ショッピングに出てきた、朝霞姉妹である。
- 有希
- 「んふふ、きょうはお姉ちゃんとお買い物〜」
- 沙希
- 「おいおい、待てってば」
- 有希
- 「はやくおいでよー」
階段を走って上ってゆく有希
- 沙希
- 「おい、滑るから気をつけ……」
- 有希
- 「きゃ(つるっ)」
- 沙希
- 「うわっ」
宙を舞う有希、あわてて受け止めようとする沙希
- SE
- 「どっしーん」
- 有希
- 「あいたたた」
- 沙希
- 「だから、気をつけろって、痛〜」
立ち上がろうとした時に、足に走った激痛で思わず沙希は座り込んでしまう
- 有希
- 「お姉ちゃん!」
- 沙希
- 「ん、ちょっと足首ひねったみたい」
どうやら、有希を受け止めたときにくじいたようだ。
- 有希
- 「大丈夫?」
- 沙希
- 「ん、大丈夫だよ……痛っ」
- 有希
- 「だめだよ、お姉ちゃん、無理だよ」
- 沙希
- 「でも、今日は有希の楽しみにしてた、買い物だからなぁ」
- 有希
- 「んーと、それじゃとりあえずそこのベンチに座ろ」
- 沙希
- 「ああ、そうしようか」
- 有希
- 「はい、肩につかまって」
ベンチに座る沙希、足を看る有希
- 有希
- 「うー、だいぶ腫れてる」
- 沙希
- 「そうか、まいったな」
- 有希
- 「お姉ちゃん、ちょっと楽にしてて……」
- 沙希
- 「ん、なに?」
- 有希
- 「マナよ、癒しの力となれ……『治癒』」
沙希の足にかざした有希の手が、ぼうっと淡い光を放つ
- 沙希
- 「あ、あれ……痛みが」
- 有希
- 「たぶん、もう歩けるよ」
- 沙希
- 「本当だ……有希、さっきのはいったい?」
- 有希
- 「えへへ〜、ひーみーつー」
一方そのころ、都内の喫茶店
- 男
- 「ん?魔法か……これは……行ってみる価値がありそうだ」
筋肉質な体の大男だ、持っているティーカップが非常に小さく見える。
戻って有希と沙希
- 沙希
- 「(んー、さっきのあの光はいったい何だったんだろう」
- 有希
- 「お姉ちゃんどうしたの?さっきから考え込んで」
- 沙希
- 「いや、さっきの奴はまるで魔法だなと思ったのさ」
- 有希
- 「(どきっ)あったりぃ、ぢつは私は魔法使いなのでした」
- 沙希
- 「おいおい(^^;」
- 有希
- 「まぁ、とりあえずいこっ」
- 沙希
- 「(くすくす)」
- 男
- 「あの娘か……魔女には見えんが……試してみるか」
男は、胸の前で十字を切ると首飾りについているロザリオを握った
- 男
- 「神よ!我に力を!『聖域』!」
辺り一面が光に包まれ、その後には姉妹と男のみが存在していた
- 男
- 「ふむ、やはりな」
- 沙希
- 「う、な、なんだっ」
- 有希
- 「きゃ(これは……)」
- 沙希
- 「さっきまでの人はどうしたんだ」
- 有希
- 「……(まさか……結界に取り込まれたの?)」
- 男
- 「この領域に入り込めるということは……魔女か……」
- 沙希
- 「んー、一体なにが……っと、あそこに人がいるぞ」
- 有希
- 「(人?まさか……)えっ?!」
男はゆっくりとした歩調で、姉妹の方に歩いてゆく
- 男
- 「あなた方、魔女ですね?」
- 沙希
- 「は?」
- 有希
- 「……(やばいやばいやばーい!これって「対」じゃない
のよぉ〜)」
- 沙希
- 「失礼だな、魔女?なにそれ」
- 有希
- 「……(お姉ちゃんは、記憶戻ってないし……私がやるし
かないか)」
- 男
- 「この空間に入れるのは、私と魔女だけなんですけどねぇ」
- 有希
- 「私が魔女よ、お姉ちゃんは関係ないわ」
- 沙希
- 「ゆ、有希!」
- 有希
- 「お姉ちゃん……さがってて」
- 男
- 「くっくっく、そうか……やはり魔女か……魔女は……」
- 沙希
- 「有希、危ないよっ」
- 男
- 「殺す!」
- 有希
- 「えーい、いきなり『氷弓』!」
有希が魔法を発動させると、空気中に氷のつららが幾本か出現して、それが男の方へ突進する。
- 男
- 「あまいわぁ、ゴッドパァァーンチ!」
気合いとともに、男は飛んできたつららをことごとくたたき落とす
- 有希
- 「そ、そんな」
- 男
- 「くくく、いくぞぉっ」
- 沙希
- 「有希っ!」
戦いが展開される。
有希は氷で攻撃し、モンスターを召還し男を迎え撃つが、おとこは、それをことごとく己の肉体でうち砕いていった。
- 有希
- 「あう(どさっ)」
- 男
- 「はっはっはっは、終わりだな魔女よ、」
- 有希
- 「くぅ、こんな所で……死ねないもん(はぁはぁはぁ)」
- 沙希
- 「おい、おまえっ、有希になにをする」
- 有希
- 「お姉ちゃんダメっ」
- 男
- 「うるさい!」
怒号とともに張り手を沙希に食らわし、あっけなく倒れる沙希
- 沙希
- 「くっ(くそっ、私は……私はなにもできないのかっ)」
- 男
- 「ほら、死んでしまえ」
- 有希
- 「く、はっ」
男はその膂力を使い、有希の首をつかんで持ち上げる。
有希は苦しそうにもがく。
- 沙希
- 「有希っ!有希〜!(なんで、なんでこんなに……)」
- 声
- 『……に……ちよ……』
- 沙希
- 「(力が……力が欲しい……)」
- 声
- 『……共に……堕ちよう……』
- 有希
- 「おね……え……ちゃ」
沙希の目の前が突然真っ白になる。
再生される、記憶のフラッシュバック抱き合いながら朽ち果てる二人の男女。そして、復元される前世の記憶……知識……感情……
- 沙希
- 「そうか……有希……また、会えたんだね」
何かも理解した沙希、その頬には一筋の涙。
- 男
- 「もう、終わりだな……ひと思いに楽にしてやろう」
- 有希
- 「ん……あ……」
- 沙希
- 「『火球!』」
沙希の魔法が、男の背中に炸裂する。
- 男
- 「ぐおっ、貴様も魔女であったか……ぬぅ、先ほどまでは
魔力は感じられなかったが」
- 有希
- 「ん、けほっけほっ」
- 沙希
- 「私たちを引き裂く奴は……許さない」
- 男
- 「くっくっく、まぁいいだろう……今日は引いてやる……
またくるぞ!」
解除される結界。
雑踏の音が世界に戻る、へたり込んだ有希に駆け寄る沙希
- 沙希
- 「有希、有希!大丈夫?」
- 有希
- 「お姉ちゃん……?」
- 沙希
- 「ごめんね、私……記憶戻るのが遅くて」
- 有希
- 「お姉ちゃん……記憶が……」
- 沙希
- 「また、あえたね(抱きしめる)」
- 有希
- 「また、会えたんだよ(にこ)」
こうして、1人の「終末の住人」が覚醒した。
朝霞姉妹の覚醒編です。対となる男も出ております。
朝霞有希
朝霞沙紀
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