- 月島直人(つきしま・なおと)
- 物体操者。喫茶店・月影の店長。
- 更雲翔(さらくも・かける)
- ねこみみふぇちな発明家。優の作成者
- 更雲優(さらくも・ゆう)
- ねこみみメイド人造人間。月影のウェイトレス
- 優
- 「いらっしゃいませ」
フリフリの白いエプロンを膝までの紺のスカートの上から身につけ、これもまたレースのついた髪留めをつける。一般の家庭では通用しないが、世の中のパソコンユーザーのほとんどには通用する、いわゆる「メイド服」を着込んで、今日も元気に客の対応をしている。
- 直人
- 「優ちゃん、ロイミティあがったよ、3番ね」
- 優
- 「はいっ」
手にしたロイヤルミルクティを一滴もこぼす事無く、普段の歩く速さと変わらずにテーブルまで持って行く。狭い店内で、見事な身のこなしである。
- 直人
- 「もう……1年か……」
- 優
- 「何か言いましたか?」
- 直人
- 「いや、お客さんも引いたし、一息いれようか」
- 優
- 「……はいっ!(にこっ)」
彼女が、月影にバイトに来て1年になる。もう1年……だろうか? まだ1年……だろうか?
1年前、1度目の1999年から、今まで、彼女の心は変わっていない。彼女もまた、「終末の住人」の一人なのだ……。
- 直人
- 「こんにちは」
- 翔
- 「ようっ直人。良く来てくれたな、まあ、入ってくれよ」
いわれるがままに玄関に入り、そのまま翔の後ろを着いて行く。
- 翔
- 「いやぁ。ついに長年の夢がかなったんだ。ようやく人造人間かできたぞ〜」
- 直人
- 「……大切な話があるっていうから……何かと思えば……」
歩きながらあきれる。廊下を曲がり、その先は居間だった筈だ。
翔は、居間のドアの前で止まり、直人に道を譲った。
- 直人
- 「で、どんなのを作ったんだ?」(ドアを開ける)
- 優
- 「(おずおず) あ、あの……はじめまして」
ドアを開けて、真っ先に目に付いたのは、一人の女性。年の頃は20に届くかというところだが、メイド服とねこみみといういでたちは、歳を数年は幼く見せている。
しかし、直人が驚いたのは、その服装やねこみみではない。彼女の、容貌。両親と共に死んだはずの翔の妹、優子にそっくりなのだ。
- 直人
- 「おい……この娘……あ、ああ、始めまして……」
翔に詰め寄ろうとして、挨拶されているのに気づき、慌てて挨拶を返す。言葉に出した瞬間に、自分のぞんざいな口調に気づいた。
- 直人
- 「きみ……名前は?」
- 優
- 「やさしい、と書いて、ゆう、と読みます」
- 直人
- 「(優子ちゃん……じゃないよな……) 優……ちゃん。か、よろしく」
慌ててのフォロー。微笑んだ彼の顔は、営業を始めて1年と少しでは、引き攣った笑みにしかならなかった。
- 直人
- 「で、彼女をどうするんだ?」
- 翔
- 「……」
彼女を別室へやり、翔と対面の椅子に座る。
- 翔
- 「(考えてなかったなぁ)」
- 直人
- 「どうしたんだ?」
- 翔
- 「……これからの科学の発展のために、いろいろデータを取らないとなぁ(内心の動揺ひたかくし)」
- 直人
- 「そうなのか……まあ、がんばってくれ、俺が協力できるなら、言ってくれてかまわないから」
- 翔
- 「そーだなぁ……そういや、月影ってバイト募集中だったな」
- 直人
- 「ああ、どうしたんだよ、急に」
- 翔
- 「彼女、バイトさせてやってくれないか?」
- 直人
- 「彼女を? 人前に出すのか?」
- 翔
- 「対人行動のテストみたいなもんだが、なにかあった場合、近くに知っている奴がいたほうがいいだろう」
- 直人
- 「まあ、最悪、何とかなるとはは思うが……。(色々事情はあるんだろうしな……) 解った。家で預かるよ」
- 翔
- 「よろしく」
- SE
- 「こんこん」
ノックがなり、しばらくして扉が開く。
優が小さいお盆を持てて入ってきたのだ。
- 優
- 「お茶を入れてまいりました」
- 直人
- 「あ、ありがとう」
- 翔
- 「あ、優、明日から彼の喫茶店ではたらく事になったから」
- 優
- 「え……はい」
そこまで行って、割賦を置き終わると改めて直人の方に向いて立つ。
- 優
- 「あ、あの……よろしくお願いします」
- 直人
- 「ああ、よろしくね。まあ、そんなに気張らなくても、少しずつ覚えていこう」
- 優
- 「はいっ」
- 優
- 「あの……直人さん(赤面)」
名前を呼ばれて我に返る。回想にふけっている間、彼女の事を見つめていたらしい。
- 直人
- 「ああ……何?」
- 優
- 「あの……私の顔に何かついてますか?」
- 直人
- 「何もついてないよ、大丈夫」
そういうと、直人は視線を窓の方に移す。新宿の青空は、自然の青空とは違うのだろうが、今日の青空は気持ちが良かった。
- 直人
- 「いいてんきだねぇ」
- 優
- 「はい、そうですね」
直人と優が初めで出会った時の話。
2年前、妹を交通事故で失ってしまった翔は、妹そっくりな人造人間を作ってしまった。対人関係に慣れさせるため、優を月影で働かせることにする。
優は、すっかり今の生活に慣れたようだ。最近直人が気になるらしい。なお、優は翔の妹をモデルに作られたことをまだ知らない。
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