エピソード032『朝の日課』


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エピソード032『朝の日課』

登場人物

葛城水稚(かつらぎ・みずち)
新宿の情報屋。謎の情報網を持つ、正体不明の女性。
十年以上前から、年を重ねていないとも言われている。

本編

SE
…PiPi…PiPi…PiPi……
水稚
「ん……ん〜…」
SE
PiPiPi…PiPiPi…PiPiPi…PiPiPiPiPiPi……
水稚
「んっ!(べしっ)」

ベッドから白い手が伸び、目覚ましに一撃を加える。
 容赦の無い攻撃に、あえなく沈黙する……って言うか、せめて止めろよ。

水稚
「く〜〜(すぅすぅ)」

そのまま寝てしまうし……
 目覚ましの努力も、一撃と寝返り一回が限界だったらしい。
 手足を丸めて、軽い寝息を立てている。

SE
コンコン……

しばらくすると、今度は窓ガラスを外からノックする音がする。

SE
コンコン……コンコンコン……

なにか硬いもので叩いてるような音が、控えめに部屋に響く。
 ま、目覚ましでも起きなかったんだから、この程度では起きないだろうが……

水稚
「ん〜〜(もぞもぞ)」

段々と、窓ガラスを叩く音が増えてくる。
 そのうち、目覚ましの音を越えて、騒々しいまでに……

水稚
「うぅ〜ん……起きますよ〜(ごそごそ)」

ベッドの上で手足を伸ばして、う〜んと伸びをする。
 ぶるっと体を震わせて、やっとベッドから下りる。
 もっとも、裸のままでは外に出る訳には行かないので…

水稚
「えっと、服、服(ごそごそ)」
SE
コンコン……
水稚
「いま服着てるんだから、ちょっと待ちなさい」
SE
…………

聞き分けが良いのか、ぴたっと音が止まる。
 ごそごそと服を引っ張り出し、もそもそと身につける。

SE
…………ココン……
水稚
「はいはい、もうすぐだから、大人しくしてるのよ」
SE
コツン……
水稚
「うん、いい子ね(くすっ)」

妙なやり取りをしながら、大きな袋を引っ張り出し、カーテンを引く。
 そこにいたのは

「クルル……クルルルル……(コンコン)」
水稚
「はいはい、今日もみんな元気ね(にこにこ)」

カラカラと窓を開けベランダに出ると、鳩達が道を開けながらついて来る。
 手すりの部分には烏、温室の上には雀が、他にも、数は多くないもののいろんな鳥がベランダに溢れている。

水稚
「〜〜♪」

何個所かに置いてある篭に、袋から出した餌を入れる。
 群れごと、餌の種類ごと、色分けされたように篭に群がる鳥達。
 全部の篭に餌を入れ終わると、パンパンと袋を叩き、部屋に戻る。

水稚
「さ、今日は何があったかしら…」

独り言を呟くと、窓辺に腰をかける。

水稚
「食べ終わったら、ゆっくり話してね(にこにこ)」

軽く伸びをすると、微笑みながら無心に餌を食べる鳥達を眺める。
 これが、情報屋・葛城水稚の、朝の日課だった。

解説

葛城水稚の朝の風景。鳥からの情報収集ですね。



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