エピソード05『覚醒』


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エピソード05『覚醒』

昼――新宿

ショッピングに出てきた、朝霞姉妹である。

有希
「んふふ、きょうはお姉ちゃんとお買い物〜」
沙希
「おいおい、待てってば」
有希
「はやくおいでよー」

階段を走って上ってゆく有希

沙希
「おい、滑るから気をつけ……」
有希
「きゃ(つるっ)」
沙希
「うわっ」

宙を舞う有希、あわてて受け止めようとする沙希

SE
「どっしーん」
有希
「あいたたた」
沙希
「だから、気をつけろって、痛〜」

立ち上がろうとした時に、足に走った激痛で思わず沙希は座り込んでしまう

有希
「お姉ちゃん!」
沙希
「ん、ちょっと足首ひねったみたい」

どうやら、有希を受け止めたときにくじいたようだ。

有希
「大丈夫?」
沙希
「ん、大丈夫だよ……痛っ」
有希
「だめだよ、お姉ちゃん、無理だよ」
沙希
「でも、今日は有希の楽しみにしてた、買い物だからなぁ」
有希
「んーと、それじゃとりあえずそこのベンチに座ろ」
沙希
「ああ、そうしようか」
有希
「はい、肩につかまって」

ベンチに座る沙希、足を看る有希

有希
「うー、だいぶ腫れてる」
沙希
「そうか、まいったな」
有希
「お姉ちゃん、ちょっと楽にしてて……」
沙希
「ん、なに?」
有希
「マナよ、癒しの力となれ……『治癒』」

沙希の足にかざした有希の手が、ぼうっと淡い光を放つ

沙希
「あ、あれ……痛みが」
有希
「たぶん、もう歩けるよ」
沙希
「本当だ……有希、さっきのはいったい?」
有希
「えへへ〜、ひーみーつー」

一方そのころ、都内の喫茶店

「ん?魔法か……これは……行ってみる価値がありそうだ」

筋肉質な体の大男だ、持っているティーカップが非常に小さく見える。
 戻って有希と沙希

沙希
「(んー、さっきのあの光はいったい何だったんだろう」
有希
「お姉ちゃんどうしたの?さっきから考え込んで」
沙希
「いや、さっきの奴はまるで魔法だなと思ったのさ」
有希
「(どきっ)あったりぃ、ぢつは私は魔法使いなのでした」
沙希
「おいおい(^^;」
有希
「まぁ、とりあえずいこっ」
沙希
「(くすくす)」
「あの娘か……魔女には見えんが……試してみるか」

男は、胸の前で十字を切ると首飾りについているロザリオを握った

「神よ!我に力を!『聖域』!」

辺り一面が光に包まれ、その後には姉妹と男のみが存在していた

「ふむ、やはりな」
沙希
「う、な、なんだっ」
有希
「きゃ(これは……)」
沙希
「さっきまでの人はどうしたんだ」
有希
「……(まさか……結界に取り込まれたの?)」
「この領域に入り込めるということは……魔女か……」
沙希
「んー、一体なにが……っと、あそこに人がいるぞ」
有希
「(人?まさか……)えっ?!」

男はゆっくりとした歩調で、姉妹の方に歩いてゆく

「あなた方、魔女ですね?」
沙希
「は?」
有希
「……(やばいやばいやばーい!これって「対」じゃない のよぉ〜)」
沙希
「失礼だな、魔女?なにそれ」
有希
「……(お姉ちゃんは、記憶戻ってないし……私がやるし かないか)」
「この空間に入れるのは、私と魔女だけなんですけどねぇ」
有希
「私が魔女よ、お姉ちゃんは関係ないわ」
沙希
「ゆ、有希!」
有希
「お姉ちゃん……さがってて」
「くっくっく、そうか……やはり魔女か……魔女は……」
沙希
「有希、危ないよっ」
「殺す!」
有希
「えーい、いきなり『氷弓』!」

有希が魔法を発動させると、空気中に氷のつららが幾本か出現して、それが男の方へ突進する。

「あまいわぁ、ゴッドパァァーンチ!」

気合いとともに、男は飛んできたつららをことごとくたたき落とす

有希
「そ、そんな」
「くくく、いくぞぉっ」
沙希
「有希っ!」

戦いが展開される。
 有希は氷で攻撃し、モンスターを召還し男を迎え撃つが、おとこは、それをことごとく己の肉体でうち砕いていった。

有希
「あう(どさっ)」
「はっはっはっは、終わりだな魔女よ、」
有希
「くぅ、こんな所で……死ねないもん(はぁはぁはぁ)」
沙希
「おい、おまえっ、有希になにをする」
有希
「お姉ちゃんダメっ」
「うるさい!」

怒号とともに張り手を沙希に食らわし、あっけなく倒れる沙希

沙希
「くっ(くそっ、私は……私はなにもできないのかっ)」
「ほら、死んでしまえ」
有希
「く、はっ」

男はその膂力を使い、有希の首をつかんで持ち上げる。
 有希は苦しそうにもがく。

沙希
「有希っ!有希〜!(なんで、なんでこんなに……)」
『……に……ちよ……』
沙希
「(力が……力が欲しい……)」
『……共に……堕ちよう……』
有希
「おね……え……ちゃ」

沙希の目の前が突然真っ白になる。
 再生される、記憶のフラッシュバック抱き合いながら朽ち果てる二人の男女。そして、復元される前世の記憶……知識……感情……

沙希
「そうか……有希……また、会えたんだね」

何かも理解した沙希、その頬には一筋の涙。

「もう、終わりだな……ひと思いに楽にしてやろう」
有希
「ん……あ……」
沙希
「『火球!』」

沙希の魔法が、男の背中に炸裂する。

「ぐおっ、貴様も魔女であったか……ぬぅ、先ほどまでは 魔力は感じられなかったが」
有希
「ん、けほっけほっ」
沙希
「私たちを引き裂く奴は……許さない」
「くっくっく、まぁいいだろう……今日は引いてやる…… またくるぞ!」

解除される結界。
 雑踏の音が世界に戻る、へたり込んだ有希に駆け寄る沙希

沙希
「有希、有希!大丈夫?」
有希
「お姉ちゃん……?」
沙希
「ごめんね、私……記憶戻るのが遅くて」
有希
「お姉ちゃん……記憶が……」
沙希
「また、あえたね(抱きしめる)」
有希
「また、会えたんだよ(にこ)」

こうして、1人の「終末の住人」が覚醒した。

解説

朝霞姉妹の覚醒編です。対となる男も出ております。

関連資料

朝霞有希
 朝霞沙紀



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