岡崎鞍馬(おかざき・くらま) :生まれながらに無敵の肉体を持つ小学生。放浪癖があり不登校気味。 :バンダナを『鍵』とし、特に大事としているバンダナが一枚ある。
月島直人(つきしま・なおと) :喫茶店・月影の店長にして終末の住人の組織『月影』のマスター。
更雲優(さらくも・ゆう) :喫茶店・月影のアルバイト。更雲翔の手による人造人間。 :諸々の事情により、メイド服を着ていることが多い。終末の住人。
桜居珠希(さくらい・たまき。話題にのみ登場) :放課後首斬り魔とでも言うべき能力を持つ女子高校生。終末の住人。 :『対』であるヘッドコレクターにより深い傷を負い、未だ癒えない。
灼熱の昼下がり、東京・新宿、喫茶「月影」。
- SE
- カラカラン ……カラン。
何やら控えめなドアベルの音。
- 優
- 「いらっしゃいませ。……あ、こんにちは」
- 鞍馬
- 「こんにちは」
照れくさそうに、おそるおそる入ってくる鞍馬。
- 直人
- 「いらっしゃい、鞍馬君。珍しいですね、一人で」
- 鞍馬
- 「ちょっと買い物があるから、新宿に」
- 直人
- 「なるほど」
カウンター席に着く鞍馬。
こうして見ると、普通の小学生である。
- 直人
- 「ご注文は、何にしましょうか?」
- 鞍馬
- 「えっ…と………………何がありますか?(汗)」
- 直人
- 「何でも……(はっ)」(身を乗り出して)「もしかして、喫茶店で自分から注文をした事が無い?」
- 鞍馬
- 「……」(赤くなって頷く)
- 直人
- 「でも、うちは初めてじゃないですよね?」
- 鞍馬
- 「前は珠希ちゃんとかがいたから……」
- 直人
- 「ああ、そうか。じゃあ、うちの特製アイスコーヒーにするけど、それで良いですか?」
- 鞍馬
- 「お願いします」
- 直人
- 「鞍馬君の記念すべき初注文という事で、サービスにしておきますよ」
- 鞍馬
- 「え?(きょとん)」
- 直人
- 「(苦笑)……無料、ってことです」
- 鞍馬
- 「いいんですか?!」
- 直人
- 「もちろん」
- 鞍馬
- 「……ありがとう」(上目遣いににっこり)
暫し、くつろぎの時。
- 直人
- 「お待たせしました」
- 鞍馬
- 「ありがとう。……ねぇ、直人さん」
- 直人
- 「何ですか?」
- 鞍馬
- 「……珠希ちゃん、まだ来ないんですね」
- 直人
- 「……そうですね」
シロップやミルクを傍らに置きながら、ほうっ、と息をつく直人。
- 直人
- 「まだ意識が戻らないんです」
- 鞍馬
- 「そうなんだ……」
- 直人
- 「身体の傷は、皆の力も使ってある程度まで回復したのですがね……なぜか、意識だけは戻らないのです」
- 鞍馬
- 「……相手が、何かした……?」
- 直人
- 「それは分かりません。コクシチョウではないようですが……。ただ、有希さんの話によると、相手は珠希さんの『対』だった様ですね」
- 鞍馬
- 「……」
沈黙が訪れる。
次に口を開いたのは、鞍馬だった。
- 鞍馬
- 「直人さん。もし……」
- 直人
- 「?」
鞍馬はポケットに手を突っ込む。
取り出したのは……一枚のバンダナ。
- 鞍馬
- 「……もし、ある人が『結界』を張ったときに、このバンダナを着けていたら……僕と同じバンダナを着けていたら。その人は……ぼくの『対』なのかな?」
- 直人
- 「確証は持てませんが……その可能性は高いでしょう」
- 鞍馬
- 「…………」
- 直人
- 「……心当たりが……あるんですね?」
沈黙をもって答える鞍馬。一息で、残りのアイスコーヒーを飲み干す。
- 鞍馬
- 「ごちそうさまでした」(早々にカウンター席を下りようとする)
- 直人
- 「まだ、ゆっくりしていって良いですよ。今の時間はお客は少ないですから」
- 鞍馬
- 「いえ、もう行きます。買い物がいっぱいあるし……。それに、しばらく旅行に行くから、当分来れないと思います」
- 直人
- 「旅行ですか……どこへ?」
- 鞍馬
- 「わかりません。長くなると思います。……捜しているものが、見つかるまでだから」
- 直人
- 「そうですか……できるだけ早く見つかる事を、僕も祈っています。何かあったら、連絡を下さいね」
- 鞍馬
- 「はい。ありがとう……それじゃ」
- SE
- カラカラン
- 直人
- 「……気をつけて、鞍馬君」
ヘッドコレクターとの戦闘でいまだに意識が戻らない珠希の身を案じつつ、自分の『対』と思しき人物に思いを馳せる鞍馬。その人物とは……?
2回目の1999年の夏、夏休みに入って早々に、鞍馬は長い旅に出ます。彼はその旅で何を見つけてくるのでしょうか。
このEPは、その旅に出るまでのとある1シーンを描写したものです。
EP『中野決戦』の一週間後の話です。
1999(2nd)年7月18日・日曜日の昼下がりのこと。
連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部