- 桜居珠希(さくらい・たまき)
- 首使いの女子高生。
- 朝霞有希(あさか・ゆき)
- 転生を繰り返す魔法使いの女子大生。
- 伊野辺荘司(いのべ・そうじ)
- 終末の住人にして少し気弱な高校生。
- 葛城水稚(かつらぎ・みずち)
- 年齢不祥の住人。今回、唯一の成人(笑)
1999-2nd、3月下旬。
3月も下旬。春休みに入ったある日。
珠希、有希、荘司の3人は、新宿まで買い物に出ていた。
といっても、買い物をするのは女性陣であって、荘司は荷物持ちとして駆り出されただけだったが……。
- 珠希
- 「はあ、疲れた。そろそろ帰りましょ?」
- 有希
- 「そうね、もうこんな時間だし」
- 荘司
- (やっと帰れるのか……)
時計を見ると、19時を回っていた。
既にあたりは暗くなっている。
- 珠希
- 「そうだ、2人とも今から家に来ない?」
- 有希
- 「え、わたしはかまわないけど?」
- 珠希
- 「じゃあ、きまりね。荘ちゃんももちろん来るでしょ?」
- 荘司
- 「え、これから……?」
言いよどんだ荘司の目を見て一言。
- 珠希
- 「来るわよねぇ、もちろん」
- 荘司
- 「うん……」
- 珠希
- 「じゃ、行きましょ」
1時間ほど後。3人は桜居家の前にいた。
- 珠希
- 「はぁ、着いた。みんな適当に上がって」
- 有希
- 「ほーい」
- 荘司
- 「おじゃまします……」
どやどや。
- 有希
- 「へぇ、広いんだ。いいなぁ」
- 荘司
- 「珠希ちゃん、この荷物どうするのさ?」
- 珠希
- 「ああ、その辺に置いといてよ」
と、そのまま珠希の部屋に案内される二人。
- 珠希
- 「んー、飲む物は何がいい?」
- 有希
- 「甘いのがいい〜」
- 荘司
- 「僕は何でもいいよ」
- 珠希
- 「じゃ、有希ちゃんはサワー系ね。アルコールもジュースもあるから適当に混ぜて」
- 有希
- 「わかった〜」
机の上に飲み物と乾きモノを並べる珠希。
- 荘司
- 「……お酒が並んでるように見えるのは気のせい?」
- 珠希
- 「まぁ、いいじゃない。飲んだこと無いってわけじゃないでしょ?」
- 荘司
- 「たしかに、少しくらいなら飲んだことはあるけど……」
- 珠希
- 「じゃあ問題なし。ねぇ有希ちゃん」
- 有希
- 「まぁ、いいんじゃない? それに、荘司君」
と、真面目な顔で荘司を見る有希。
- 有希
- 「ここで断ると後で絡まれるわよ? あたしの酒が飲めないのかぁって」
- 荘司
- 「…………(汗)」
- 珠希
- 「あ、ひどーい。あたしはそんなに酒癖悪くないわよ」
- 有希
- 「それじゃ、かんぱーい!」
有希と珠希が話しているのを聞きながらちびちびと酒をのむ荘司。
- 珠希
- 「荘ちゃん、やたらしおらしいじゃない。最初に会ったときはいきなり脅迫まがいのことしてきたくせに」
目に見えて狼狽する荘司。
- 荘司
- 「あ、あの時は……しょうがないじゃないか」
- 珠希
- 「しようがないだって、聞いた? 有希ちゃん」
- 有希
- 「え? 荘司君、なにかしたの?」
- 珠希
- 「こんなか弱い少女に、いきなり『あなたの首が落ちます(声真似)』とか言ったのよ」
あわてる荘司。
あの一件はあまり良い思い出とは言えない。できれば一生封印しておきたい出来事だ。
- 荘司
- 「うわ、やめてやめて! それ以上言わないでよ」
そんな荘司の様子に吹き出す珠希。
- 珠希
- 「あはは。あの後のことまだ照れてるのね」
- 有希
- 「んー? 気になるぞー」
- 荘司
- 「有希さんまで……たいしたことじゃなんだから、気にしないでくださいよ」
- 珠希
- 「実はねえ……(ひそひそひそ)」
有希に事の次第を話そうとする珠希。
それを見て、荘司は珠希の口をふさごうとする。
- 荘司
- 「あああ、やめてってば」
- 珠希
- 「わかったわよ……」
笑いながら有希から離れる珠希。
そして、荘司に耳うち。
- 珠希
- 「ま、当分二人だけの秘密って事にして置いてあげるわ」
- 荘司
- 「できれば一生秘密にしといて……」
- 珠希
- 「フフッ、さあねえ」
- 荘司
- 「うう……」
と、ビールを飲み干す荘司。
- 珠希
- 「いい飲みっぷりねー、もしかしてイケルほう?」
- 荘司
- 「別にそんな訳じゃないけど……今はそういう気分なんだよ。ほら、珠希ちゃんも空になってるよ」
と、珠希のコップにビールを注ぐ荘司。
- 珠希
- 「あら、ありがと」
そんなわけで、3人が飲みだしてしばらくして。
- SE
- ぴんぽ〜ん
呼び鈴が鳴った。
- 珠希
- 「うっ……誰、こんな時間に……(フラフラ)」
窓から外を覗くと、そこにはにこにこと笑っている水稚の姿があった。
- 水稚
- 「やっ、たまちゃん呑んでる?(にこにこ)」
- 珠希
- 「あ、女、王ーじゃない。今有希ちゃんと荘ちゃんも、いる……わよ。ま、適当に上がって(うっぷ)」
- 水稚
- 「はい、差し入れ(にこにこ)」
と、手に持った袋を差し出す水稚。
珠希が中を覗くと、中にはソフトドリンクとつまみが入っている。
- 珠希
- 「あ、アリガト」
珠希の部屋にはいると、そこには既にできあがった面々がいた。
- 有希
- 「きゃははははははは」
- 水稚
- 「あらあら……あんま呑めないんでしょ? 無理しちゃ駄目よ」
- 荘司
- 「あ、こんばんはです〜」
有希ほどではないものの、荘司もへろへろになっている。
- 水稚
- 「なんか、みんな可愛く酔っちゃってるわね〜。有希ちゃんはなんかご機嫌だし(くすくす)」
- 珠希
- 「ハイ、適当に飲んで(ビールの缶突き出す)」
- 水稚
- 「はいはい(くすくす)」
- 有希
- 「きゃはは……(こてん、ぐー)」
有希は昼間の疲れが出たのか、そのまま寝てしまう。
- 珠希
- 「あら、有希ちゃん寝ちゃったわね」
酔いが回ってきたのか、べたっとへたり込んでしまう珠希。
ふと、荘司の方を見て。
- 珠希
- 「(ぐてー)なーに、へれへれしてんのよー! ホントちょっと可愛い子見るとすぐコレねー」
- 荘司
- 「そんなことないよ」
- 珠希
- 「ホントかしら? 怪しいモンねえ。荘ちゃんって、いかにも免疫無さそうだし」
- 水稚
- 「あら、こんな子が意外とやり手だったりするのよ?」
水稚はくすくすと笑った。
- 荘司
- 「そんな事無いですよぉ」
- 水稚
- 「どうかしらねぇ(くすっ)」
- 珠希
- 「……じゃあ、例えば水稚ちゃんみたいな人に迫られたらどうするの?」
- 荘司
- 「はぁ? そんなこと、あるわけないだろ」
水稚の方をちらっと見ながら答える荘司。
- 珠希
- 「あ、うわずってるわねー」
- 水稚
- 「ふふ……あたしは、荘司君みたいな子は好きよ(にこっ)」
- 珠希
- 「だって、良かったわねえ、お姉さまに好かれて」
- 荘司
- 「ま、またそんな冗談ばっかり……」
顔が赤くなるのは酔いのばかりではないようだ。
それに気付いたのかどうか。
- 水稚
- 「だって、可愛いじゃない……ほら、こんな真っ赤になっちゃう所なんか……」
水稚は手を伸ばすと荘司の頬を撫でる。
- 荘司
- (あうー)(困)
- 水稚
- 「こんなおばさんじゃ、困っちゃうかしら?」
- 荘司
- 「えと、あの、その……(真っ赤)」
- 水稚
- 「困らせちゃ駄目よね……」
笑って手を離す水稚。
それを横目で見ながら珠希は新しい缶を開けた。
なんとなく気にくわない。
- 珠希
- 「……勝手に行くトコまで行きなさいよ」
なんとなく沈黙が広がる。
やがて珠希はつい、と立ち上がると。
- 珠希
- 「……ちょっと夜風当たってくるわ」
そう言うと、珠希は外へ出ていった。
- 水稚
- 「有希ちゃんも、こんな所で寝ちゃって……」
- 有希
- 「むに……お姉ちゃん……」
水稚は有希に毛布を掛けると、ふと思いついたように、
- 水稚
- 「荘司君?」
- 荘司
- 「は、はい」
- 水稚
- 「たまちゃん大丈夫かしら……気にならない?」
- 荘司
- 「……そ、そういえば。ちょっと見てきます」
珠希を追いかけて出ていった荘司を見送ると、水稚は、くすくすと笑って
- 水稚
- 「さってと……なんか作ろうかしら」
- 珠希
- 「飲めもしない酒飲み過ぎたわね……」
珠希はすこし離れたところで電信柱にもたれていた。
- 珠希
- 「……それにしても、あの二人どうする気かしら。なんだか私の部屋でいい感じになられるのも気に入らないわねえ」
なんとなく、あの2人が仲良くなるのは気に入らない。
- 珠希
- 「ふぁ……なんか……眠……」
少しして。
あたりを捜していた荘司は電柱にもたれて寝ている珠希を見つけた。
- 荘司
- 「こんなところで寝てるしなぁ」
なんとなく寝顔にみとれてしまう荘司。
- 荘司
- (寝てるときは可愛いのになぁ)
- 珠希
- 「……うーん……」
珠希の声で我に返る荘司。
なんとなく気恥ずかしくなって珠希を揺さぶる。
- 荘司
- 「珠希ちゃん、起きたほうがいいよー」
- 珠希
- 「ん……あれ、私こんなところで寝ちゃったの?」
- 荘司
- 「まったく、こんなとこで寝てたら風邪引くよ」
- 珠希
- 「あ、うん、そう…ね。ッテ、女王はどうしたの?」
- 荘司
- 「女王……って水稚さん? 部屋にいると思うよ」
- 珠希
- 「じゃなくて、いいの? こんなところに来てて」
- 荘司
- 「どうして?」
何か問題でもあったのだろうか? すこし不安になる。
- 珠希
- 「仲良くなるチャンスだったんじゃない?」
- 荘司
- 「?」
怪訝そうな顔をした荘司を見て、珠季は思わず吹き出した。
- 珠希
- 「……ぷッ、馬鹿らしくなっちゃったわ。さ、帰りましょうか」
- 荘司
- 「大丈夫なの? さっきまでふらついてたけど」
- 珠希
- 「そう思うなら、おぶりなさいよ」
- 荘司
- 「はいはい」
- 珠希
- 「ああ、飲み過ぎたわね、頭ガンガンするわ」
帰り道、頭を押さえて言う珠希。
- 荘司
- 「大丈夫? ……じゃないね。もう少しだからさ」
また、しばらくして。
- 珠希
- 「こうしてると男の子ね、荘ちゃん」
- 荘司
- 「あたりまえだろ……」
玄関を開けると、中からおいしそうな匂いが広がった。
- 珠希
- 「あ、なんかいい匂いするわね」
荘司の背中から飛び降りると、家に飛び込む珠希。
- 水稚
- 「あら、元気になったのね。温麺を作ったけど、食べる?」
- 珠希
- 「ありがとう、水稚ちゃん。お腹空いちゃったわよ」
向こうで交わされている会話を聞きながら、荘司はそっとため息をついた。
- 珠希
- 「荘ちゃんはどうするの?」
- 荘司
- 「あ、僕もいただきます」
こうして桜居家の夜は更けていくのであった。
未成年の飲酒は法律で禁じられています……もとい。
1999-2nd、春先のちょっとした出来事。
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