟共和国の攻勢をくい止めてい
る。
 また、山梨、長野県域は甲信連邦共和国を形成して自治を行って
いるが、北部領域では新潟共和国との衝突が絶えず、幾たびかは長
野市を新潟共和国に占領されたりなど、屈指の激戦地帯となってい
る。また、南部からは名古屋政府からの密接な支援を受けている。


東海地方

  崩壊した関東から太平洋沿岸沿いに連なる東海及び岐阜県平野部
(美濃地方)は、アメリカの密接な支援を受けた日本国名古屋政府
の支配下にある。しかし、その支配に反感を憶える人々(特に旧愛
知県東部出身者)が三河人民解放戦線を形成して抵抗活動を続けて
いる。また、名古屋政府は三重及び、和歌山の南半までその勢力範
囲に含んでいるが、近畿中央部から西を大きく支配する京都政府の
存在により日々圧迫されている。現在、両者間には停戦協約が発効
しており、関ヶ原に国連部隊が駐留している。


北陸地方

  旧石川県、福井県北半を領有する北陸連邦、そして岐阜県飛騨地
方の飛騨共和国と同盟関係を結ぶ富山共和国に分かれる。北陸連邦
は名古屋政府と、飛騨、富山両共和国は海路、京都政府と密接な関
係を結んでいる(これは、ロシア軍の新潟侵攻の際に、前進拠点を
富山新港に設営、上陸した自衛隊が京都政府の指揮下に入ったとい
う理由も大きい)。また、甲信連邦共和国、飛騨共和国、富山共和
国の三国は新潟共和国に対する共同防衛条約を結んでおり、狭隘な
地形を活かした山岳戦闘と熟練した山岳兵で、良く新潟の自動車化
兵団に対抗している。


京都政府(近畿−瀬戸内地方)

  さて、北は敦賀市から丹後半島、瀬戸内は赤穂市、西は姫路市、
南は和歌山市そして奈良県までを直轄下に治め、滋賀、伊賀で名古
屋政府とにらみ合っている大勢力の一が日本国京都政府である。経
済の中心は大阪であり、政治の中心と解離しているのは、平成天皇
明仁が京都御所に居を定めたという理由による。さらに、岡山広島、
香川愛媛四県の各県自治政府の連合体である瀬戸内連合を海上自衛
隊呉軍港駐留部隊の指揮権を持つことにより、ゆるやかに傘下に従
えているため、人口、工業力、発言力ともに最大の勢力であり、E
U諸国の援助を受けている。また、完全な同盟国として前述した富
山、飛騨、瀬戸内連合の他に阿波徳島共和国、岩国基地を首府とす
る対福岡戦線の最前線としての周防民主共和国を従えている。


山陰地方

  この地の大半を治める日本民主主義人民共和国は、日本の混乱に
乗じて奇跡的に半島統一を成し遂げた朝鮮民主主義人民共和国の傀
儡国家であり、在日朝鮮人にとってのイスラエルのような状態とな
っている。しきりに山陽地方への進出をはかっているが、国力的に
元が山陰であるのでせいぜい国境線沿いの小さな攻防に終始してい
る。なお、この国は首府を旧出雲市に置いているため、日本国出雲
政府と呼ばれることもある。


南四国地方

  また、四国の高知県域は日本国高知県を名乗っており、国連平和
維持軍を積極的に受け入れたことにより、あえて手を出すものもな
く、各勢力の中立地帯としての役割を果たしている。


九州地方

  九州本土全域と旧長門国はほぼ、福岡に首府を置く日本人民共和
国が支配している。日本人民共和国は中国の影響を濃密に受けてお
り、中華人民共和国と半導体技術に関する提携を結ぶことにより、
中国の高度技術の成長を援助している。また、対馬をめぐって統一
朝鮮民主主義人民共和国としばしば軍事的な摩擦を繰り返している。


沖縄地方

  沖縄−南西諸島を支配する琉球共和国は米軍基地としての役割を
忠実に果たすことにより、アメリカの軍事的傘に完全に守られてい
る。反基地闘争は、政府自らの手によって押さえ込まれている。


日本の崩壊と分裂の歴史的経緯


関東潰滅

  1995年1月6日、出所不明(とされている)の一発の核弾道弾に
より、南関東地方は潰滅した。


臨時政府(京都)時代

  生残国会議員及び県知事ら地方代表により、大阪にて臨時議会を
形成。行政府は、京都市南部に仮設された。これにより、なんとか
事態の収拾を図ろうと試みられた。が、神戸大震災で大打撃を受け、
更にロシア軍新潟侵攻で脆くも崩れさる。


ロシア軍新潟侵攻

  ロシア軍が新潟に前触れなく侵攻してきた。これにより、新潟に
は、新潟人民共和国が設立される。
  同時期。朝鮮半島において、北朝鮮の奇襲により、韓国が崩壊。
北九州、山陰に多数の難民が漂着する。


南北政府(京都・仙台)時代

  新潟人民共和国により、実質南北のつながりを断たれたため、日
本国東北・北海道統治暫定機構なる組織が仙台に設立された。一年
におよぶ山岳ゲリラ戦の末、新潟共和国=ロシア連邦軍の攻勢をく
い止める。これが後の仙台政府へとつながる。


東海動乱(1)……名古屋政府樹立

  名古屋において、東海地方4県首脳会談が開かれ、独立を宣言。
名古屋に首府を置くと同時に、関ヶ原、鈴鹿峠を封鎖。名古屋を直
接封鎖しようとした京都政府自衛隊は、名古屋政府傘下の自衛隊の
待ち伏せに合い、降服する。
  京都政府陸上自衛隊は関ヶ原方面から反撃に出、大垣までを橋頭
堡として確保。名古屋市を北から睨む情勢となった時点で戦線は膠
着。京都政府は臨時立法措置により、予備警察隊を設立。大動員を
かけ、攻勢による事態の収拾を図る。


東海動乱(2)……米軍介入

  岐阜市における京都政府軍と名古屋政府軍の市街戦は、テレビ報
道され、米議会は名古屋政府側に肩入れすることになる。
  その結果は、米空母機による空爆により、神戸−明石の交通網の
再潰滅。これにより、西日本諸県で一気に自立の動きが強まる。
  また、仙台の東北・北海道統治暫定機構は、新潟人民共和国との
死闘の中で独立性を強めており、これを機に日本国仙台政府として
名乗りを上げる。
  これらの動きにより、京都−名古屋の戦線は膠着。およそ半年以
上もだらだらとした、停戦と停戦やぶりの繰り返しが続く事になる。


東海動乱(3)……背後からの一撃

  名古屋政府側の策謀(とされる)による金沢市での予備警察隊の
反乱により、京都政府側は大混乱に陥る。手を打てないでいる内に、
福井、石川、富山の三県により北陸連邦が形成される。京都政府は
富山湾に派遣されていた日本海側のロシア軍に対する抑止力である
護衛艦隊と、EUからの外人援助部隊を急遽投入し、富山県庁を占
領。富山共和国を樹立する。
  しかし、これにより、京都政府は、北陸連邦と名古屋政府を認め
ざるを得なくなる。これよりしばらくして、両者に停戦が締結され、
一年間続いた東海動乱は終結を見た。しかし、一国二政府ならぬ一
国四政府(京都・名古屋・仙台・新潟)と言う異常な状況が固定化
し、その後の西日本再崩壊の引き金となる。


京都政府の政策転換

  また、沿瀬戸内県知事会議がこの時期に成立する。これは、京都
政府の地方分権化の傾向を明白化する物であった。そして、京都政
府の、旧県が友好的な独立自治政府を作るのならば、それらを全て
敵に回すより承認した方がまだ得策である。と言う政策転換が起こ
ったという事を裏付ける。


新潟人民共和国の盆攻勢

  冬の間、小康状態にあった新潟人民共和国の侵略活動は、新潟人
民軍の戦車隊が磐越県境ラインを突破したことにより、再開された。
  これに先立ち、ロシアの大船団が新潟港に入港したとのニュース
が流れており、これは京都政府と名古屋政府のあいだの停戦発効の
一因でもあった。しかし、対応は遅れた。
  山形人民解放戦線なる組織が山形県日本海側各地で一斉蜂起し、
新潟人民軍戦車部隊により、福島県西部が一日にして制圧された。
  これにより、群馬、栃木は孤立。
  元々、壊滅した南関東地区の難民を受け容れていたせいもあり、
一ヶ月も持たずに経済的破断界に達した。



西日本崩壊

  関門海峡トンネル爆破



未決事項

・新潟人民共和国の再攻勢
  山形人民解放戦線の成立と群馬、栃木、福島西部の占領

・中華人民共和国の九州の拠点化
  東シナ海域の流動化

・朝鮮民主主義人民共和国の半島統一
・朝鮮民主主義人民共和国の山陰傀儡化
・




「霙の街」年表


1994年

 12月30日  主人公、富山の実家に帰省す

1995年

 1月6日  関東平野にて原因不明の核爆発
           主人公、石動駅にて彼女と北山と出逢う
     7日  主人公、京都に辿り着く
           彼女と別れる
     17日  阪神大震災
 5月3日  ロシア軍、新潟に侵攻
           主人公、福井にて自衛隊の混乱に巻き込まれる
     5日  北朝鮮、南進開始
 6月12日  新潟人民共和国、建国宣言。
 7月2日  主人公、石巻発−大阪行のフェリーにて大阪港に入る
           損傷したフランス国旗の空母(クレマンソー)が入港するのを見る。
     6日  東海四県首脳会談にて名古屋政府独立宣言
           名古屋政府自衛隊、関ヶ原、鈴鹿峠封鎖
           京都政府傘下の自衛隊、名古屋方面封鎖失敗。
           【東海動乱】勃発
     9日  京都政府自衛隊、関ヶ原を突破。大垣占領。
     20日  京都政府大阪議会、予備警察隊設置法を制定。
 8月1日  主人公、北山とともに予備警察隊に徴用される。
     11日  岐阜市市街戦。世界に報道される。
     13日  米国議会、京都政府制裁を決議
     15日  主人公、関ヶ原にて彼女と再会する
           名古屋沖の米空母機、関ヶ原物資集積所を空爆
           同時に、神戸−明石回廊空爆
     16日  EU議会、アメリカの内戦への介入を非難
           即時停戦を通告
     22日  呉にて修理作業中のEU統合軍所属空母クレマンソー、
           米艦載機の攻撃により損傷
           EU議会、米国を非難
           EU義勇艦隊、ツールを出港
 9月      戦線膠着
 10月23日  第一次 京名 停戦協定発効。
     25日  停戦破られる。
           主人公と北山、彼女と鍋をする。
 12月23日  クリスマス空襲。瀬戸大橋、不通に。
     25日  第二次 京名 停戦協定(年末停戦)発効。

1996年

 1月4日  停戦失効。戦闘再開。
     6日  主人公達、瀬戸大橋訪問。
           瀬戸大橋、崩落。
 3月28日  第三次 京名 停戦協定発効。
 4月1日  停戦破られる。
 6月16日  在金沢予備警察隊の反乱
     17日  北陸連邦共和国、独立を宣言
           米国、即時承認。
     18日  富山独立自衛隊を名乗る一派により、富山市占領
     20日  倶利伽藍峠封鎖戦開始
     21日  富山共和国、独立を宣言
           飛騨共和国、独立を宣言
     24日  主人公,富山駅前にて弟と会う。
 7月11日  「ロシア軍大船団、新潟港に入港」のニュースが流れる。
     12日  第四次 京名 停戦協定発効。
     19日  国連停戦監視団、関ヶ原に展開。
     28日  沿瀬戸内海県知事会議、成立。
 8月10日  新潟人民共和国、盆攻勢開始。磐越ラインを突破。
     11日  山形人民解放戦線、山形県全域を掌握。
           新潟人民共和国、福島県西部の解放を宣言。
     12日  青函トンネル、関門海峡トンネル、関門海峡大橋、同時テロにより爆発。



1997年


1998年


1999年

           主人公、国境警備隊に勤める


2000年


2001年

 11月20日  主人公、国境にて霙を見る
     21日  主人公、彼女に再会する




「霙の街(小説版)」登場人物設定



主人公

  本編の主人公。富山県富山市出身の自称内省的な青年。家族は富
山県にいるらしい。東京崩壊時、名前を言いたくない大学の2回生
だった。SFマニアであるらしい。やせ形。弟もいるらしい。


彼女

  本編のヒロイン。石川県金沢市出身の小柄な明るい女性。富山県
に家族がいるらしい。東京崩壊時、名古屋の美大に行っていた。気
が強い。少々怒りっぽいかもしれない。初対面の人に猫をかぶるの
がうまいらしい(^^;


北山

  主人公の悪友。本編の主要登場人物の中で、唯一名前を持ってい
る。だからといって偉いわけではない。主人公との初対面の時に学
生服を着ていたのは、京さまのコスプレ……というのは冗談で、大
阪の大学の応援団に所属していたからである。歳は主人公より一つ
上ぐらい。食い物にうるさいらしい。少々肥満気味。よく判らない
コネを各地に持つ。


大川

  主人公と北山の無能で口うるさい上司。


作者

  無責任な人間であるらしい(^^;




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