エピソード033『死との遭遇』


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エピソード033『死との遭遇』

登場人物

伊野部荘司(いのべそうじ)
異能操作能力を持つ高校生。
楊可秀(ようかしゅう)
台湾人。異能者を悪魔の使いと見て、殺害している。

時系列

1999(1st)年の12月31日深夜。

本編

1999年12月31日深夜。新宿。

荘司
「ったく、どこに行ったんだ?」

伊野部荘司は新宿をさまよっていた。
 家族と一緒に来たのだが、はぐれてしまったのである。
 すでに1時間がたとうとしていた。
 先に帰るか。
 そう思い始めたとき。

「探シたぞ……」

振り向いたそこに、男が立っていた。
 3ヶ月前に台湾で見た顔。

「貴様を…殺ス」

3ヶ月前と同じ表情で、同じ台詞を放つ。
 違うのは男の手に大型のナイフが握られていること。
 辺りを見回しても誰もいない。

荘司
(そんな。さっきまであんなに人が居たのに……)

世界には男と自分しか存在しない。そんな感覚に襲われる。

荘司
(……逃げなきゃ)

だが、体は言うことを聞かなかった。
 荘司が逃げられないことを察したのか、男は悠然と歩いてくる。

荘司
「ひ……」

ナイフの背が頬をなでる。
 冷たい。

「声も出なイか……」

ナイフが首に移動する。

「サよナら」

男は唇をゆがめてそう言った。
 思わず目を閉じる。
 腕時計のアラームの音が何処か遠くに聞こえた。
 …………
 目を閉じたまま数分。想像していた痛みは来ない。
 そっと目を開けると、そこにはもう、誰もいなかった。

荘司
「……助……かった……?」

大通りからにぎやかな声が聞こえる。
 さっきまで人が見えなかったのが信じられない。

通行人A
「よぉ、にーちゃん明けましておめでとーう!」

酔っぱらった男に声をかけられた。

荘司
「もうそんな時間か……」

電光掲示板を見上げると、
 「A HAPPY NEW YEAR!!
        WELCOME 1999」
 の文字が光っていた。

解説

終末の住人である荘司とその対である楊の最初の遭遇。
 楊はループ現象によって、台湾へと引き戻されることになる。



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