小説『私生活』


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小説『私生活』

 目が覚めたのは夜だった。
 部屋は当然真っ暗でカーテンの向こうにも明かりの気配はない。まだぼやけ
ている頭を揺すぶって体を起こす。ベッド兼用のソファのうえで軽く伸びをす
る、やはりソファで寝るのは体にはあまりよくないようだ、姿勢がおかしかっ
たのか背中がちょっと痛い。つっとテーブルに置かれてあるはずの時計を見る。
 23:49
 暗い部屋の中、デジタルの蛍光塗料の文字盤が不気味に光っている。11時半
過ぎ、あと十分そこらで明日だ。明かりをつけて部屋を見回す。狭いテーブル
の上にはノートパソコンと今朝方飲んでたまだわずかに中身残っているグラス、
他にはソファと無造作に置かれたミニコンポと木製のコート兼帽子掛けしか家
具がない。相変わらず殺風景この上ない。

 とりあえず今日の出来事を思い出してみる。
 今日、寝たのは昼前、昨夜は雑誌の記事のまとめで徹夜だった。フリーライ
ターというなんだか肩書きだけは偉そうな仕事だが、実際はそんなに派手な仕
事でもない。一応、芸術誌と女性向ファッション誌、時々経済誌などに記事を
書いている。とりあえず記事を送って、寝酒を流し込んで食事もとらずに真夜
中まで寝ていたわけだ。そう思った途端、下腹部に鈍い痛みを感じる。考えて
みれば今日は朝から何も食べてない。
 食料は先日買いだめしたはず、のそのそとキッチンの棚を漁る。薬局で買い
溜めたカロリーメイト、ビタミンタブレット、シリアル食品ごっちゃになった
ものの中、一つつまみ出してみる。新しく発売された繊維配合シリアル、これ
にしてみよう。空けてみると、中身はなんだか枯れ枝みたいであまり食欲の沸
いてくるデザインではなかった、でも食べないわけにはいかない。冷蔵庫を空
けて、はたと気づく、そういえば牛乳を買ってない。しょうがないのでそのま
ま枯れ枝シリアルを口にほうり込む。
 ボール紙みたいな味だ。ボール紙を食べたことがあるのかと聞かれれば答え
に詰まるかもしれないが、そんな味だった。品名を確認する、これはもう買わ
ない。結局、5・6本食べて袋を閉じて輪ゴムをかける。ますます食欲がなく
なった。
 気晴らしに明日の予定―もう12時をまわっているから正式には今日だが―
を反芻する。
 午前中は予定なし、午後は2時からいつも執筆している芸術誌のインタビュー
が入っている。相手は最近若手の彫刻家として売れ出している三ッ木珠樹。
近々練馬美術館で特別展が行われるのでその特集も兼ねている。
 とりあえず、彼の歴代の作品と雑誌に掲載されたインタビューのスクラップ
ファイルをもう一度確認してから寝て置こう。


あとがき

 ども、久志です。WPのEPいきまーす(^^;)
 でも、まだちっとも他のキャラと絡んでません〜(滅)

 うーむ、奏雅の普段の姿です(笑)
 なんだか、花澄さんあたりにに見られたら怒られそうな生活……(^^;) と
いうわけで明日は三ッ木さん宅にインタビューにいきまーす。


関連資料

 碓氷奏雅
 三ツ木珠樹



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